ゲノムを解析したら、どんな病気になりそうか知ってしまった...

ゲノムを解析したら、どんな病気になりそうか知ってしまった... 1

医療関係者からの助言により、この記事は署名なしにしておきます。この記事では、僕個人が今後経験する可能性のある病気について、僕の遺伝子に基づいた内容を書いているからです。

2009年に米国で施行された遺伝子情報差別禁止法では、遺伝子情報に基づいて健康保険への加入や雇用を拒否することから個人を保護しています。が、健康保険会社は、所得と遺伝子情報を並べて検討することができます。また、生命保険、身体障害保険、長期介護保険に入れるのかどうか、もっと言えば僕の家族の運命さえも、どうなるかわかりません。そんなわけで、名前は非公開にしておきます。

特に僕の場合、長期介護保険に加入できなくなるのではないか気にかかっています。僕の遺伝子テスト結果では、(アルツハイマーなど)変性疾患にかかる可能性があると出ているんです。

自分の名前以外は、今回わかったことをなるべく詳細に書きたいと思います。自分をいつか死に追いやるかもしれない病気についてもです。その病気で死ぬ前に、病気による危険行動や、体がうまく動かないための事故で死んでしまう可能性もあるのですが...。

続きで、遺伝子を調べた方法や、わかったことをお伝えしていきます。

遺伝子テスト

何週間か前、僕は自分の唾液のサンプルをふたつの会社に送りました。ひとつは23andMeという会社、もうひとつはNavigenicsという会社でした。名前は違いますが、それぞれの会社は同じようなことをしてくれます。特殊な遺伝子のみをトラックするチップを使って、両社はゲノムの解析をしてくれるのです。

ゲノム全部をマッピングしようとすると6ケタドル(数千万円)レベルになってしまいますが、特殊な遺伝子のみ検知するのであれば、23andMeは420ドル(約3.7万円)、Navigenicsは1000ドル(約9万円)で可能です。

両社では、サイトにログインできるよう設定してくれて、自分でチェックできる手軽なUIもあります。病気になる可能性を計算してくれて、統計的なデータと比較してくれます。テスト結果について、研究による裏付けも表示してくれます。

結果は、「あなたは糖尿病になるでしょう」みたいな簡単なものではありません。「あなたはタイプ2の糖尿病にかかるリスクが高いと考えられます。このリスクについて上位30パーセントの集団に入ります。全体のリスクは2パーセントです。このデータはハーバードメディカルのこの論文に基づいています。」といった具合です。

言い換えれば、パーセンテージの上にパーセンテージが乗っかり、研究に基づいたいろんなレベルの「真実」が載っているので、わかりやすいものではないです。

23andMeの結果

だいたいサービス内容はおわかりいただけたかと思いますので、次に結果をお見せします。

これが僕です。23andMeによるものです。

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細かい内容は、この絵でわからなくて大丈夫です。ポイントをかいつまんで説明します。

上にあるのは、23andMeによる「臨床レポート」です。このために膨大な研究が費やされています。ここではいくつかの懸念が示されています。僕には、消化管の疾患であるクローン病の「高いリスク」があります。といっても、この病気になる可能性は1.5パーセントしかないのですが、関連する12のマーカー(遺伝子)の組み合わせによると、僕はヨーロッパ成人平均の3倍のリスクがあるんだそうです。

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タイプ1の糖尿病についても同じような数値が出て、23andMeの臨床レポートで指摘されたのはそのふたつの病気だけでした。全体として、僕が人生で何らかの疾患にかかるリスクは1.3パーセントで、通常はこれは1パーセントだそうです。

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次に23andMeは「リサーチレポート」をくれます。これは、何らかの理由で彼らが信頼性が低いと考える根拠に基づくものです。このレポートでは、僕はもっといろいろなリスクが高くなっています。潰瘍性大腸炎、高血圧、ぜんそく、といったもので、確かに避けたい病気ですが、数値では恐れるほどでもないように見えました。

ヘロイン中毒のリスクも高いらしいです。おお。僕は基本的にその手のものは使ってませんが、中毒になりそうらしいので、今後もパーティとかクラブで気軽にやっちゃおうぜ、みたいな状況もパスしていこうと思います。スウェーデン人309人のOPRM1遺伝子型(脳のモルヒネへの反応に影響する)を調べた研究に基づいて判断すると、僕は一般よりも2.9倍ヘロイン中毒になりやすいそうなんです。

ここまではまあ、問題ないです。23andMeは、僕がつねづね思ってきたように、僕はすごく健康だと言ってくれました。僕の年齢で発生しがちなクローン病の症状も出てないです。きっと僕はラッキーな99パーセントのひとりなのでしょう。タイプ1の糖尿病、ぜんそく、高血圧、潰瘍性大腸炎に関しても、今のところ何の兆候もありません。ヘロインは?まあ、せいぜいポピーシードのベーグルを食べるくらいです。

でも、あるリスクが呪いのように書かれていました。アルコール依存症です。

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僕は、赤くハイライトされたこの警告を読みながら、前日に1杯で終わらず2,3杯飲んでしまったことを思い出しました。

