戦場のフォトグラファー 1

大学時代にロバート・キャパの生涯のビデオを見て、魅了されつつもなにか心にモヤモヤ切なくくる気持ちがあったのを思い出しました。

戦場写真家報道カメラマン

戦争の起こっているその地で写真をとる。数々の衝撃的なイメージ、写真というメディアの中でそのイメージは時に美しく、時に残酷に私たちの目に移ります。そしてそこから「何か」を感じ取り、戦争というものを考えるわけです。

しかし、当然ながら我々が目にしている衝撃的なイメージはあくまでも写真を通してみる戦争の断片。実際に戦場に出向いて写真をとる戦場カメラマン達は一体何を見ているのでしょうか。

Time誌やNewsweekに掲載されたイラクやアフガニスタンでの紛争の写真を撮っている戦場カメラマンのテル・クリヤマさんが自身の体験を米GIZMODOに綴っています。

戦場カメラマン達は戦地でどうやって生きているのか。

続きでどうぞ。

 軍事作戦をたてるときよく言われることがある。

「アマチュアは策略を考える。プロは兵站を考える。」

戦地で日々写真をとるにの必要なのは写真をとる技術よりも、A地点からB地点へいかにして頭を撃たれずに移動できるかということ。そして、確実に合図と逃げ道を見つけるということだ。

自分はたぶん戦場カメラマンとしてえらそうに言える立場ではないかもしれない。自分自身を戦場カメラマンだと思ってない、ただここ10年くらいをイラクやアフガニスタンという戦地で過ごしただけだと思っている。この紛争が始まった当時、自分はまだ若いカメラマンだったが、今はもう若くない。そして、この戦争は長期に渡るものになろうとしている。

故に、今後、初めて戦地へ写真を撮りに向かう人の何かの役にたつように、ここで自分にできるアドバイスを話せればと思う。

【シートベルトをつけろ】

アフガニスタンへと向かう報道関係の人からよく受ける質問の1つに身を守る道具、防弾チョッキ等について聞かれる。僕は、まずはシートベルトはつけましょうと言うようにしている。冗談みたいだけど冗談じゃない! 命を落とす危険が1番あるのは交通事故。現地のドライバーはとにかくすごい。世界有数の危険ドライバーの地域だと思う。最近のパキスタンでの取材で、到着から72時間ですでに4回くらい事故にあいそうになった、防弾チョッキなんてその時まだリュックの中だよ。

【こんにちは、ありがとう、1から10まで、現地の言葉で言えるようにしろ】

旅行者がフランスやイタリアに行く時、たいがいの人はミニ会話集を持っていく。しかし驚くことにイラクやアフガニスタンに向かうカメラマン達のほとんどは本当に基本的な会話すら勉強してこない。ついこの間、とても経験のある戦場カメラマンにアフガニスタンではアラブ語は話しませんよ、と教えたぐらいだからね。

【戦場の最前線を探そうとするな、それは逃げ水のようなもの】

テロとのグローバル戦争という、奇妙な呼び方は宣言さえされていないが21世紀に起こった第3次世界大戦とでもいうのだろうか。ただ、この『第3次』は第1次世界大戦や、第2次のようにはいかない。昨今の軍事用語では「バトルフィールド」という言葉は「バトルスペース」にとってかわられている。

この完全包囲された範囲は単純に土地だけを表すのではなく、人の作る心や精神、そしてインターネット上の情報戦争にまで及んでいるからだ。最前線がどこにあるか見極めかねる。

戦場のフォトグラファー 2

【必要な道具を見極めろ】

何を持っていけばいいか。必要なものは無限にあるような気がするけど、その中から本当に必要な道具を選んで持っていかなくてはいけない。

・過剰に着飾らない(武装しない)

準軍事ビジネス界では、特別仕様の製品が多く売られている。軍事用懐中電灯だとか、兵士スタイルのカーゴパンツだとか。個人の軍事マニアとかはこういう無駄に高い戦争風のアイテムが好きみたいだれけど、実際に自分たちにこういうものは必要ない。実際に現場に行ったらお金とかIDとかさんざん求められるのだから、「イラクに自由を!」なんて書いてあるパスポートケースとかいらない! わざわざ過剰に戦争風にしたものは必要ないってこと。

