愛人、ジョブズ...GoogleシュミットCEO破局のパターン

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Googleのエリック・シュミットCEOはキャンピングが大の苦手。

だからスティーブ・ジョブズと仲違いした時もバーニングマン会場には野宿せず、会場から45分離れたなんもない砂漠の沿道で公衆電話だったんです。隣に愛人ケイト・ボーナー(Kate Bohner)さんだけ置いて。

これは、ボーナーさんに近い友人から独占取材した「シュミット氏が親しい人たちと仲違いするまでの背景」です(以下敬称略)。

キャンプ嫌いの男が、あのネバダの荒野で1週間続くアナーキーなコミュニティ構築実験に参加するなんて「へーそんな一面もあったんだー」というか。チグハグな話ですよね。

参加と言っても、会期中シュミットはリノ市内のホテルから延々2時間半クルマを転がして「Burning Man 2007」に参加し、また2時間半かけて戻る毎日でした。そこまでして土の上で寝たくなかったんです。

というか、そこまでして通った。

この尋常じゃないバーニング・マン通いは、仲間と繋がっていたいという、氏の尋常じゃない渇望の現れでもありました。特にこの砂漠のイベントにはGoogle共同創設者セルゲイ・ブリンとラリー・ページも参加します。親しい仕事のパートナーと交流を深める良い機会だったんですね。

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シュミットのバーニングマンの写真はこちら(初公開ツーショットあり)

ブリンとページはヘリコプターで南・南西から現地入り。ふたりともフレンドリーには接してくれるのだけど、友だち...というわけではありません。会社の実権を共有するシュミットCEOより20歳近く年下のふたりは結局ネバダでも他の人たちと、本当の友だち付き合いの時間を過ごしてしまいました。

それも悲しいけど、この年のバーニングマンでエリックにとって一番忘れられない思い出となったのは、スティーブ・ジョブズと道端の電話で激しい口論の末、決別してしまったことです。

 それでApple CEOとの鞘当てが終わるわけもなく、アップルとグーグルの両社は競合関係にあるスマートフォンについて会議をひとしきり招集し、険悪なやり取りが少なくとも2008年まで続きました。

このApple-Googleの確執については先日、NYタイムズのBrad Stone記者とMiguel Helft記者が共同執筆した記事を元に湯木記者がメロドラマ風に書いた通りです。

シュミットは2009年アップル取締役を辞任しますが、その前から役員として関わるのは控えていました。アップルもグーグルフォンNexus Oneの製造元を提訴したのは2010年に入ってからですよね。

でも今から思うと2007年の皆既月食の日にネバダの砂漠でシュミットがジョブズと交わしたその電話が「終わりの始まり」だったのです。本当に信じられないような出来事で、ジョブズにガミガミ噛み付かれながらシュミットは顔に驚きを隠せなかったと言います。

Google CEOの側近から見たら、氏がジョブズの逆鱗を予想できなかったことの方が妙なわけですよ。だって「G-Phone」の噂なんてグーグルがモバイルソフトウェア製造元Android Inc.を2005年に買収してすぐ出た話だし、シュミットが2007年1月MacworldでジョブズのiPhone発表のステージに応援に駆けつける前からあった噂ですよ? iPhoneが2007年夏発売になる頃には巷でもGoogleスマートフォン発売のことがだいぶ騒がれていましたからね。

先のNYタイムズの記事には、グーグルが2005年にAndroidを買収したのも元はと言えばアップルと共通敵であるマイクロソフトのWindows Mobileが大きくなった場合に備えてのことだった...とあります。ならばアップル&グーグル愛憎物語にあるような「最初から盗むつもりだった」というのはナシで、途中からiPhoneが大きくなって番狂わせが生じてしまった、という話にもなりますけどね...。

2007年8月2日、ウォール・ストリート・ジャーナルは1面でGoogleが携帯電話試作機と新モバイルシステムの開発と携帯キャリア提携確保に向け何億ドルもの投資を行った、と伝えます。近い線いってますが、まだG-Phoneの確報には至ってません

そして運命の同年8月28日、まさにバーニングマン開幕の時にGoogleフォンの噂が後の製造元となるHTCからリーク。同時にGoogle新モバイルOSの詳細も明るみになり、Google特許出願を目ざとく調べた媒体はグーグル携帯開発計画を報じます。

当然ジョブズにだってもう何が進行中かぐらい察しがつきます。裏切りよったわい、と、おもむろに受話器をとったのでしょう。

シュミットの携帯電話が鳴ったのは、リノとブラックロック砂漠のバーニングマン会場の間を移動中でした。出るとジョブズ氏です。怒ってます。...と、電話が切れてしまいました。シグナル落ち。見渡す限りなんもない僻地で。

