ゲイツの次なるビジョンとは?

2008.07.22 15:00
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あー、しまった。ビル・ゲイツに嫌われてしまった。

ゲイツ財団マイクロソフトが進める共同ハイテク事業について訊いたんですけど、もう、こっちの質問が背骨伝わって上っていって「バカなこと聞くな」と両目からレーザービームが目に見えるようでした! やっぱり留置歴のこと聞くんだったなあ…。どうせカクテルのレセプションなんだから若い頃の小話で切り出す方がずっと場も和むし…とほほ。

携帯電話での少額決済、図書館へのパソコン導入、ハイテクの小さな事例をならべて、「もうこんなところでいいだろ」って感じで、突然離れていこうとするゲイツを無理やり引き止めて、こう一言伝えました。「これまでコンピュータの分野で僕らみんなのためにいろいろご尽力ありがとうございました」―あと約1週間で引退ですからね…(翻訳が終わった今と一ヶ月タイムラグあります)。

ゲイツがステージに上がって、バルマーと一緒にフラッシュの洪水を浴び赤の革張りの椅子に座りました。対する司会者はWSJ紙のモスバーグとスウィッシャー女史。All Things Dカンファレンス最初のライブブログのはじまりだ。指を温めて、椅子の下に置いたビールは邪魔にならぬよう足で奥に押しこめる。リアルタイムで氏の言葉の意味を把握するのって、ホント心もとないんですよね…。ライブは場数踏んでるはずなんですけど、世界で最も面白くて、金持ちで、頭のいい人の言葉を理解する、これはやっぱり大変です。こんな気持ち、前にもあったなあ、と思ったら、ゲイツ&ジョブズ対談の時、でした。

ゲイツは陽気でのほほんとしてるタイプですけど、喋り出すともう機関銃のように超ランダムなフレーズの固まりが雨あられと出てくるんです。ハイテクのジャーゴンにバルマーのビジネス・ジャーゴンが練り込まれてくるもんだから、拾うこっちも必死です。 事実とか、明確な概念、そういうの求めてアレコレ考えるんですけど―わかんない。そこで初めて気づくんですよね。「これは僕じゃない、ゲイツの問題だ」って。
 

モスバーグはVistaにネタ振ろうとするんですがどこ吹く風で、人ともVistaが通算2億9000万台売れた話をしてました。スケールとビジネスの話をして、広告・出版関連の用語を散りばめた情報を、ホワイトボードに書いたことは書いたんですが、ゲイツもバルマーもけっきょく製品本体の話はしませんでしたね。Vistaのことは今さらなんでしょうかね…。[...]

いったい君たちは何をやってるのだい?」と大御所ティム・オライリーが質問をぶつけました。要するに、マイクロソフトには“全デスクトップにWindowsを搭載する”という大きなビジョンがあった、そしてそれを実現した、これからの大きなビジョンは何なの? と。ゲイツはこれに明確な回答を出せなくてはならないんですが、返ってきたのは、こんな断片的な答えでした。;

「われわれが“Quests”と呼んでいるものの中に、当社の目標はコードとして組み込まれています。今後10年で家はどうなるのか? 今の10分の1の分量のコードが書けるようになる、その仕組みとは? ITスタッフが人を全く使ってないのは何故か? 情報ワーカーのデスクはどうなる? コミュニケーション手段は? そもそもコミュニケートする? こういったゴールを書き出して、オフサイトで検討し、変化のあり方を話し合っています。インタラクティブTVを例にとると…」

これは何でしょ? MS、何をやろうとしてるんでしょうね? これについてはMary Jo Foleyが新刊で触れてますけど、なんでもMS社にはこういったビジョンなるもの、70もあるらしいんです。それもビルがここで述べているように、ビジョンと言うよりは“探求”に近い。

プリンセス救出も探求ですし、テロ撲滅はもっと大きな探求です。「全デスクトップにPC(Windows)を搭載する」というのは探求以上のもの、つまりビジョンです。 でも会社最高の意思決定者をステージで見てわかったのは同社には回答がない、ということでした。

ライブブログが終わってノートを閉じてかばんにしまって深呼吸、と。次はディナーです。

1ダース分もあるテーブルから、デザートの隣の誰も座ってないテーブルにバッグを置いて、ルイジアナの海老の蒸し焼きを皿に採って戻ると、ななんとMSクレーグ・ムンディーとビル・ゲイツが向かいの席に座っているではないですか! 隣はエスター・ダイソン女史。―これだけの富豪と頭脳に囲まれたら本当に本当に緊張でカチコチです。

ゲイツは相変わらず広告の話を、お経読み上げるような単調な声で続けてます。目をあらゆる方角にぐるぐる回しながら。 夜空にテキトーな星座探すように。 誰の話も聞いてない感じです。

[...]さすがに3時間聞いても全然内容がわからないので、「ビル様の話なんだからちゃんと聞け」と言われるのは分かるんだけど、中座しました。席離れても誰もこっちなんか目もくれなくて、みんなゲイツの方を見てます。どうせ僕なんて、このダイニングで一番どうでもいい存在ですからねえ…。

ばったり会った友だちと一緒に食べて戻ったら人垣が…。中にはゲイツがいて、ディーン・カーメン、ナサン・ ミフルヴォルド(Nathan Myhrvold、元マイクロソフトCTO、あとエスター、オライリー。血をろ過するガン治療法について話し合ってるんですが、ナサンが質問すると人垣から当てずっぽうの答えがランダムに返ってきます。

…と突然そのとき。ビルに変化が起こりました。

人の話を、ちゃんと聞いてるんです。話の内容もはっきりしてる。ガッと集中してます。話に夢中で、頭で頷いたり。なんか会話に身を乗り出してるんです。

自分が前試したフィルターがあるので試してみたらどうか、とディーン・カーメンが言って、こうして、みんなが見てる目の前で新治療のアイディアが生まれました。うんうんと頷くゲイツ。ナサンの目を見て話してます。ディーンに戻って、こちらも…また目を見てます。100%そこにいます。口数は少ないんですけど、話す時は明確な事実・議論が出てきます。内容も筋が通ってる。そのゲイツのなんと生き生きと幸せそうなこと。

―やっとその時、分かった気がします。ゲイツがやりたいのは「革命を起こすようなガン治療法を先進国および世界の残り半分の恵まれない人たちに応用する、その方法を考えること」で、今はそちらにすっかり夢中なんですよ。ビル&メリンンダ・ゲイツ財団の目標 -彼らのビジョン-  は“全人類を平等に扱う”こと。ゲイツにはもう新たな大きなビジョンがある。それを探さなきゃならないのは、マイクロソフトの方なのでした


[Bill Gates' Retirement Party on Giz]

Brian Lam(原文/訳:satomi)

*訳者の夏休みで掲載が遅れましたがゲイツ引退特集の残りです。


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