全核保有国の爆弾入手ルート相関図

2008.12.17 18:00
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「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーは日本に原爆投下後、ニューメキシコ州ロスアラモス研究所のマンハッタン計画の同僚に、こんな不吉な予言をしました。

あれは、作るのはそんなに難しくない。[...] 人々が普遍にしたいと思えば普遍になる」

物理法則は普遍なのだから、欲しがる国とリソース(人・金・モノ)が揃えば核保有国になるのは時間の問題、それを止めることは不可能に近い、という理屈ですよね(これを「ギークにありがちな驕り」と米Gizmodoは書いてます)。

予言から60年後。世界で核保有国はたったの9カ国(米・露・英・仏・中・印・パキスタン・北朝鮮・イスラエル)で、普遍というほどではないようです。

ひょっとしてもっと難しいのでは? 政治で抑制できるなら希望はあるんじゃないの? ―という視点の核関連本が2冊出ます。書き手は内情に詳しい専門家3人で、上図はそれを紹介するNYタイムズの記事で拾ったもの。マンハッタン計画を起点に過去60年間の核伝播ルートをビジュアライズしてます(フルサイズはここ)。

こうやって眺めると現実には物理法則はどこへやらで、核が政治の駆け引きの道具に使われ、スパイ活動で盗まれ、外交で制限され、なんというか、バランス・オブ・パワーそのまんまな勢力図を成していることが分かりますよね。

1国で無理だから政治が介入するってことですかね。リバモア研究所&空軍OBのThomas C. Reed氏とロスアラモス研究所OBのDanny B. Stillman氏は共著新刊『The Nuclear Express』(1月出版)でこう書いてます。

「核時代の誕生以来、核兵器を単独で開発できた国はひとつとしてない。そうでないと主張する国はたくさんあるが」

「科学者の裏切り、忠誠心の分裂」も映画の世界だけじゃないようで、本にはイスラエル核開発の母体・ヴァイツマン科学研究所(ワイツマン研究所)理事に加わった、米マンハッタン計画のイシドル・アイザック・ラビ(ノーベル物理学賞)など、寝返った科学者の名前がたくさん出てますよ。

また、こんなところで書くのもアレですが、「中国は砂漠にある壮大な核実験施設をパキスタンに貸し、パキスタンはそこで1990年5月26日に最初の核爆発実験を行っていた」という、歴史を塗り替えるような記述もあるそうです。どうりでインドが1998年5月に地下核実験を行い、間髪入れずにパキスタンが地下核実験で応酬し世界7番目の核所有国になったんだなーと、まあ、これはWikipediaの棒読みですが、納得がいくというわけです。

米マンハッタン計画に深く関与したロシア人スパイたちが盗み出した情報を元に作られたスターリン初の核爆弾が、「長崎の原爆そっくり」だった話も登場します。

でもって、機密を盗んで投獄されたロシア人スパイKlaus Fuchsは1959年釈放後、毛沢東の科学者たちに長崎の原爆づくりのレクを行い、そして5年後(1964年)に中国は初の核実験で世界を仰天させます。
 

中国は1982年、途上国に原爆作りのノウハウを広める政策決定を行い、相手国にはパキスタン、アルジェリア、北朝鮮もあったそうな。ほぼ“誰でも組み立て可能”な“輸出用デザイン”も作り、それはパキスタンからリビア、イランまで広まったと書いてます(イランは繰り返し否定)。

中国の助力でパキスタンのアブドゥル・カディール・カーンは世界闇市場に核製造設備を販売します。このカーンのことを同著では「爆弾の燃料製造がどんな大変かも知らない人相手に嬉々として複雑な機械を売りつける“中古車ディーラー”」に喩えてます。

何故こんなに中国が核拡散に励んだか? ですが、同著では「敵の敵にテコ入れするため」か、「海外で核戦争や核の脅威を推奨し、北京が人類最後の生き残りになるため」だろうと仮説を立ててます。また、ここでは長くなるんで割愛しますが、フランスの役回りにもだいぶ触れてるみたいです。因みに本の謝辞には“水爆の父”エドワード・テラーとCIA元長官2人の名前も。

もう片方の本はロスアラモス研究所核研究部門元トップで国防省OBのStephen M. Younger博士が記した『The Bomb: A New History』(1月出版)。先の本よりは広く浅くですが、「核爆弾製造に必要な機密情報はすべてインターネットで入手できる」という通説のウソを暴く本らしいですよ?

最後まで読んで原爆のことに興味持たれた方は、コラム「われは死神なり」も是非どうぞ。


[NYTimes]

John Mahoney(原文/訳:satomi)


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