[Giz Explains]ISOはデジタルカメラの新たな指標である!

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高画質高画質言っていますもの。

1975年、初のデジタルカメラは白黒の100本の線をカセットテープに記録するのに23秒かかりました。今日、Nikon D3sでは1億2000万ピクセルの写真が1/8000秒で撮影できます。もちろん、暗いところでも撮影可能。

デジタルイメージの世界はすごい早さで進歩してきました。その進歩は主にピクセル数をアップする方に進みます。1991年頃に撮影されていたカメラは、1.3メガピクセル。1999年に発表された報道やデザイン業界のプロ向けNikon D1は、当時5000ドル(65万円)で、2.7メガピクセルのCCDセンサーでした。今となっては小さいものですが、当時、多くの印刷物には十分な大きさでした。しかし、十分では満足できません、もっと良くなる余地があったので、どんどんピクセル数はあがっていきました

※メガピクセル(MP/100万画素)

現在、多くのカメラ(電話端末付属じゃないものなら、ほぼ全てと言っても過言ではないのでは)は少なくとも10メガピクセルくらいは楽勝、コンパクトカメラでも14メガピクセルあるものも常識になってきました。Canonの安価なデジタル一眼のモデルは今や18メガピクセルを基本に設定されています。

 このように、画素数はデジタルカメラの性能をわかりやすく理解する指標として市場ではよく用いられてきました。

さて、ガジェ夫ガジェ子の皆さんは画素数でかい=いい、っていう単純な話ではないとお気づきと思います。では何が新たなデジカメの指標になるのか? カメラ大好きギークなあなたはローライト環境、暗いところでの性能に焦点をあてていませんか? 最新のNikon、Canonの最新デジ一最新モデルはISOが100000、そう10万超までありますからね。そう、新たなデジカメ戦争それはISOなんです!!

続き、ぜひどうぞ!

 

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Photographyというくらいですから、もちろん光で描いているのは百も承知です。デジカメが光を集める、つまりデジカメが世界を見る方法と、我々が目で世界を見る方法は実はそんなに違わないのです。光、つまり光子がレンズを通ってイメージセンサーに当たり、それが電気信号に変換されます。光子が水晶体を通って網膜に当たり電気信号に変換される。ね、似てるでしょ。それをふまえまして、イメージセンサーがより多くの光を集める事ができたなら、それにこしたことはないのです。

カメラのスペックが10メガピクセル、これはただ単にこのカメラで撮った写真は1000万ピクセル入りだよ、ということだけを伝えているのではありません。一般的にこの数字はイメージセンサーでいくつのフォトダイオード(フォトサイト)があるかという数値にもなっています。

ふぉとだいおーど? フォトダイオードとはセンサーで実際に光に反応する部分のこと。ちっちゃい四角いスポットの並びです。このちっちゃい四角のフォトダイオードこそ光(光子)を電気(電子)に変えている部分です。フォトダイオードは光の受け皿であり、フォトダイオード1つ1つが大きい=受け皿が大きいと、より多くの光を受ける事ができます。外に小さなバケツと大きなバケツをだしておいて、雨が降ったらどっちがよりたくさん雨水をあつめられるか、それと同じことです。受け口の大きいバケツの方がたくさん集める事ができます。

とにかく大きければ大きいほど、より多くの光を集めることができるということですね。

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イメージセンサーのサイズにはいろいろあります。このWikipediaから拝借してきた画を見るとわかりやすいですねぇ。

Canon 5DやNikon D3で使われているフルサイズセンサー(図ではFull Frame)は、光を受けるスペースが、コンデジのちびっこなセンサーよりも大きい

では、もしセンサーの大きさ違いの2つのカメラがどちらも12メガピクセルであったら、つまりどちらも光子を電気信号に変えることのできるダイオードの数は1200万と同じであったら。するとどういうことかと言いますと、センサー自体が大きい方がよりたくさんの光を集めることができます。だって、1ピクセル、ひいては1フォトダイオード自体が大きくなるわけですから。

同じ数のバケツしか積めないのであれば、そのバケツ1つが大きいほうが光をいっぱい集めることができるよ、ということ。つまり、より大きなバケツを積むスペースのある大きなイメージセンサーの勝ちということです。

つまり、光の少ないローライト環境、暗い環境に置いてはこれがそのまま写真のクオリティに影響します。

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さて、次いきましょう。イメージセンサーはフォトダイオードが全てじゃありませんよ。ではここでスタンフォード大学の電気電子工学部のPeter B. Cartrysse博士にお話をきいてきました。

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なんでも理想的なピクセルは光を集めるためによりフラットなものがいいそうです。ただ、もう基本的に最初からフォトダイオードは幾つもの層、構造の上に乗っかっている(マクロレンズあり、カラーフィルターあり、メタルワイヤーあり)のでもうその時点で難しくなっているのだそう。

この構造により、フォトダイオードがどれだけ光を見る(集める)ことができるかが変わってきます。つまり、多くの製造者はこの構造を少しでも薄くフラットにするために日夜努力をしているということです。少しでも薄く、それはもう何百ナノメーターの世界です。

