HPのPalm買収で得する人、損する人

HPのPalm買収で得する人、損する人 1

ヒューレット・パッカード(HP)がパーム(Palm)買収を発表しましたね。

HPのベージュ色に染まっちゃったら元も子もないですけど、HPも「Palm WebOSを盛り立てていく」と言ってることだし、これはGoogleとAppleに多くの面で勝る手堅いスマートフォンをお探しのみなさまにはグッドニュースです。

何が起こったの?

死んだはずのPalmが生き返るのは今回が初めてではありません。Palm PDAがダメになってからはTreoとHandspringで一瞬息を吹き返しましたよね。だいぶ登場が遅かったけど、WebOSで1日1日糊口は凌いでこれました。どうもヤヴァいことになってるという噂が何週間も続き、ようやく水曜、HPから「12億ドルで買収」の正式発表が出ました。

買収完了は米時間7月31日、HPの第3四半期末日になるそうです。あわや経営陣交代かという噂も流れたPalmジョン・ルービンシュタイン(Jon Rubinstein)CEOも残留となります。どういう権限かはまだ分からないですけどね。

先ごろ流れた買収の噂ではHTCとLenovoが有力視されてたし、ルービンシュタインは独立自営でやっていく宣言をした直後なので、いやーまさかのニュースでしたね!

年初に株が下げ止まらなかったPalmにとってはまさに救命ボート。HPにとっては一瞬にしてスマートフォンの大型プレーヤーに変貌を遂げたことになります。それに値段もバーゲンプライスです。買収レートは1株$5.70で、Palm株の前日終値にプレミアムを上乗せした額ではありますが、ちょっと前まではこの2倍してましたからね。

HPが買収するのはPalmのハードウェアだけじゃありません。本当の至宝はwebOS。これはHP上級VPトッド・ブラッドリー(Todd Bradley)さんが言ってるように携帯だけじゃなく数々の端末に応用が可能です。やはり一番の魅力は、タブレットでしょう。

「Windows Phone 7やAndroidでもいいんじゃない?」と疑問に思う向きもあるでしょう。Palmの webOSはプラットフォームとしては強くても、デベロッパーのコミュニティは弱く、アプリはわずか2000本。Android MarketやiPhone App Storeよりケタ違いに少ないですからね。それに対するHPの回答は「ヘッジング(分散)」。つまり他のプラットフォームとも今まで通り連携を続けながら、HP持ち前のスケールで開発者の関心を引き寄せ、webOSのエコシステム拡大を図る、という二股戦略でやってくみたいですよ。

ワーストケース・シナリオ

―最悪どうなる?


 買収はどれもそうだけど、一番の難しさは2つのブランドパーソナリティーをどう調整していくか、という部分ですね。

売れた・売れないに関係なく、 Palmは常にイノベーティブな製品を出してきました。Pre発売はまさに新風でした。一方HPはベージュの平筆でべったり塗り潰す...みたいなイメージがなんとなくあります。とんがった製品でも例えばラップトップ「Envy」のように模倣と言われてしまったり...。コンパック買収の産物「iPAQ」も、時代の波に流されてしまいましたよね。

果たしてPalmはHPの創造性に火をつけることができるのか? それともHPが創意工夫(Palmは創意工夫があったから買収対象となるほどの会社になったわけだけど)の気運を抑えつけてしまうのか? 

ベストケース・シナリオ

―うまく行けばどうなる?