The Journal of the American Medical Associationではアルコール中毒を次のように定義しています。

原始的・慢性的な病気で、遺伝的、社会心理的、環境的要因により進行・発生が影響される。この病気はしばしば進行性で致命的なものになる。継続的か周期的かで分類することができる。飲酒をコントロールできない、飲酒に没頭する、トラブルになるにも関わらずアルコールを使用する、ゆがんだ思考、特に否認といった症状があらわれる。

僕の行動は上の定義に当てはまってるでしょうか?多分基準には満たないとは思うのですが。

お酒が僕の人生で人間関係を壊したことはありませんが、飲んだときの発言で友情を傷つけたことは確かにあります。「トラブルになる」というあたりが当てはまりそうです。あと、対面だと僕はちょっと冷たい感じなので、お酒が潤滑油になります。それに仕事の後はやっぱり疲れるので、精神安定剤的に飲むということもあります。どちらも、「没頭」というあたりにひっかかりそうな気がします。

依存症かどうかはともかく、僕は頻繁に飲むし、軽い飲み以上にお酒に頼っているのも確かです。23andMeの結果を見る前から、それは自覚していたし、問題ないと思っていました。

でも、そういう遺伝子の特徴を目の当たりにしたことで、それまで暇つぶし程度に思っていたこのテストが、子供の遊びではないと感じられました。でも、飲むのを控えるとかはしませんでした。

その後考えたあげく、再度レポートを掘り下げて読んでみて、実際に問題視された遺伝子型をチェックしてみることにしました。すると23andMeの結果では、僕のリスクは普通だったことがわかったのです。

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やった!僕は23andMeが出したデータをくまなく調べていましたが、レポートに書かれていた結果に間違いがあることに気付かなかったのです。でも、僕は大学教育を受けていて、科学指向で、(この時点になると)遺伝子テスト結果を読むのにも慣れてきています。平均値と比べると僕は問題なかったのです。(後日、この記事を読んだ23andMeがコンタクトしてきて、アルコール中毒に関しての間違いを認め、修正を申し出てきました。)

この発見でうれしいのは、どんなにたくさん飲もうとも、ゲノム的には僕はアルコール依存症ではないってことです。

23andMeに関してはここまでです。

Navigenicsの結果

そして次は、Navigenicsの結果です。

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Navigenicsでは、僕の大きなリスクを素のパーセンテージで出してくれます。23andMeとはちょっと違うところで、よりクリアです。次に23andMeとの共通点に気付かれるでしょうか?クローン病です。これはリスク倍増ということでしょうか?別の会社が同じ結果を出すなんて!

いえ、これは単に同じテストをしてるだけです。Navigenicsは同じ研究を出してきて、全体的なリスクも同じ1パーセントという結果でした。

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次に、乳糖不耐性。95パーセント。実は23andMeもこれを指摘していました。この結果は衝撃的でした。というのは、僕は牛よりも牛乳とチーズをたくさん飲み食いしているからです。その結果僕は家族の他の人よりも6インチ(約15cm)も背が高いので、まるで牛乳が成長を促進するという歩く広告塔みたいなものなんです。豆乳なんかだめです。口の片方の端に牛の乳首をくわえながら、反対の端にチーズをはさんで歩きたいくらい牛乳好きなんです。

そんな僕が乳糖不耐性なはずはないので、「95パーセント」の信ぴょう性が問題になります。「95パーセント」を文字通り受け取ることは基本的になく、85パーセントを超えたらほとんど100パーセントと普通は受け取るんじゃないでしょうか。15パーセント以下なら0パーセントと思うのも同様です。

もちろん、僕は本当は乳糖不耐性かもしれないし、今みたいに乳製品をたくさん食べないとか、プロバイオティックヨーグルトをやめるとかしたら、これからそうなるかもしれません。もしかしたら、僕が母乳を飲んで育ったので変わったのかもしれません。科学は僕らが思うほど単純じゃないかもしれません。もしかしたら僕には一部アジア系の血が入っている可能性もあります。僕の遺伝子型はヨーロッパ系の乳糖不耐性を示しているのですが、同じ遺伝子型を持っていてもアジア人なら大丈夫らしいので。しかも23andMeでは僕の母系の祖先が中央アジアの人だったとしています。

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と、あれこれ仮説を考えてみたところで、一番恐ろしい結果を見るには何の役にも立ちませんでした。

一番恐ろしい結果、それはアルツハイマー、または、そうなるかもしれない可能性、でした。

アルツハイマーと関連するApoEマーカーは3つ発見されています。通常、みんなApoEマーカーをふたつ持っています(ひとつは母親、ひとつは父親から)。僕はApoE3とApoE4をひとつずつ持っています。Navigenicsではこの結果を出してくれますが23andMeでは出していません。

ApoE3は大したことではありません。ほとんどの人のApoEはApoE2か3、または4を持っています。ApoE2なら、アルツハイマーのリスクは低いのですが、僕はApoE2を持っていません。ApoE3は普通のリスクです。でも、ApoE3とApoE4を持っている場合、リスクは高まります。