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方法の1つのとしてバックイルミネート型センサーがあります。これは上の画の通りです。メタルワイヤーの層を後ろにもってくる。そうすることによって少しでもブロックされる光を減らしてフォトダイオードがより光を受けられるようにするもの。

現在ではまだバックイルミネート型だとよりコストがかかるという難点がありますが、これだと、より光がはいるのでピクセルの数は少なくても大丈夫になります。(その分、1つがより光を集めることができるから。)

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通常のイメージセンサーの組み方だと、フォトダイオードの上に光が通過するマイクロレンズがあります。今まではこのマイクロレンズの間に溝があり、光に反応することができるエリアにきちんと光を通せていない部分がありました。CanonとNikonはこの溝がないマイクロレンズを開発し、光を無駄にすることなくフォトダイオードに送ることができるようになりました。上の画参考。

 

さて、もっと光を! と言う最大の理由はノイズにあります。ノイズにもいろいろあります。光子がイメージセンサーにきちんと一貫して当たっていない場合にできるノイズ。イメージセンサーにもう最初からついてきちゃう赤ノイズ。熱等が理由で目に見える光以外の他のとこからやってきた迷子の光子によって起こるダークカレントノイズ

フィルムで写真を撮っていた頃(撮る時)光の感度によってフィルムを買い分けていました。デジタルカメラでは、ISOの基準を使ってカメラの感度設定を変更します。実質これはフィルム買い分けと同じ作業です。

着目すべきは、ISO100で撮影しようがISO1600で撮影しようが、センサーに入ってくる光子の数は変わらないということです。センサーからの信号をただ押し上げているだけにすぎず、その過程でノイズが発生してしまいます。

もしより多くの信号を送ることができたら、言い換えればカメラ内のセンサーにもっと多くの光を集める事ができる強力なピクセルがあれば、ノイズの少ない写真を撮る事ができます。D3(ISO 6400)で撮られた写真がコンデジで撮られた写真よりもなぜきれいにみえるのか、という理由はそれです。また、1D Mark IVやD3シリーズがなぜISO10万という高い数値で撮影できるのかという理由もそれです。強力に光を集めることができるセンサーがはいってるのです。

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(上の写真はNikon D3s ISO 10万2400で撮影)

今日の多くのデジタルカメラが使っているイメージセンサーには2種類あります。CCD(harge-coupled device)センサーとCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)センサー。

Cartrysse博士によると、「根本的には、少なくとも物理学の面からは、どちらのセンサーも全く同じである」とのこと。つまり、どっちのほうがいいとか特にないってことですね。CCDセンサーのほうがより完成したイメージ技術です、故に長年CCDのほうがいいとされてきました。

しかし最近ではCMOSセンサーがその座を奪いにかかっています。電話端末のカメラからデジタル一眼のハイモデルまで、CMOSがどんどん幅をきかせてきています。Cartrysse博士は、とは言ってもCCDセンサーはまだ消えてしまわないだろうと予想。しかし、メインの市場というよりはニッチな分野で残っていくだろうとのこと。

CMOSセンサーはCMOSプロセスを使ってできたもので、実はCCDセンサーよりも制作コストが安いのです。

さらに光子をチップから映してアナログからデジタルへ変換するためのコンバーターを通さなければいけないCCDセンサーと違って、CMOSセンサーは全ての作業が同じチップ内で完了します。つまり、CMOSセンサーの方が作業が早く、その際に使うエネルギーも少なくなるのです。これらのセンサーは半導体と同じような方法で作られているので、半導体技術が向上するとCMOSセンサー技術も向上することになります。Cartrysse博士の話によりますと、より小さなトランジスターでより多くの回路を1ピクセルに積む事ができれば、よりノイズの少ないキレイな写真が撮れる事になります。光子のノイズのような物理的限界までせまることができるのです。

 

さて、メガピクセル。現在、画素数はかつてのデジタルカメラ社会ほどにもてはやされるものではなくなってきました。みんながみんな巨大広告のようなでっかい写真をプリントアウトするわけではありませんから。画素数の分野はもうすでに十分に大きく発展した今、技術の発展はセンサーに注目されています。より洗練されたセンサーを、より高性能なイメージプロセッサーを、よりシャープなガラスを。カメラ業界も毎年のように新作を発表し売っていかなければなりませんからねぇ。

GIZMODOにも登場した戦争写真家のTeru Kuwayamaさん曰く、「画素数がどんどんあがるのは、メモリーカードやハードドライブ業界の人間ならいいのかもしれないけど、自分には痛手だ。それに比べてISOの性能をあげるのはとっても画期的だ。今までの写真家達が撮れなかったものが撮れるようになる。画素数を半分にしててもいいから感度2倍にしたいね。」

いいイメージと大きいイメージは違います。そしてデジカメ業界はいいイメージの方向に今すすんでいます。来年にはISOがデジカメの指標になり全面に押し出されてくるのではないでしょうか。そうすると、一般ユーザーにとってもISOがわかりやすい指標になってくるのでしょう。ISOが高い=暗い所での撮影が可能、というだけではありません。より多くの光はどんな環境でもキーになりますよ。

matt buchanan(原文/そうこ)

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