HPにはPalmのソフトとハードの良さを最大限レバレッジできるリソースがあります。スマートフォンの他にも。

Palmの問題は需要に追いつけないことじゃなく、そもそも需要を生むことができないことなのですが、これはもはやHPの幅広いリーチと潤沢なマーケティング予算をもってすれば問題ではありません。HPはこれまでTouchSmartのインターフェイスに相当な開発予算を投じてきました。優れたスキンだし、webOSがあればさらに良さが引き出せるんじゃ? webOSタブレット、悪くないですよね。

起こり得るシナリオ

webOS対応のHP製品が出始める時期について、HPは何も語っていません。買収手続き完了まで具体的な話はないものと考えた方が良さそうですね。でも、たぶんこういうことができそうだな、こういう風にするだろう、というのはかなりハッキリしてます。

•携帯電話--iPAQはこの際、置いといて...。Palmのような認知ブランドをこれだけのお金を投じて買ったからには、iPAQみたいな泡沫ブランドのためにPalm潰すとは考えにくいですからね。HP携帯は前から、これと言って特徴のないものですけど、Palm買収によってプレメードの名の通った携帯部門が社内に加わることに。

実際の携帯はどんなものになるのか? ―webOS携帯は次世代のが出るでしょう。昨日までは「どうなるかな?」とおぼつかなかったけど、今日それも変わりました、その公算は高いです。Palmが社運を賭けたPreとPixiは初代の製品で、OSも初代のOSが搭載になってます。HPはリソースの懐が大きいので、OSも今の時代に即したハードで翼を広げられるものに改善していくだけの時間はたっぷり与えてもらえるんじゃ? 

ちょっと想像してみてくださいよ。WVGA解像度で、Snapdragonチップ搭載の、めちゃ反応のいいインターフェイスのwebOS携帯... ここで話してるのはそういうものの話です。Pre Plusなんて忘れちゃってOK。--Pre IIのカウントダウンが始まりました。

ちょいとややこしいのが、HPとマイクロソフトの関係ですね。Windows Phone 7の正式パートナーなのでHPはこれからもWindows Phone 7端末の製造を継続していく約束になってます。社内にモバイルOS抱えちゃった今となっては他社のプラットフォームなんて興味半減...とどうしても想像しちゃうんですけどね...。

• コンピュータ--この買収では過去数十年の間に貯め込んだ特許も買うことになります。その多くはタッチのインターフェイス関連の特許。HPはTouchSmartシリーズでWindowsマシン向けのタッチインターフェイスをものすごく積極的に開発してきました。Palmのモバイルの技をそのソフトウェアに組み込むのは容易にできるんじゃないでしょうか。しかしまあ、HPの幅広いコンピュータのラインナップはこれからも変わらないでしょう。

• タブレット--HPのタブレット戦略はちょっと危険な方向に向かってます。待望のHP SlateはWindows 7搭載機。他社がモバイルOS採用に動いている時に、デスクトップOS、なのです。HPはこれまでAndroidにはそんな興味示していませんし、iPadに搭載になってるiPhone OSのライバルのGoogle OSは無視しちゃってるので、どうしてもwebOSタブレット! と期待が高まってしまいます。

いやホント考えてみてくださいよ。WebOSはAndroidよりインターフェイスは直感的だし、通知システムは他のどのOSよりも優れてるし、ソーシャルネットワーク機能も驚くほどいいし、アプリもまあ必要なだけ揃ってます。それに...最初に出るAndroidタブレットの多くを動かしているモバイル専用ハードウェアとも互換性があるのです。これは--これが--素晴らしいのです。

得する人、損する人

長期的にどうなるかは時間をかけて追っていくとして、今のところ、この買収のシナリオで一番得する人、損する人はかなりハッキリ出てます

まず、損する人。これは当然スマートフォンOSを抱える他社すべて! でも特に打撃を感じているのはマイクロソフトでしょうね。HPは今後もひょっとしてWindows Phone 7携帯の製造を続けていくのかもしれませんが、午後ひとつまたいでHPは主要パートナーから手強いライバルに一変してしまいました...。

得する人。これはPalm。念願かなってホワイトホースのお出ましです。でも本当に得するのはみなさん消費者かもですよ。ヘルシーで、対応も幅広いwebOS復活でまた一段と競争が激化しますね。

Brian Barrett and John Herrman(原文/satomi)