まあ、電話が切れたのはiPhoneの接続が悪くてじゃないですけどね。シュミットはもう随分前にオンスクリーンキーボードに耐えられなくてアップル端末は諦めてましたし、奥さんも試作機は使ってみたんですがキープしたいとは思わなかったようで、結局そのiPhoneはシュミットがボーナーさんにプレゼントしちゃってましたから...。

やっと見つけたコンビニでシュミットは公衆電話からジョブズに電話をかけ直しました。やはりこういう時の頼みは公衆電話です。

電話の向こうでApple CEOは怒り心頭です。おのれ、よくもスマートフォンなど計画してくれたわい、この二枚舌め...と、「怒鳴り」、「罵倒」したのでした。なんだかんだ言ったってもシュミットはアップル取締役の身、地図なんかのネットサービスをiPhoneに提供するパートナーの立場ですからね。

シュミットは罵られるままジッと耐えました。平静を欠いているのが傍目にも分かるほど動転し、その顔はみるみる「異様になった」(情報提供者)といいます。

「スティーブ、怒った怒った怒りまくってたよ」―後でシュミットは隣のボーナーさんにこう語ったそうです。「いやあ、すごい剣幕だった」

シュミットのジョブズに対する気持ちはとうの昔に尊敬の域を越えていました。認めてもらいたい、できることなら友人になりたいとさえ願うようになっていたのです。シュミットはグーグルのような大企業の経営合理化には詳しいのですが、ジョブズには全世界をより良く変えることができる人という印象がありますからね。

シュミットと共にグーグル三巨頭を成すブリンとページもその気持ちは一緒です。ふたりともジョブズの大ファンで、師と敬い、ロールモデル(お手本)と公言して憚らず、ジョブズのオフィスに足を運び、ブリンに至ってはアップルを共同創設したカリスマと一緒にパロアルト界隈をぷらぷら散歩していたシーンまで目撃されています(上記NYタイムズより)。

シュミット自身も負けちゃいません。こんなことになってからもジョブズに対する敬意の念は深く、Apple CEOとの確執を報じるNYタイムズの記事に寄せた声明でも、ジョブズを「現代の世界最高のCEO」と書いてます。

しかしそれでも両者の関係が温かかった時ですらシュミットは「相手の眼中にない」と感じていた節があります。ジョブズ邸のディナーにはどんなに頑張っても一度も呼ばれなかったと、情報提供者は語ってます。NYタイムズは「何度か一緒に食事した」と書いてましたが、あれはおそらく昼食かグループの会食かと。シュミットは自分が望むようなアテンションが得られないことで、いたく「傷ついた」(情報提供者)ようですよ。

ジョブズとの関係で悲劇的なのは、これがシュミットの他の大事な人間関係のパターンに酷似している点です。

例えばボーナーさんとの不倫。最初は両思いで始まって、結局は偽りという話になってしまいました。ボーナーさんが思い出をブログに切々と綴れば法的手段に訴えてでも削除要求する強硬ぶり

あれだってもっと友好的な終わり方があったと思うんですよ。ボーナーさんはアイビーリーグの名門大を出てフォーブスやCNBCで記者経験もある才媛。別の生まれ方をしてたらシュミット氏の伴侶になっておかしくない人です。-- (奥さんには申し訳ないけど)とてもただの情欲で付き合ったなんて思えないんですよね...。ボーナーさんはシュミットの弁護士が一時閉鎖した自伝ブログと回顧録の仕事を数週間後に再開しましたよ。

そして気になるのが、ブリンとの関係です。ブリンはページほどにはシュミットと親しくなく、時には冷たく接することもあるんだそうで、例えば2007年春バハマで挙げた結婚式にはシュミットを招待しなかったのです。この冷遇もCEOにはグッサリ来た、といいます。

ブリンとシュミットの関係が次どうなるかは分かりませんが、歴史は繰り返す...のだとしたら爆発に備えた方が良いのかも...。杞憂でしょうか。

こんな物別れはもう終わりにしてもらいたいものです。ゴシップ屋の言うことなんてウンザリだとは思うけど、シュミットCEOを見てると他人事に思えないっていうか、まるで自分のことのように胸が痛んじゃうんですよね。

グーグルのボスはなるほど、プライバシーについても「人に知られちゃまずいことはすべきじゃない」と発言して、なんか偽善者だなーって思うし、ユーザーがあれこれ心配しても傲慢な態度なところもあるけども、実は孤独で本当の友だちを心の底から求めているのかも。「本当の友だちがいるとは思えない」と情報提供者は話してました。

空っぽの孤独―これは僕らの多くが今感じてることじゃないでしょうか。ソーシャルネットワークとブロードバンドのグリッド(送電系統)、ブログ、マイクロブログ、メール、IMの網にがんじがらめに囚われてメッセージをあんな沢山送っても人間関係は数えるほどしかない、そんな今の僕らの心境そのものです。

Ryan Tate(原文/satomi)