Linux MPXマルチタッチテーブルはMS Surfaceの代わりになれる? (長文インタビュー&動画)

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マイクロソフト「Surface」ジェフ・ハン氏のデモの華やかさはないんですけど、この分野がフルスピードで底上げに進化していることが分かる動画。Linuxベースの「MPXマルチタッチテーブル」のデモです。

 

 

開発を手掛けたピーター・ハッテラー(Peter Hutterer)さんに米ギズモードが先日、本プロジェクトの背景、iPhone、猫も杓子もマルチタッチな最近の熱狂をどう思うかズバリ! 尋ねてみました。解説と一緒に「続きを読む」でどうぞ。めちゃ長いです。

 

-解説-

MPXは「Multi-Pointer X」の略です。X Windowsサーバーに修正を加え、複数同時点入力の端末が同時に使えるようにしました。普通のコンピュータ+キーボード(何台でもOK)+マウス(複数)で使います。

当システムではユーザー複数が、アプリを単体か複数同時に動かすことが可能。ソフトはまだ開発中で、ピーターさんの話ではまだ要修正なバグが死ぬほどあるそうです。でも、大体どんなことができるかは動画で想像がつくと思います。

MPX可能なLinuxのシステムを三菱研究所のディスプレイテーブル「DiamondTouch」に繋ぐと物事は俄然おもしろくなります。マイクロソフト「Surface」もそうですが、三菱の「DiamondTouch」もやはり「小さなグループのコラボが可能な複数ユーザー、破砕に強い、タッチ&ジェスチャー認識スクリーン」ですね。

「DiamondTouch」で採用した技術はマイクロソフトの「TouchLight」や、ハン氏の「FITRハードウェア」とは異なりますが、結果はベターと言っていいぐらいで、MPX-DiamondTouchのコンビネーションではユニークユーザー4人まで動きを認識できるんです。「Surface」とジェフ・ハン氏の開発技術も確かに複数ユーザーが利用可能ですが、「ユニークユーザー」として認識するところまでは行ってないような…。

もちろんマイナスもあって、このソリューションでは「各ユーザーが別々の伝導パッドをタッチ」しなくてはダメで、システムの方でタッチを認識してくれません。MPXの開発者の言葉を借りると、

「DT(DiamondTouch)は個別ユーザーのマルチタッチを検出するのは得意なんですが、同じ一人のユーザーからのマルチタッチを検出するのは不得意」
ということです。まあ、でもMPXは他のハードと連携できるので、今後の進化が楽しみ! です。

 

-ピーターさんインタビュー-

(南オーストラリア大学ウェアラブル・コンピュータ研究所博士課程の学生さんです)

Jesus Diaz(以下、JD) : MPXをDiamondTouchに似た他のコントロール・サーフェスで使う場合、 MERLのハードウェアの限界は?

Peter Hutterer(以下、PH) :  「はい」と「いいえ」の両方かなあ。今のところDT(DiamondTouch)だけですが、僕がタッチサポート用に書いた最初のXドライバはネットワーク上でタッチが起こるイベントをただ聞いている(listening)だけのものなんです。僕が最初に作ったタッチスクリーンは~50ラインのperlスクリプト。FTIRのテーブルも現在構築中ですが、中断が多くて遅れています。今もDT(DiamondTouch)ができないことをテストする際には、ちょっとしたCプログラムを使ってます。ドライバさえできれば、どのハードを使っているかは、あまり問題じゃないですね。

デザインした際に目指したのは、(ジェフ・ハン氏が使ってたタイプの)FTIRテーブルや、あとはMS Surfaceがハードでやっていることです。

JD : MPXはLinuxだけ? BSDでも動かせる?

PH : メインのテストボックスはUbuntu Feistyボックスですが、MPXが動かせるFreeBSD 64ボックスも実言うとあります。理論上、MPXはXサーバがコンパイルできるなら何に載せても動かせるはずなんですが、まあ、理論ですから…。

JD : MPX動かしながらWindowsやMac OS Xにポートしてる人はいますか?