・プラスティックを持っていけ

プラスティックっていっても、ジップロックとか、タッパーとか、荷造りテープとかそういうもの。

イラクやアフガンのような場所は、想像もできないほど砂やホコリがまって、たまには雨や泥が降る。こんな状況では大事な道具はぐちゃぐちゃになってしまう。この環境が何よりの敵になりうるくらいだ。大事で高価なカメラ類を守るためにも、特別仕様の軍事グッズよりも、安くて役に立つテープやバッグを持っていくべき。

・非常バッグの準備をしろ

戦地に向かうわけだから、いつ何があってもおかしくない。

非常時にこれだけは持って行くんだというバッグの準備を必ずしておこう。何かおきたら、これをさっと持って逃げる! これ以外に、サバイバルキットを常に体のどこかに巻き付けておくのも忘れずに。もし非常事態になって、すごい悪いシチュエーションにたたされて、爆撃をうけて破壊されたビルの中から這って脱出なんてことがおきたら、非常バッグすらもどっかにいってしまうからね。肌身離さないサバイバルキットは非常バッグとは別に必須。

ミリタリーキャンプやホテル、外国人の滞在場所には攻撃がしかけられることがもちろんある。ベッドで寝てる間に爆撃をうける事も。移動中の道もしかり。生還できたらラッキーというこの状況で、ちょっと荷物まとめるから待って、なんて時間はあるはずない。

• 自分のキットの中身

-ノート:2冊

-パスポート:2枚

-simカード(アフガン、パキスタン、インド、スラーや、アメリカ)

-ミニ防水ケース:2こ(クレジットカード、タバコ等)

-ジップロックバッグ(中身はお金:アフガン、パキスタン、インド、ユーロ、ポンド、英貨、カナダドル、USドル、UAEディルハム)

-身分証(プレスパス、軍のバッジ等)

-救急セット

-電池(単三、単二、カメラ用リチウム電池)

-電源タップ/サージプロテクター(ユニバーサル/マルチポート)

-スチールケーブル/TSAロック:5つ

-AC/DC 車電源トランス(シガレットポートはアメリカの電力に対応するソケット)

-電気関係をまとめたケース(充電器、アダプター、USBケーブル等)

-上で述べたプラスティック製品。ジップロックバッグや、テープ。頑丈なゴミ袋

-メモリーカードとそれを守るためのケース

-ノートPC

-500GBの外付けハードドライブ:3つ、とそれを入れるミニpelicanケースmini-pelican case

-ヘッドライト:2つ(赤いジェルを塗ってる)

• 撮影機材(pelicanケースに全て収納)

-Holga:2台

-Widelux:2台

-Leica:2台 (M6、M8.2)

-Canon G10:1台

-バッテリー(G10、M8.2用):3つ

-電源ユニット(G10、M8.2用):2つ

-ライトメーター

-オーディオレコーダー

-GPSナビ

-折りたたみ式ステレオヘッドフォン

-ミニドライバーセット

-ナイフ

-マルチツール:2つ(大きい方はワイヤーカッター付き、小さい方はハサミ付き)

-携帯電話:2台(1つはアメリカ、1つは海外対応)

-フィルム、メモリーカード、ビデオテープ

・その他

-防弾チョッキ(レベル4、ケブラーヘルメット付き)

-ブーツ、トレーナー、サンダル

-超軽量寝袋、ビビーサック、ドーティー(腰布)/シーツ

-防水ラフティングバッグ

-サバイバルブランケット/キャンプタープ

-ロープ、紐、ケーブル

-洋服(普段のものと、その土地のもの)

【軍随行はいい点も悪い点も】

よくも悪くも、戦場に初めていくのなら軍がトレーニングもしてくれる軍随行記者という手もある。いい点は軍随行でいくと、交通手段、滞在場所、食料、水、こういったものは準備されるということ。ファルージャやカンダハールといった土地では、ベッドや食料なんてどこにでもあるものじゃないから、これだけでも、軍随行は悪いことじゃない。

悪い点は、もちろん首根っこを押さえられてるってところでしょう。自由度が低い。

自分で行ったほうが、実際の戦地でよりよい(偏りのない)場所/視点から撮影できる。

ただし、やはり個人でいくのは、危険で、お金もかかるし、やはり難しい。年々個人でやる人は減ってる。

軍随行でディヤラやヘルマンドに行ったとしても、自分は戦地で全てを見て来た、なんて思ったらダメだ。軍随行で見たものは、あくまでも、枠の中のもの。軍は随行カメラマンに見せるものをある1部だけにとどめているからね。

