死のエレベーター

死のエレベーター 1

ダラスのニカイドウさんの事故の話は、ご存知ですか?

テキサス大学ヒューストン校医学部を出たばかりの外科研修医ヒトシ・クリストファー・ニカイドウさん(当時35歳)が2003年8月半ば、テキサス州ヒューストン市内のChristus St. Joseph病院で、2階からエレベーターに足を踏み入れた途端、いきなりドアが閉まって肩が挟まれ、そのままエレベーターが上がって即死した痛ましい事件です。

先に乗っていた外科医助手の女性Karin Leah Steinauさんは一部始終を目撃し、救出まで頭部と一緒に密室に閉じ込められ、そのトラウマで事故後、何ヶ月間もカウンセリング通いとなったそうです。

一体どういう流れで? 事件の翌日、Karinさんがヒューストン警察に述べた証言で詳しく振り返ってみましょう。尚、細かな描写が苦手な方は気分を害する恐れがありますので読まないでください。

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事故前の木・金2日間、その14号エレベーターは故障で閉鎖されてました。しょうがないのでKarinさんも階段を使っていたのですが、土曜朝9時半頃には「故障中」のサインが消えたので、「開く」ボタンを押して待機しました。

エレベーターは左右2機。数ヤード離れたところではニカイドウさんも待っています。

Karinさんはどっちにも転べるよう真ん中で待ってたのですが、自分の方のドアが開いたので乗って6階のボタンを押しました。すると後からニカイドウさんが来て、「今日は動いてるのかな?」と尋ねました。Karinさんは、「だといいですねー」と答えたそうです。

ところがニカイドウさんが完全に乗り切る前にドアが閉まり、肩が挟まれます

「彼は体を外に引っ張ろうとしたんですが、できませんでした。ドアが開かないんです」、「エレベーターに乗って体が挟まれたら普通は開いて閉まり直しますよね。でもそんなものは何も無かった。ためらいも無し。ドアは閉まって、そして動いたんです

不意のことにKarinさんも、エレベーターが動き出すまで「開く」ボタンを探せなかったそうですよ。

ニカイドウさんは必死でもがきました。外に出ようとがんばり、中に入ることも考えていたようだったとKarinさん。が、抵抗むなしくエレベーターは上がり続け、天井に頭部はあらかた切断され、胴体は左耳、下唇、歯、あごをつけたままエレベーターのシャフトの底に落ちていきました。

Karinさんは死に物狂いであらゆるボタンを押しました。が、エレベーターが止まったのは5階の4フィート下という中途半端な場所。そのまま頭部と1時間以上(初報では20分)、密室に監禁されたのです。

今も彼の目の中の表情が何度も繰り返し蘇ってきます

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アメリカではエレベーターおよびエスカレーター事故による死亡は年間30人、けが人は年間1万7100人(1992-2003年の米労働死亡災害調査)。うちエレベーターは死亡の90%(重症の60%)を占め、その半数はエレベータ工事作業員の事故で、そのまた半分はシャフトへの転落死となっています。

この事故の4年前にもダラスの工事現場で作業員(当時19歳)がエレベーターの位置を確かめるため首をシャフトに突っ込んだ途端、頭上からエレベーターが落ちてくる事故が起こってますし、事故の前月もニューオリンズで高齢の男性が手術に向かう途中、車椅子が降り切らないうちにエレベーターが下がって死亡しています。

ニカイドウさんを4年間ずっと教えたMargaret McNeese博士はマスコミに、「いつも笑みを絶やさず愚痴ひとつこぼさない、素晴らしい青年でした」とお悔やみを述べていました。

(時としてうまくいかない人と技術の関係を探るギズのウィーク企画『Machines Behaving Deadly』の原稿です)

[Houston News ]

Adam Frucci(原文/訳:satomi)

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