iPadは絵巻物に最適、そのココロは?

iPadは絵巻物に最適、そのココロは? 1

書籍デザインに造詣の深いデザイナーのクレイグ・モッドさんが、iPad電子書籍、そして書籍全体のあるべき姿について、考えてます。

彼によると、iPadは電子化された文書を読むうえで、KindleiPhoneより優れているというだけでなく、独自の可能性(たとえば、絵巻物閲覧)があるとか。

そのわけは、続きでご説明します。

 

無定形コンテンツと定形コンテンツ

彼の定義によれば、世の出版物は「無定形コンテンツ(Formless Content)」「定形コンテンツ(Definite Content)」のふたつに大別されます。

「無定形コンテンツ」とは、多くの小説や新聞記事がそうであるように、テキストのみで表現されるコンテンツです。ハードカバーでも文庫でもWebでも、また、レイアウトが変わっても、中身の意味そのものは変化しない性質のものです。

それに対し「定形コンテンツ」とは、イラストや写真、グラフなど、テキスト以外の要素も重要なコンテンツであり、それらのデザインレイアウトによって意味が変わったりしてしまうような性質のものです。

「定形コンテンツ」の典型例に、マーク・ダニエルヴスキーの『Only Revolution』があります。この作品では、ふたつのストーリーが本の表紙側と裏表紙側から始まっていて、各ストーリーは上下逆さまに印刷されています。読者は8ページごとに本を逆さまにひっくり返し、逆側のストーリーを読むことを推奨されています。他にも、各ページの語数が一定だとか、特定の文字の色だけ違うとか、多くの仕掛けが仕込まれています。

無定形コンテンツはデジタルへ

コンテンツを電子化すれば、紙や印刷や在庫など、様々なコストを軽減できるメリットがあります。検索機能ブックマーク機能なども、紙よりはるかに便利です。

とはいえPCで快適な読書をすることは、目への負担や、読書とPC利用の際の姿勢の違いといった点で非現実的でした。が、KindleiPhoneの登場により、紙と同じように自分の手の中に「書物」を持ち、紙と同じような親密さを持って「読書」をすることが可能になりました。

「無定形コンテンツ」であれば、テキストそのものを読めれば意味は同じなので、どんどん電子化していくのが合理的、とモッドさんは言います。

が、「定形コンテンツ」に関しては、KindleやiPhoneのディスプレイサイズと表現力では、コンテンツの意味や質を変えずに再現し切ることは難しい、とモッドさんは考えました。

つまりざっくり言うと、「無定形コンテンツ」は電子化しちゃってよく、「定形コンテンツ」は紙の本にしておくべき、というのが、モッドさんの考えでした。

iPadが発表されるまでは。

iPadだからできること

iPadであれば「定形コンテンツ」も再現できるのでは、というのがモッドさんの主張です。iPadには十分なディスプレイサイズがあり、カラー表示ももちろんできます。そのため従来の書籍、それも「定形コンテンツ」に属するような、デザインを変えたくない書籍でも、そっくり再現できるのでは?と考えているのです。

それは確かにKindleやiPhoneにはできないことです。また、PCでは表現だけは可能でも、読書と同様の(そして、iPadが実現可能だとしている)快適さはないでしょう。

ただ、全ての「定形コンテンツ」が電子化可能なわけではありません。装丁の素材に意味のある書籍などはそもそも無理でしょう。が、紙のページの上に印刷されて収まっているコンテンツならば、それをiPad上で1ページずつ再現していくことは可能なはずです。

でも、iPadでわざわざ1ページずつめくっていく必要はない、それがiPadの特徴だ、とモッドさんは言います。たとえば日本の絵巻物のようなコンテンツは、もともとページに区切られていないので、「無理やりページ割りの書籍にするよりさらに原形に近い読み方が、iPadなら可能」と示唆しています。

そして、こうしたiPadの特徴を生かしたコンテンツを作っていくことが、コンテンツの作り手側の楽しみでもある、としています。

いよいよ発売時期も発表されたiPad。こんな期待に、こたえてくれるのでしょうか?

matt buchanan(原文/miho)