アップル・ゲシュタポ、リーク犯探しの実態

アップル・ゲシュタポ、リーク犯探しの実態 1

アップルには自称「Worldwide Loyalty Team(世界忠誠チーム)」、一部社員の間で「アップル・ゲシュタポ」と呼ばれる仕事人がいます。

社内とストアを四六時中嗅ぎ回ってジョブズとオッペンハイマーに直接報告するモグラ軍団の彼らは、一体どんな風にして不審人物を洗い出すのか? 

その一端をご紹介しましょう。

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「あのWorldwide Loyalty Teamについて知りたいんじゃないかと思ってね」と、トム(Tom)さんからメールがあったのは最近の話です。さっそく書き送ってきた内容を読んでみたら、まるでゲシュタポ(ナチスドイツの秘密警察)じゃないですか。ないのは拷問と殺害のパートぐらいで...。

もちろんトムさんはナチスドイツに住んだことはありません。ナチスでは国家秘密警察が令状も理由もなく誰の家でも会社でも日夜問わず押し入って、何でも誰でも手当たり次第差し押さえて、国家の敵をどこまでも探し続けていましたよね。そこではプライバシーなんて欠片もなくて、身の潔白が証明できるまでは有罪でした。

そんなナチスドイツはおろか東独にもソ連にも共産党中国にも住んだことがない。トムさんが住んでいるのは今のアメリカです。だからそういった国々の人みたいに自分や身内の命が奪われる危険は感じたことこそないのだけれど、このカリフォルニアのクパティーノという小さな街のOne Infinite Loop(アップル本社所在地)という伝説の番地で働きながら、絶えず監視され、国家じゃないけど反逆罪の容疑者みたいな扱いを受け、プライバシーの欠片もない暮らしがどういうものかはトムさんも知っています。

アップル本社で働いていたトムさんには、みんな痛いほど良く分かるんです。


封鎖作戦―Operation Lockdown

 

トムさんも社外に漏れてマズい情報をマスコミに流してさえいなければ、「捕まったら最後、クビか、アップル法務部に訴えられるしかない」と怯える必要もなかったわけですけどね...。でも、プライバシーがない点においてはトムさんも同僚も状況は同じだったと言います。

「アップルはどこにでもモグラを張りつけています。リークが疑われる部署には特に重点的に。彼らがいることは管理職の人間も知りません」、「ひとたびリークの疑惑が浮上すると直ちに特殊部隊 --みんなそう呼ぶんです-- が当該部署に何時でも抜き打ち調査にきます。特に午前。そして誰でもいいからその建物の中で一番上級職の人間を呼びつけて、作戦遂行の調整をするよう言いつけるんです」

トムさんは「作戦」と呼んでますが、別に特別なことではありません。楽しいイベントじゃないだけで会社では普通に行われている慣行だし、手順はとてもシンプルです。-- まず自分の机から動かぬよう上司が社員全員に指示を下し、これから何をするか、何が起こるか説明します。アップル・ゲシュタポは伝令には一切ノータッチ。ただ計画通り全て事が運ぶよう、その場に立ち合って、監視役を監視してるんです。

次に、所持する携帯はすべて没収されます。普通は全部一斉回収ですね。つまりそれだけ検査に長く時間がかかるということ。 携帯が調べられてる間、社外に連絡が必要な人は許可を求めなくてはいけなくて、通話中も見張りがつきます。

カメラの提出は求めてきません。アップルにはカメラがないので。従業員のカメラ社内持ち込みは許可されていないんです。仮に使ってる携帯がiPhoneなら、ラップトップにバックアップが取られてしまいます。「そもそもiPhoneはアップルが全社員に無料で配ったものなので会社の備品なんだって、最初の頃は言ってましたね...」とトムさん。全社員とも携帯はロックを外し、どんなロック機能も使えない状態にするよう指示され、その上で特殊部隊が出てきて最近携帯を何に使ったかチェックを始めるんです。

バックアップを全部取り終えたら、今度は携帯に残った他のテキストメッセージや写真を片っ端から見て回る番です。携帯にポルノがあれば、それも見られる。夫、妻、愛人、タイガー・ウッズに送ったテキストメッセージがあれば、それも見られる。プライバシーもなし、手加減もなし。

これが一通り起こってる間、社員はパソコンをスクリーンセーバーに切り替えるよう命じられます。こうしておけば特殊部隊も社員同士あるいは社外との間でチャットが行われる心配がないですから。

封鎖(ロックダウン)中は社員同士で私語もテキスト送信も電話も一切禁止。「冗談のような命令ですけど、参加を嫌がる社員は基本的にそのまま出ていって二度と帰ってくるなと言われるんです」


2009年なのに『1984』の世界

もちろん全部参加は任意です。上司は携帯を手放すよう勧め、それに従わない社員は首になるか、なぜ携帯の受け渡しを拒んだか動機を詳しく調べられます。ガサ入れと並行して、全社員にはNDA(守秘義務契約書)に署名を求めてきます。入社時アップルのNDAにもう署名しているにも関わらず。

「僕がこのイベントを経験したのは数回です。目当てのものが見つかると(普通は見つかる)、その人は終業時間までずっと居残るよう言われます。そして静かに会社の敷地を去るよう言われるんですね、警備員に付き添われて」(トムさん)。

敷地内にいる間は特殊部隊が用もないのにウロウロして彼を見ていたそうです。「残りのことは全部ドアの向こうで行われるので、いろいろあるとは思うけど、僕にはよく分かりません。僕が知ってるのは、深刻な容疑のある相手はとことん尋問され、訴えると脅されるということぐらいですね」

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すべて暗黙のうちに摂り行われることなので、どれだけ頻繁にこんなことが行われていたかは知る由もなしですけどね...。この「Worldwide Loyalty Team」では他にもいろんな活動を行って全員の素行を絶えず見張っています。全社員のメール履歴をサーチしたり(これは他社・政府も普通にやっている慣行)、偽画像の種を撒いたり、新製品発表のおいしい噂をわざと広めて情報を流出した犯人を掴まえるんですね。

トニーさんの話を読みながら、スティーブ・ジョブズとアップルについて読んだ逸話が全部心の中に蘇ってきました。社員がマッキントッシュを生んだ勇猛果敢&自由奔放な海賊で、ジョブズが船長だった頃の話ですね。Macも極秘プロジェクトだったけど、当時は情報が外に漏れぬよう取り締まる秘密警察なんてなかったし、一日の激務が終わると、たまにはMacチームのみんなでカリフォルニアの海に繰り出して遊んだりしていたんでしたよね。なんの心配もなく、ただハッピーで、「この新しく出る革命的コンピュータが世界を変える、一度にデスクトップ1台ずつ」と信じて疑わなかったあの頃。みんなで情報は共有して、社員の間に秘密なんかなかった。そんな空気があったからこそ、スティーブ・ジョブズ自身が「めちゃくちゃスゴい(insanely great)」と呼ぶようなコンピュータが生み出せたんだと思うんです。

今の競争の激しい市場で勝ち抜くには秘密が最優先なのは分かりますけど、この「Worldwide Loyalty Team」の話を読んで思ったのはアップルもこんなに変わってしまったんだなあ...ということ。ハッピーなヒッピーの会社からKGB式の封鎖とゲシュタボみたいな尋問を行う会社になってしまって、しまいには自殺まで...(先)

Infinite Loopで誰かを追い詰める時、特殊部隊があのCMの武装に身を固めていても...



...もう驚かないです。


Jesus Diaz(原文/satomi)