Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 1

いつか我が家でも発電するようになるのかな?

このたび発表されたBloom Boxとは、Bloom Energyによる最新の燃料電池技術です。クリーンで低コスト、自宅にも設置可能なエネルギー問題への解決策とされ、ドキュメンタリー番組の大御所「60 Minutes」でも取り上げられました。どんなものなんでしょうか?

この「箱」の心臓部は燃料電池です。Bloom EnergyのCEOで元NASAの科学者、K.R. スリダーさんによると、「新しい種類の燃料電池」だそうです。他の燃焼エンジンよりクリーンではありますが、他の燃料電池のように水素だけを使うのではなく、化石燃料やバイオ燃料も必要です。が、Bloom Energyは排出物質を抑える技術を開発しています。まず大企業向けに実用化し、次に家庭用を手がける予定です。

続きで詳細を解説します!

 

燃料電池の仕組み

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 2
燃料電池とは、バッテリーと同様の化学電池、つまり、化学反応から電気を取り出す仕組みです。ふたつの電極(陽極と陰極)に挟まれて、イオンを伝導する電解質があります。燃料は陽極側に向けて流れていき、酸化体は逆に陰極に向けて流れています。

基本的には、燃料と酸化体が同じ部屋の中で出会って、お互いににらみあうような感じの反応を起こすわけです。目と目が火花を散らすというイメージそのままに、実際、この反応で電子が発生し、それが燃料電池の回路に流れ込み、電気を発生させるという仕掛けです。

他の分子反応と同様に、原子の組み換えが起こることで多少の水や二酸化炭素といった排出物があります。そのため、他の手段よりクリーンではありますが、排出物は必ず発生します。

厳密にするためにバッテリーとの違いを言うと、燃料電池は発電所のようなものなのです。いったん燃料をエネルギーに変えてしまうと、燃料電池はそのエネルギーを外に送り出してしまいます。そのため、燃料電池には物理的に燃料素材を貯めておく仕組みと、生産した電気を捕捉するバッテリーのような手段が必要になります。

燃料電池は1830年代に発明されたため、いくつかの種類があります。一般に、どのような電解質を使っているかによって分類されていますが、燃料や酸化体の種類で分類されることもあります。おそらく、「水素燃料電池」がもっともよく知られていて、これは自動車や小さな電子機器に使われています。これらは実際は「陽子交換膜(PEM)燃料電池」と言われるもので、水素を燃料に、酸素を酸化体に使っています。上の図は実はPEM燃料電池の図になります。

固体酸化物形燃料電池

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 3
Bloom EnergyのEnergy Serverは、固体酸化物形燃料電池から派生したものといえます。固体酸化物形燃料電池には2種類あり、上にあるようなチューブ状のものと、下の、Bloom Energyがしているような平面状のものです。平面状にすることで、箱に積み上げることができるのです。

固体酸化物形燃料電池は、全て固体の材料から作られており、主要なコンポーネントは全て下の画像にあるセラミックのタイルようなものでできています。Bloom Energyでは、この燃料電池はこのタイルに「砂」を焼き込んでいて、その「砂」がまさに固体酸化物だそうです。実際この「砂」がミソのようですが、他にも、セラミックのタイルを覆う黒と緑の「インク」にも秘密があるようです。Bloom Energyでは、このプロセスのアニメーションを作成しています。

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 4

固体酸化物形燃料電池と他の燃料電池の大きな違いは、素材の性質上、非常に高温に耐えられるということです。米エネルギー省によると摂氏982度まで可能だそうです。また、セラミックが一定の温度になるまでは活性化しないため、その程度の温度が必要でもあり、上に書いたように化学反応が起きないのです。

ただ、高温になると壊れやすいため、メンテナンスコストが非常に高くなります。カリフォルニア・アーヴィン大学国立燃料電池研究センターのスコット・サミュエルセン氏は「技術的なゴールは使用可能時間を99.99%にすることです」と述べています。Bloom Energyのグーグルにおける実験では、使用可能時間が98%だったそうです。

よりよく知られている燃料電池、たとえば「メタノール燃料電池」はすでにノートパソコンを駆動できていますが、もっと低い動作温度で使えます。東芝では動作温度が摂氏48度~93度の燃料電池技術を持っています。

Bloom Energyの燃料電池は高温すぎて、明らかにノートパソコンなんかに使うには向いていませんが、動作温度が高温であることは旧来の燃料電池技術に対して優位な点があります。Bloom Energyのマーケティングと製品担当バイス・プレジデント、ストゥ・アーロンさんによると、それは「燃料に柔軟性がある」ということです。つまり、バイオガスや、プロパンのような化石燃料を使えるということです。今のところデモのみですが、バイオガスと天然ガスを併用することも可能です。低温の燃料電池では、水素を精製したり、化学反応から取り出すなどしてより純粋な状態のものを必要とするため、こうしたことは難しいのです。

他の固体酸化物形燃料電池ではいわゆるコジェネレーションのように、排熱も捕捉し、発電のために再利用します。が、Bloom EnergyのEnergy Serverでは電池の中で熱を再利用します。これは、化学反応によって発生する熱は、次の化学反応のために必要な熱とほぼ同じだからです。現状のEnergy Serverの熱効率50%以上で、一般的な太陽光発電10~15%を大きく上回ります。太陽光発電でも、世界記録としてはデラウェア大学中心に行った研究では42.8%という記録がありますが、さらにそれ以上ということになります。

このエネルギーは、排出物ゼロなわけではありません。天然ガスやバイオガスを変換する際に、小規模ですが二酸化炭素を発生します。ただし同じ燃料が普通に燃焼された場合と比べれば、排出物は少なくなります。燃料には天然ガスかバイオガスかを選べますが、アーロンさんいわく「コスト最適化をとるか、二酸化炭素削減をとるかのトレードオフがあるので、企業の優先順位で決められます」とのことです。

Bloom Energy Server

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 5

現在、Bloom社が販売している「箱」は100キロワット時間のEnergy Serverのみです。動画がこちらで見られます。この中には数千の固体酸化物形燃料電池が収まっており、ひとつひとつが電球をつけるくらいの発電が可能です。電池はスタック状に並べられており、それぞれのスタックがモジュールになっています。燃料の入り口も同様です。

「箱」はグーグルコカ・コーラなどの大企業のみに販売されており、価格は70万~80万ドルとなっています。目標はこれを3000ドルにまで下げることで、それくらいであれば家庭にも手が届くと思われます。まあ、3000ドルでもまだ高いように思われますが、アーロンさんによると「3~5年で元が取れる」ということです。カリフォルニア州での電気料金はキロワット時間あたり13~14セントですが、この「箱」を使うことで8~9セントに下げることができるためです。ちなみに、eBayの場合は10万ドルの電気コスト削減になるらしいです。

Giz Explains : グーグルも導入!Bloom Energy社の奇跡の「箱」 6

ただ、コストのことを考えると、懐疑的になります。燃料電池はちゃんとした技術で、イカサマ技術ではないですが、わからないのは、Bloom Energyには本当にコストを下げるために何か秘策があるのかどうか、または、今後その可能性があるのかということです。60 MinutesでコメントしたGreen Tech Mediaのマイケル・カネロスさんいわく、「10年後に我々の家庭に燃料電池が広まる可能性は20%くらいだと思いますが、そのとき、その燃料電池には『GE』のロゴが入っているでしょう」だそうです。

matt buchanan(原文/miho)