PH : 僕が知る限りはいません。 WindowsとOS Xで使うXは全然違うのだ、ということを分かっておく必要がありますね。Unix環境のX サーバーは実際スクリーンにレンダリングして、さらに入力もやってくれます。これがMac/Winだと、レンダリングと端末のハンドリングは全て各OSが行うんです。XサーバーはOSのイベントをXプロトコルのイベントにトランスレートして、それをクライアントに転送します。複数端末対応のネイティブサポート抜きでは、MPXをWin/OS Xにポートしても時間の無駄でしょう。アップルやマイクロソフトで、自分たちのウィンドウ表示システムを複数端末に置き換える開発をどれだけ進めているのか? という部分は僕にも分かりません。

JD : iPhoneもマルチタッチのインターフェイスですが、あれはどう思われます?

PH : 人気の商品でマルチタッチが使われてるのを見るのは嬉しいですね。これで標準デスクトップ向けにも需要が上がるかもしれないし、そうなったら最高です。もう少し解説が要るんですけど、例えば「完全なタッチスクリーン」があったとしますよね。誰がタッチしてるかレジスターして、タッチしたオブジェクトが何で、どこをタッチしてるか、その領域がイメージの詳細まで正確に分かる、そんなタッチスクリーンを僕は目指しているんです。

iPhoneのスクリーンはその一部は実現できてますが、ソフトウェアがそれを使っていないように思えます。せっかくのタッチ入力が、タッチのコーディネイションというものに限定されてしまってます。コーディネイションが完璧なのはいいんですけど、これでは標準のマウスと変わらないんですよ。

MPXではアブストラクション・レイヤーを複数入れて、高度に細かいタッチイベントを認識してクライアントに送ってます。単なるコーディネイション以上のものを提供できるタッチスクリーンの標準インターフェイスなのです。スマート機能はまだ全てクライアント側でやらなきゃならないんですけどね。MPXはハード依存を解消してくれるので、ジェスチャー認識のアプリはどんなタッチスクリーンでも使えるんです。さっき話したperlスクリプトも含めて。

以上はテクニカルの観点からの話で、ユーザーの目で見ると、マルチタッチのジェスチャー認識はユーザビリティを格段に高めるものですから、これを標準のインタラクション法として採用するのは良いアイディアです。

JD : つまり iPhoneはご自分の研究努力に注目を集め、リアルの製品に実用化される手助けになる、ということでしょうか?

PH : 今ちょうどMPXをアップストリームのX.orgレポジトリに入れようとしているとこです。 それができたら(まだやらなきゃならない作業は沢山残ってます)、LinuxのディストリビューションやBSDなどに大きな影響が出ると思いますね。僕ならそれも“リアルな製品に導入化を図る”にカウントするかな(笑)。

iPhoneが果たした一番の成果は、ユーザーのマルチタッチ入力に対する認知を高めたことでしょう。 ジェスチャーとマルチタッチは何年も前から研究の中心課題となっています。研究の観点から言うと、iPhoneは別に特別なことではないのです。

でも、多くの人にこういう標準マウスとキーのインタラクションに代わるテクノロジーの存在を知ってもらったという意味で、iPhoneはとても重要です。

JD : マルチタッチ&マルチユーザーのUI分野では競争が激しいと? ハン氏の努力で始まって、今はiPhone、MS Surfaceでまさにブーム真っ盛りという感じですけど…。

PH : タッチスクリーンのサポートを発表した途端、私のページもヒット数がものすごく上がりました。なので、タッチスクリーンの需要は大きいと思います。

競争がどれだけ激しいか、ですか? これは答えるのが難しいですね。一番乗りになることが一番重要とは限らないし。

ジェフ・ハン氏の入力技術は僕もすごいと思いました。あんなシンプルなアイディアで自分でも簡単に作れてしまうというところが。マルチタッチのハードウェアがいきなり手に届く安価なものになったのです。彼が最初じゃない、でもそのインパクトは大きなものでした。

iPhoneも良く似ていますね。これをやるのは別にiPhoneが最初じゃない。でもインパクト(影響)がとにかく大きいのです。

人々が熱狂していることと実際に使うものとの間にギャップがあることも確かですから、この「マルチタッチ競争レース」も何ヶ月かで終わってしまって何か別のことにフォーカスが移っているでしょうし、とりあえず今はどんなテクノロジーが揃っているかを振り返り、勝因と敗因を分析することが大事でしょうね。

JD : ピーターさん、今日は本誌のために貴重な時間を割いていただき本当にありがとうございました。

PH : こちらこそ貴重な質問をいただき、ありがとうございました!

 

-JESUS DIAZ(原文/翻訳:satomi )

MPX Project Page

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