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僕が映画を『盗る』理由...たとえそれが自分の作品であっても。

2010.05.20 10:00 [3] [0]

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今回は、イギリスのコメディアンにして俳優、声優(ダース・モールの吹き替え)、映画監督、プロデューサー、作家でもあるPeter Serafinowicz氏がゲスト・エディターとして書いてくれました。

彼は自分が作ったり、出演したりしている作品であっても、Torrentサイトからダウンロードしたりしていると公言しています。メディア側にいる人としてどういうつもりなんでしょうか?

続きで、どうぞ!
 

何億人という他の方と同様、僕も違法ダウンロードをしています。僕は俳優で、作家、映画監督でもあり、DVDや映画や本からの収入で生活しています。なので、この状況は論理的にも心理的にも法的にもすごく矛盾していることになります。

産業として見ると物理メディアは有利です。物理メディアであること自体がコピー防止になっているからです。コピーガードされていなくても、一般の人にとって、CDやDVDなどの物理メディアをコピーするのは非現実的なくらいハードルの高いことです。
でも、物理メディアは消えつつあります。単にもう必要なくなってきているからです。VHSのコレクションを捨て去ったように、僕はDVDも捨ててしまおうかと考えています。Blu-rayディスクだって、同じことです。

ネット接続は高速化、ストレージは大容量化すると同時に安価にもなり、一方で消費者の技術レベルも向上しました。本や映画や音楽のコピーを無料で入手することはどんどん容易になっています。インターネットユーザーはそこに魅力を感じているのだし、僕だってそうです。そしてエンターテインメント業界はこの状態をこそ恐れていて、僕だってそうです。


***


僕はロンドンに住んでいますが、好きなTV番組の多くはアメリカのものです。なので、最新のサウスパークとかフライデー・ナイト・ライツといったアメリカの番組を見たいときは、放送後にPirate BayとかeztvといったTorrentサイトをチェックします。僕自身出ている『ショーン・オブ・ザ・デッド』でさえ、自作映像のためにダウンロードしたことがあります。DVDをリッピングするより簡単だからです。

でも、Torrentを使うのは一般には面倒すぎるでしょうね。
TransmissionとVLCをインストールして、テレビで見るならエンコードし直して...。でも、僕自身はテッキーというか、まあギークなので、この手のことはもう何年もやっていますので。

でも、見たい番組がもしiTunesで入手可能なら、たとえばサウスパークが今はそうなんですが、そっちを使います(サウスパークを見るにはアメリカ版iTunesアカウントが必要で、それはそれでまためんどくさい裏技があったんですが)。しかもその方が安上がりです。コメディ『ハイっ、こちらIT課!(原題: The IT Crowd)』のクリエイターであるグラハム・リネハンは、これを「タダより良い」と言っています。サウスパークを作ったマット・ストーンとトレイ・パーカーはTorrentサイトにあるサウスパークの海賊版も黙認していますが、これは僕が思うに一種の継続的プロモーションとして捉えているからではないでしょうか。また、この状況に対しできることは何もない、と悟っているからでもあるでしょう。

プロモーションとして考えるのはアリだと思います。たとえばサウスパークは、TV局への番組販売、広告収入、関連商品販売、DVD販売(これは減少傾向ですが)などから利益を得ていますので、露出が増えるのは良いことなのでしょう。

Torrentでの露出効果といえば、短命だった僕のBBCの番組に関してもあると思います。僕は今自分のWebサイトを改修中なのですが、その中でWebチームから、TorrentサイトとRapidShareのPeter Serafinowicz Showへのリンクを消すかどうか聞かれました。この番組は最近イギリスでDVDがリリースされたところです。僕はノーと言いました。この番組はあまり認知度が高くなく、なるべく多くの人に見てほしいと思ったからです。実際僕自身も、自分がコピーを手元に持っていないときにTorrentを使ったりもしていましたので。