ApoE3とApoE4を持っていると、人生のどこかでアルツハイマーにかかるリスクが20パーセントになります。一般の人と比べると、リスクが高い上位26パーセントに入ります。これは、このレポートのベースになっている研究結果に基づくもので、「ヨーロッパ系のアメリカ人60人」のデータを使っています。

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見通しはもっと悪いんじゃないか、とこの手のことにちょっと詳しい妻が教えてくれました。僕らは週末のディナーをゆっくりと食べ、ワインをたくさん飲んで楽しく過ごしているところでした。まるで家具とかカーペットのコマーシャルに出てくるような、素敵でありふれた家庭の夕食シーンでした。でも、どこからともなく、空気が変わっていったのです。

「このテストをするって言ったとき、ApoE4のテストもするなんて言ってなかったじゃない」と妻は言いました。「気づいてないのね。ApoE3とApoE4を持っているっていうのは、悪い結果なの。本当に。これから生き方を変えましょうか、ってくらい悪いのよ。」

このテストを通じて学んだことで、もっとも悲惨だったのは、僕があまりに子供のようにナイーヴな気持ちで遺伝子テストをしてしまったんだ、ということでした。

皮肉なことに、僕の最大のリスクはアルツハイマーでなく、心臓病、肥満、変形性関節症でした。Navigenicsはこれを出した分、23andMeより賢かったみたいです。でもこれは、医師なら誰でも、テストなしで統計から見て指摘してくるようなことです。ふたつのリスクマーカーによると、僕は平均より心臓発作のリスクは10パーセント低いのですが、人生のいつかそれが起こる可能性は32パーセントで、そのときに死ぬ可能性もあるわけです。

違う言い方をすると、遺伝子という身体の青写真に隠された秘密を恐れつつ、僕らはもう何を恐れるべきかわかっているのです。

心臓病は死亡原因の第1位です。伝染病が2番目、がんが3番目です(2008年、WHOの調査)。

でも、こういうことを知ったところで、自分の身体がどうなっちゃうのか心配で気が気がないというときにはあまり意味がありません。

考察とまとめ

誰かを責めようというわけではありませんが、23andMeでは遺伝学を一種のソーシャルな、お洒落で楽しい、みんなで共有すべき何かとして売り込んでいます。いっそ、知り合いを集めて唾液サンプルを集めるパーティなんかを流行らせるんじゃないかと思ってしまいます。その結果、ショックを受ける人がいるかもしれないのに...。

遺伝子情報を他人に教えたら保険適用範囲にダメージが出かねないのに、周りの人と結果を共有しようと勧められるのです。遺伝子情報をマーケティングツールとして使われるなんて、遠慮したいです。

23andMeもNavigenicsも、限定的なものとはいえ、人生最悪のニュースをもたらしてしまう力があるのです。医療知識や、多少の統計やデータを読む力のない人たちは、彼らが出してくる情報を読み解くスキルがないのです。今みたいにカジュアルな、ソーシャルなやり方でレポートをもらっても、本来の目的に合わないし、彼らの作ったイメージと違って、楽しくもないし生産的でもないと思います。

僕は古い考えかもしれません。でも、今自分自身が経験しているような、自分の病気の可能性を知ってしまうショックは、楽しい家庭の中のコンピュータからいきなり与えられるより、居心地が悪くても病院のような場所で受ける方が良いと思います。

全体に、僕は自分のDNAは強いんだなという印象を持ちましたが、それは比較的少ないデータに基づく比較的少ない研究が根拠になっています。ゲノムについてわかっていることはまだとても少ないです。今後5年から10年後には、こうしたサービスはもっと安価に、詳細に、できればもっとわかりやすくなっていることでしょう。

そう考えると、自分は結局、将来の可能性を多少でも垣間見ることができてラッキーだったと思います。20年前なら完全にSFの世界だったことが実現できているのですから。もし、DNAの情報をどうしても知りたいという方がいたら、価格は高くなりますが1000ドルのNavigenicsの方を、420ドルの23andMeよりもお勧めします。Navigenicsの方がインターフェースが良いと思うし、23andMeみたいに遺伝子情報を周りに教えろと言ってこないからです。

で、僕ら夫婦はどうしたか。妻は冷静かつ客観的でした。アルツハイマーの話になるまでは...。そして僕は、つきあい出してから初めて、男性である自分が彼女よりも弱い存在として生活している姿を想像しました。でも、いつから脳がむしばまれていくのか、僕らはなんとか考えないようにしようとしました。

とはいえ、笑い飛ばすことはできず、僕は肩をすくめるしかありませんでした。

僕はApoEマーカーの攻撃を、結局避けきれませんでした。ApoEであろうがなんだろうが、遺伝子について知ることで、病気についての心配という痛みを今後持ち続けることになってしまいました。最新の予防法の研究について耳をそばだて、「20パーセント」という可能性が0パーセントに減っていくことを願いながら。

Image of DNA on lotto ticket by DNA11

匿名記事(原文/miho)