NY地下213mのダイバーたち

NY地下213mのダイバーたち 1

ある意味、地下は「宇宙より遠い」かも。

地上もさることながら、ロンドン地下トンネルで見たように、地下というのは底知れない世界ですよね。ジェフリー・ディーヴァー著『ボーン・コレクター』 で、NYの地下にゾクッときた人には息が詰まるようなお話をひとつ。

世界で最も複雑怪奇な水路を持つニューヨーク。その市の水供給の半分を運ぶRondout-West Branch上水道トンネル(1944年完成)は、20年前からずっと1日2000万ガロンぐらいの水漏れが起こってるアキレス腱です。最深地下1200フィート(366m)、幅13.5フィート(4m)、全長45マイル(72km)。これが最近1日3600万ガロン(1億3627万4824リットル)のザル状態となり、市民から浸水の苦情が殺到、やっと市も修理に重い腰を上げ、5ヵ年の修理事業(総予算2億4000万ドル)に乗り出しました。

NYの地下700フィート(213m)で水漏れの元を探すんですから、極限のダイビング技が必要です。機材も大掛かりだし、シャフトNo. 6のダイビング(予算2200万ドル)ではシャフト内で視界を確保するため堆積物だらけの水を毎分3785リットル掻き出す装置、ヘリウムろ過装置、ダイバー保温ボイラー2台など牽引トラック14台分の機材を設営するだけで1ヶ月かかっちゃいました。

あと、ダイバーがヘリウム酸素を呼吸しながら1ヶ月暮らせる地下タンク(写真上)も、必要です。

市が選んだ深海ダイバーの精鋭6人は、「シャワーとTV、Nerfのバスケットのゴール」が備え付けになった、この長さ24フィート(7.3m)の加圧チューブに1ヶ月以上缶詰になって、「ヘリウム97.5%/酸素2.5%」のガスを吸い、この任務に当たります。

どうしてヘリウムかって? ―高圧な地底に長時間いると窒素が体に溶け込むため、一気に浮上(減圧)すると生命の危険もあるんだそうです。そこで加圧・減圧しながらヘリウム酸素を呼吸する「飽和潜水(saturation diving)」という技法で体を守るんですね。これだと700フィート(213m)潜ってからでも何度も減圧して体に負担かけなくてもいいし、圧力の心配はタンクに踏み込む時、1ヶ月以上経って、そこから出る時だけでOKというわけです。

以下は、ダイバーたちが1ヶ月以上暮らすタンクの中身。

 

NY地下213mのダイバーたち 2

作業は3人1組になり、ここから釣鐘形潜水器(ダイビングベル/diving bell)で地下70階まで降りていき、重量4000ポンド(1814kg)の銅管の金具を取りはずしたりの、作業を行います。頭のビデオカメラから地上の上司にリアルタイムの動画をフィード送信して分析してもらいながらやるようですよ?

12時間シフトを1回4時間の解体セッションに分け、1人ずつ担当し、故障したバルブ(弁)の配置場所までコンクリートを砕いて探り当てたり作業を消化。4時間の担当が終わるとダイバーは濁った水の中で8時間「休憩」し、それから水面のタンクに引き揚げます。

タンクではダイビング事業を請け負う「Global Diving and Salvage」(本社・シアトル)のスタッフ32人がスタンバイしてて、エアロック(気圧調整室)を通してダイバーたちに食事・着替え・本を渡します。制御室では生命救助技師がダイバーたちの酸素など空気の状態を絶えずモニターしています。

非番の時はなんでも食べ放題♪ でも、ヘリウム吸ってると人間の味覚芽が麻痺するみたいで、ステーキもサラダもうんとタバスコソース、ハラペニョ(メキシコ唐辛子)、サルサをかけちゃうそうです。パンはあっという間に潰れてピタパンみたいになるし、自衛隊のルポには「飴を不用意になめると、飴玉の中の小さな空洞が吸い付いてきて、口の中が傷だらけになることもある」なんて怖い記述もあります。無重力も怖いけど、これはもっと計り知れないですね。

「みんな激ヤセします。半端じゃなくカロリー消費しますからね。[...]誰でもできる仕事じゃないですね。重機を扱う土木作業だし、それも深いので」(Global Diving and Salvage社Robert Onesti氏)

作業が明けたダイバーたちは、もう1週間だけチューブ暮らしをして徐々に肺のヘリウムを減らして元の暮らしに体を慣らしてから、地上に出ます。

New York Times, thanks Andy!] 関連

Jack Loftus(原文/訳:satomi)

【関連記事】

何でもありのドバイに負けじと、世界初の地下サッカースタジアムをドーハに建造

ロンドンの超極秘地下トンネルが約7億円で売出

11月15日は埼玉県春日部市地下神殿オープンデー