この番組の多くはYouTubeにも上がっています。もしYouTubeで気に入ってくれた人がいれば、いろんなおまけもついたDVDを買って、自分のものにしたいと思うでしょう。でも、DVDはアメリカでも売られていません。だから無料で手に入るコンテンツというのは、僕や他のキャストや作家にとっては名刺代わりで、そのおかげで願わくば僕らはコメディ・ファンの皆さんのためにもっと面白い作品を作れるのです。

ダウンロードサイトさえ知ってしまえば、DVDのコンテンツや、特典やメニューは、全て高品質で、簡単にしかも無料で入手できるのです。素晴らしいことです。僕にも、他の作り手にとっても、利益にならないということを除けば。Peter Serafinowicz ShowをYouTubeで始めましたが、これは僕と兄弟のJamesがタダで作っています。機材は基本的なものに抑えた上で、最善のものを作ろうとしています。

でも、どんなコメディでも僕らと同じように作れるものではありません。30 Rockみたいなかっこいい番組だと、巨大予算を用意して、作家や俳優やカメラマンや製作スタッフにお金を払わなくてはいけません。もしこれから何もかもが無料になってしまったら、誰がこの人たちにお金を払うんでしょうか?


***


「所有」の意味が変わりつつあります。映画をiTunesから買うということは、その映画をあるデバイスにおいて、ある条件の元で、視聴する権利を「所有」することです。DVDを「所有」すれば、そのDVDをいつでもどこでも見ることができますが、プロモーションや映画予告や、アンチ海賊版の警告を10分間見なくてはなりません。それなら、僕はダウンロードする方を選びます

でも、ダウンロードは違法であることが多々あります。僕は最近息子にDisneyのジャングルブックを見せたくて、iTunesで買おうと思ったのです。でも、ジャングルブックはDisney Vault(Disneyによる販売停止状態)にあって、iTunesにはありませんでした。だから、海賊版をダウンロードせざるをえませんでした。画像はきれいだし、数秒しかかかりませんでした。これをどう正当化するか? 僕は昔VHS版を買ったことがあります。Disneyは自業自得です。

また僕は、最近アメリカでiPadを買って、iBooksアプリを楽しんでます。バックライト式のディスプレイは読書に最適とは言えませんが、悪くないです。本はたくさん買いましたが、特に気に入ったのは、(コメディアンのティム・ミンチンに勧められた)イアン・マキューアンの最新作『Solar』です。これはiBooksで買えなかったので、Kindleアプリを使ってAmazonを調べてみました。
が、買おうとしたら、イギリスからは買えないと言われました(アカウントがイギリスのものだったので)。僕は憤慨して海賊版をダウンロードし、数分後には読み始めていました。これをどう正当化するか? この本を宣伝します。「『Solar』は、そらーすばらしい!」(本当にそうなんですが。)

また、僕はアンソニー・レインのNew Yorkerでの映画レビューを集めた『Nobody's Perfect』を紙の本として持っています。この本は約1.4kgもあるので、iPadで読める電子書籍版もほしくなり、ePubバージョンをBarnes&Nobleのサイトで探しました。iBooksではePubフォーマットを使っているので、iPadでも読めると思ったからです。
でも、Barnes&Nobleでは同じePubでもAdobeによるDRM技術を使っていて、iPadでは読めなかったのです。少なくともそのときは。その後、心優しいTwitterのフォロワーの方々に助けてもらいながら、さんざん時間をかけてXcodeとPythonのスクリプトをふたつのコンピューターにインストールしました。それが、Adobeの電子書籍を違法ながら読めるようにする唯一の方法だったからです。これをどう正当化するか? 僕はこの本を、紙の本と電子書籍で、計2回も買ったんです。


***


かつてフランク・ザッパは、「共産主義は決して機能しない、なぜなら人間は物を所有したがるものだから」と言いました。僕は、音楽がMP3になり始めた頃にCDについて同じことを感じていました。今、僕の音楽は僕のiTunesライブラリにあって、他のコンピューターとiPodに広がっています。