戦場のフォトグラファー 3

【体を鍛えろ】

もちろん、特殊部隊兵士みたいにムキムキになる必要はない。でも、太り気味のヘビースモーカーとかだとやっぱり困るよ。周りから、この人は大丈夫だ、って思ってもらえない。なんか(あなたも自分も)心配だからベースキャンプに残ってなよ、って言われることになる。

自分は、5'6",、140ポンド(約170cm、63kg)で38歳。デスク仕事をしてればいいものを、わざわざ戦地で、山で砂漠で、自分の体型の2倍もある、でも年齢は半分くらいの兵士と生活を友にする。

自分の体重の半分以上もあるバックパックを引きずって歩くのは、膝、足首、とにかく体に負担がかかる。走ってでも水泳でもウォールクライミングでもなんでもいいのでやって 1番の基本道具、「体」とを鍛えて体力つけるべきだ。

【フィクサー:戦争ガイド人】

現地のガイドになってくれる人は、その土地の記者だったり、タクシーの運転手、医者等、英語が話せて問題解決してくれる人。もしこれがアメリカ人やヨーロッパ人だったら「フィールドプロデューサー」とか「メディアコンサルタント」とか大層な名前がついてるだろうね。でも、イラクやアフガンでは、1日100ドル(約1万円)で我々外国人ジャーナリストのガイドをしてくれる。ジャーナリスト達がそれぞれの国に戻って戦争の話をするとき、このフィクサー達は登場しない。完全に裏方である。

彼らには敬意を払うべきだと思う。彼らの知識と我々の仕事をリスクを伴って協力してくれるということに。ただ、100%信頼するのもどうかと思う。中にはずるい奴らもいるからね。自分はフィクサーはもう使わない、だって過去に頼んだことある人たちはもうみんなこの世にいないからね。

【みんなの行く方ばかりを追うな】

過去8年間ほど、アフガニスタンは「忘れられた戦争」で、イラクこそ「中心」だった。

でも、ここ最近アメリカ政府はその重点の置き方を変えた、だから今アメリカのメディアはアフガニスタンをまた追い始めた。

主要ジャーナリスト達はアフガン、パキスタンの複雑さに加えて仕事の取り合いをしてる。でも実は今注目されているスペシャル任務はアフリカのソマリアになってきてる。型にはまった考え方ばかりじゃダメ。新鮮な話題だって言われるころには、実はもう古い話になってるものだ。

戦場のフォトグラファー 4

【読め、考えろ、そしてきけ。信じるまでに3回くらいチェックが必要】

オススメの本をいくつか。

Ahmed Rashid著「Descent into Chaos」

Tom Ricks著「The Gamble」

David Kilcullen著「29 Articles」

Alvin、Heidi Toffler共同著「War and Anti-War」

John Crawford著「The Last True Story I'll Ever Tell」

【Lightstalkers.org】

5年前、イラクでプロジェクトにあたっていた時、自分のウェブ開発をやってる兄弟と協力して、ウェブデータ共有型のサイトを作ったんだ。自分みたいな人間同士のネットワークのためにね。旅行会社が答えられないような質問があったら、lightstalkers.orgで質問してみるといい、誰か答えてくれるだろうよ。

【Teru Kuwayamaさんについて】

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Teru Kuwayamaさんは今まで単独、又はアメリカ、NATO、アフガン、パキスタン、インドの軍随行カメラマンとして、イラク、アフガニスタン、カシミールに15回以上訪れています。2009年、Teruさんはパキスタンのプロジェクトでthe Dorothea Lange-Paul Taylorアワードを受賞、その後、the South Asian Journalists Associationに加盟しています。

2009から2010年は、スタンフォード大学の特別研究員を勤め、Time誌、Newsweek誌、Outoside誌で投稿カメラマンとして、アフガンやパキスタンの僻地の子供たちのために学校をつくるためのNPO団体、Central Asia Instituteの契約カメラマンとして活躍。

Lightstalkers.orgの共同設立者であり、Battlespaceonline.org(イラクとアフガニスタンの戦争写真)のキュレーターでもある。

Teruさんありがとうございます。このエントリーを米GIZMODOにアップした後、Teruさんがまたアフガニスタンとパキスタンに戻りました。

※コメントありがとうございました。修正しました。

[Lightstalkers.orgBattlespaceonline.org]

teru kuwayama(原文/そうこ)

 

※コメントありがとうございます!修正しました。