アップルvsアマゾン、電子書籍戦争勃発!アマゾンが出版社にお仕置き

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1月29日の夕方、アマゾンから米国六大出版社のひとつ、マクミランの書籍が突然消滅していました。

ニューヨーク・タイムズによると、これはマクミランがアマゾンに対し、Kindleの書籍を15ドルに値上げするための交渉をしたことに対するアマゾンの処分らしいです。しかも、Kindleだけでなく、マクミランの全書籍について、Amazon.comでは表示されない状態です。不毛な争いにならなければいいんですが...。

この状況は、以前にUniversal MusicやNBC UniversalとiTunesの間で起こった争いを彷彿とさせます。当時コンテンツ提供者側は、iTunesの異常なシェアと、それに伴う発言力に対抗することに必死でした。現在起こりつつある電子書籍市場での争いも、「自社コンテンツに関してより多くの売上と支配力を持とうとするコンテンツ提供者」vs「端末と販売が一体化したサービスを展開し、圧倒的寡占状態にあるサービス事業者」という構造が瓜二つです。

UniversalとNBCに関しては、関係者はそれぞれ少しずつ妥協し、円満に引き下がりました。UniversalとNBCはより柔軟な価格設定ができるようになり、一方のiTunesはDRMフリーの音楽を配信可能になると同時に、TV番組コンテンツのラインアップを増やすことができたのです。

現在、出版社がアマゾンに対して感じている危機感には、ふたつのポイントがあります。ひとつは、アマゾンの電子書籍市場における圧倒的なシェアによって、アマゾンの発言力が強くなり、相対的に出版社側が弱くなってしまうということです。もうひとつは、Kindleの普及によって9.99ドルという書籍価格が確立されてしまうと、電子書籍に限らず書籍全体の価値が低下してしまうと予想されるということです。ちなみに米国では、ハードカバーのベストセラーは最高30ドルくらいします。

アマゾンvsマクミランのケースがアップルvs音楽事業者の対立と違う点は、マクミランがすでに、アマゾンの競合となるアップルのiBooksストアに電子書籍コンテンツを提供する契約をしていることです。

つまりマクミランにとっては、KindleがダメならiPad、という選択肢があるということです。しかも、iPadはかなり有力な対抗勢力です。Universal Musicの場合はそうした代替がなかったので、iTunes勢力を弱めるために対抗馬を盛り上げようと必死になりましたが、うまくいきませんでした。

ちなみに、この記事を書いたタイムズのブラッド・ストーン氏は今年1月20日、iPad発表前の段階で「出版社は、アップルがアマゾンの圧政から自分たちを救い出してくれると期待している。アップルは新端末で読むことができる電子書籍に関して、出版社が価格を自由につけてよいとしているためだ」とする記事を書いていたのですが、今回の出来事で、この報道がさらに裏付けられました。

マクミランがアマゾンに対して主張する15ドルという価格は、以下ふたつの情報と重ね合わせると、なかなか興味深いことになっています。ひとつは、スティーブ・ジョブズがウォルト・モスバーグ氏に対し、iBooksストアにかかる書籍の仕入れ価格はKindleと同じにすると語っていたこと、そしてウォールストリートジャーナルが先週伝えたところでは、15ドルというのはアップルの電子書籍に対する推奨価格であった、ということです。

アップルの推奨に従った「15ドル」という価格で出版社がアマゾンと交渉し、結果的にKindleの価格優位性を抑えることができれば、iBooksの立ち上げにとって有利になるのは間違いないですね。出版社の取り分は増え、iBooksはKindleと違ってフルカラーにも関わらず、本の値段はKindleと同じ...みんながハッピーですね、アマゾン以外は

でも、アマゾンが一部のベストセラーを9.99ドルで格安販売するときは、アマゾンの費用負担になっているそうです。なので、価格を15ドルにすれば、アマゾンの持ち出しが解消されるというメリットはあるかもしれません。とはいえ、もしアマゾンの書籍も15ドルになり、仕入れ価格もiBooksと同じで、それでも出版社がアマゾンから離れていくのだとしたら、1冊あたり数ドルの追加収入では間に合わない何かの要因があるということなんでしょうね。

なお、アマゾンのマクミランに対する処分は一時的なもので、1月31日19時1分、マクミランの書籍がアマゾン上に復活しているのが確認されています。

バトルが始まった電子書籍市場、まだまだいろいろな事件が起こりそうです。

[Bits]

matt buchanan(原文/miho)