iPad支配の恐怖?

2010.02.08 23:00
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iPad発表以降、さまざまな批判がありますが...。

iPadに対して、クローズドだからといって、恐怖感を抱いてしまう人がいます。でももし、何か恐怖すべきものがあるとしても、アップルを責めるのはお門違いじゃないかと思うのです。

例えば、たぶん相当優秀なエンジニアなのだろうと思われる、グーグル社員のマーク・ピルグリムさんは、「ハッカーの落日」と題し、次のように書いています。

iPad用のプログラムは、iPhoneと同様に誰でも開発できるだろうということはわかっている。それ自体は、現代の開発者は自分が開発者だという自覚を持っているので、問題ないだろう。でも、未来の開発者はそうではないのではないか。好きなようにいじることができなければ、誰も自分で開発できるということに気づかないのではないか。

また、ジョン・ノートンさんはガーディアン紙で次のように述べています。

iPadが大好きで頭がいっぱいな輩が何百万人もいる現状がいかに異常なことか。アメリカの、コントロール大好きで知られる一企業が、iPhoneiPadを通じてオンライン世界への門番になることを安易に許してしまう、この事態はどうかしている。
iPadiPhoneと同様に、クローズドで、厳格にコントロールされたデバイスだ。アップルに明確に承認されなければ、どんなものもiPadiPhone上で動かすことはできない。我々は、人間の自由を信じるハクスリー的理想から生まれたコンピューターという道具を使って、逆に管理主義的なオーウェルの世界にたどりついてしまったのだ。しかもおろかなことに、「これこそ夢の世界」などと思ってしまうのだ。

なんだか、今までマイクロソフトが初期のプログラマやオープンソース世界の人たちからされていた批判を彷彿させますね...ただ、個々の企業を攻撃していても、何も始まらないのではないでしょうか。

ではどうしたらいいのでしょうか? 以下にいくつか提案します。
 

恐れるのはやめて、作り始めよう

ピルグリムさん自身は、コンピューターをいじくり倒すことで技術が好きになっていったそうです。確かにiPhoneやiPadだとそのような「いじくり倒し」はできません。米国には「デジタルミレニアム著作権法」(DMCA)という法律があり、アップルはiPhoneのJailbreak(脱獄)がDMCA違反だと主張しているのです。でも、そんなことが本当に「子供の可能性を阻害する」ことにつながるでしょうか?


子供にプログラミングコンピューティングについて興味を持って欲しいのであれば、そういう教室を開いたり、そういう本やテレビ番組を作ったりといった、他の手段も考えられるはずですし、そのようなコンピューターが「死に絶える」ことはないでしょう。そもそも全くの素のパソコンを渡されて、興味深くハッカーのようにいじくり倒し、技術を学んでいるような人がそれほど多いとも思えません。

DIY精神は立派だと思いますが、自分で自分の道具を作りたくなった人は今後もそのようなコンピューターを選んでいくでしょうし、そうしたコンピューターがアップルのような企業によって駆逐され尽くすわけでもありません。また、プログラミングを学ぶとしても、イチから全てを自作しなくては「いけない」ということはなく、先人が作り上げてきた便利で質の高い道具を使って、その上でモノ作りをするのも立派なのではないかと思います。道具が出来合いであろうと自作であろうと、モノ作りを始めることはできますよね。


著作権法改正が必要

DMCAは、ただの脅しでしょうか? 自分の持っているデバイスのファームウェアをクラックしたら刑務所行きというのはデタラメでしょうか? そうであることを願います。好奇心旺盛な人間がちょっと自分のコンピューターの中身を調べただけで刑務所行きなんて、変でしょう。


でも、この問題を解決するにはどうしたらいいんでしょうか? それには、法律を変えるしかありません。電子フロンティア協会がこの問題ではすでに活動していますが、ぜひがんばってほしいところです。

アップルのコントロールについて文句を言っているエンジニアでも、特許法やDMCAに守られている他の企業の製品を使っていない人はいません。その人たちはグーグルのブラウザを、Intelプロセッサ搭載のWindowsマシンで使いながらアップルの悪口を言っていますが、状況はどの企業の製品を使おうと同じです。営利企業の製品を使っている限り、何らかのコントロールを受けるのは必至なのです。

また、おかしなことに、オープンソース派の希望の星がグーグルAndroidなんですが、Androidだって、良いアプリはグーグルによってデザインされ、厳密に管理されているんです。それにグーグルも、その影響力を行使して無数のウェブベース企業をなぎ倒してるんです。そう、オーウェルだかハクスリーだかが夢想したようなやり方で。アップルやマイクロソフトが糾弾されているのと同様に。

しかも、iPhoneはさんざんクラックされていて、アップル製品自体は実際、ハッカーのパラダイスなのです。ただ問題は、自分の持ち物であるiPhoneをクラックしたことで、DMCAに抵触してしまうということなのです。本当に状況を変えたいと思うなら、個々の企業の悪口を言うのではなく、DMCAを改正させるために、関係団体に働きかけるなり、協力するなり、できることはあるはずです。


もっといいモノを自分が作ればいい

「(アップルは)子供たちから好奇心を奪おうとして必死になっている。アップルは世界中のハッカーに対して宣戦布告した」とピルグリムさんは言ってます。本当にそうでしょうか?


アップルは製品を売る企業です。企業の立場として、製品をクローズドにしておこうと決めただけのことです。もちろん、売り方をコントロールすることで得られるメリットもあるでしょうけど。

アップルは政府じゃないんです。アップル製品を買うかどうかを判断するのはあくまでユーザー側であって、誰もが無理やりアップル製品を使わされるわけではありません。より魅力的な製品があれば、そちらの方が普及するでしょう。

それでもアップル製品が評価されていることがどうしても気に入らないなら、アップルに対抗できるようなモノを自分で作ってみてはどうでしょうか?たくさんのハッカーが切磋琢磨してより良いものを作り、技術だけでなく、デザインや、わかりやすい売り方や、使いやすさといった様々な面を組み合わせていけば、利用者側の選択肢は増え、みんながハッピーになります。

自分たちの力で良いものを作り、オープンソースでもクローズドでも、できる限り納得いく形で世の中に提供することができる自由。これは、アップルや他の大企業の製品が売れようが売れまいが関係なく、コンピューターやインターネットの世界に存在し続けてきたものだと思います。

ただ、それは自分の理想をちゃんと形にして世に問う人が存在し続けてきたからこそ、実現され、維持されてきた自由です。「ハッカーの落日」を恐れるのであれば、すべきことは企業批判ではなく、まず自分自身が自立してちゃんとものを作るハッカーであり続けることではないでしょうか?


Joel Johnson(原文/miho)
 

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