音楽は聴かれるためにあります。だから、ディスクとか箱に入って、棚の上に存在している必要はもはやないんです。僕がVirgin MegastoreなりHMVなりに行くと(めったになくなりましたが、昔の名残で)、そこには大量のプラスチックに埋め尽くされた巨大なスペースがあります。今は、Spotifyとか他のストリーミングサービス(ダウンロードせずに聞ける)があるおかげで、ハードドライブのスペースまでもが惜しくなってきています。

最近、バンドHot Chipの『I Feel Better』のミュージックビデオの監督を務めました。契約上、このビデオはEMIの公式YouTubeチャンネルで公開されることになりましたが、そこはイギリスのユーザー以外見られないので、約80パーセントものファンが見られなくなります。
これにフラストレーションを感じ、僕はこのビデオを地域制限のない自分のYouTubeチャンネルにアップしました。現時点で100万回くらい見られています。するとEMIはリモートで僕のバージョンに埋め込んだものを無効にし、再度見られないよう制限をかけました。バンドのプロモーションに携わる人たちが、なぜプロモーションビデオを見せまいとするのか、意味がわかりません


***


ビジネスのことはよくわかりませんが、古いモデルが変わらなくてはいけない、ということはわかります。おそらくその変化には、視聴者からアーティスト側への直接的なマイクロペイメントも含まれるでしょう。または、アップルなりの誰かに、そのコンテンツ全てをライセンスしてもらうために毎月定額料金を払うという形になるかもしれません。
重要なのは、アーティストとそのファンの間に、直接的で深いつながりができつつあることだと思います。それはインディーズバンドでも、ハリウッドのトーク番組のホストでも同じことです。が、確実に言えるのは、アーティストはいつもアートを作りだし、お金稼ぎをする人はいつもお金を作る方法を見つける、ということです。

さしあたり、僕は自分の番組を違法コピーしたことで自分自身を訴えなくてはいけません。僕の弁護士は手強いので、恐ろしい限りです。


***


Serafinowicz氏の記事は以上です。ものすごくはしょると、「物理メディアはムダが多いし、デジタルでも合法のものは制約だらけで使いにくい。現状では、違法ダウンロードが一番使いやすい。でも、全部無料になったら、誰が作り手にお金を払うのか? 作り手と受け手の関係が深まって、簡単にお金をやりとりする方法ができれば、この問題を解くカギになるのでは...?」ということでしょうか。

ちなみに彼は最近イギリスでPeter Serafinowicz ShowのDVDを発売し、これをYouTubeでも公開しました。また、アメリカではコメディシリーズ・Look Around YouのDVDも発売予定です。今年秋にはウィル・アーネットとともにFoxのコメディ(Arrested Developmentのクリエイター、ミッチェル・ハーウィッツによる)に出演予定です。彼のTwitterはこちらからどうぞ。


Peter Serafinowicz(原文/miho)
 

4798107034
だれが「音楽」を殺すのか? (NT2X) (単行本)

アーティストとリスナーの新しい信頼関係を作るために




 

新着コメント
コメント(3)

これは著作「利」権に一石を投じる意見のひとつかと。
ただ非常に残念なことに、現状では違法であるというだけで。
こういう意見が利権にしがみつく人たちの耳に、心に届く日が来るんでしょうか。

永久にそんな日は来ない気もしますが。

作品の共有が自由に行えるようになるのは理想だけど、そこから作者の利益を生み出す機構が開発されないと合法にはならないよねぇ.

現時点ではまだ早すぎる考えだ
手段はあっても我慢することは必要だろう
今彼のように所有、著作権利の構造を超えるのは
産業に致命的な損傷を与えることになる
行き過ぎた進歩の抑制も法の仕事だ

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