スマートブックは日の目を見る前に死んでしまう、その意味とは

スマートブックは日の目を見る前に死んでしまう、その意味とは 1

もしも必要な機能を全部いれこんだパワフルで今までみたこともないくらい薄くて軽いノートPCがあったとしたら夢のようだと思いませんか? しかしこの夢は日の目を見る前に消えようとしています。

今年の1月にLenovoはまさにこの夢のような素晴らしいガジェットSkylightを発表しました。これはスマートブック市場で先駆けとなるはずだった端末なのです。

【スマートブックって何よ?】

そうですよね。まずは、スマートブックって一体なんなの? って話から。

スマートブックとはつまりネットブックとスマートフォンを足して2で割ったようなものです。ちょっと漠然としすぎてますよね。もうちょっと細かく言うとしたらARMベースのプロセッサを使っている電話以外の端末、ということでしょうか。となると、iPadもこれに当てはまりますね。タブレット端末の未来はiPadでご存知のように明るいもののようですね。

ただ、ここではSkylightのような端末、ネットブックのボディに電話機能を気合いで突っ込んだタイプのものをスマートブックだとして、焦点をあててみていきましょう。

メディアプレーヤーとして仕事ができるものとして持ち歩けるものとして、今までになかったやり方でやってみせるモバイル端末、それがスマートブックです。

そんなスマートブックが消えてしまうかもしれない本当の意味とは?

続き是非どうぞ!

 

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【スマートブックが期待されたこと】

Skylightがマスコミから最も注目を集めていますが、他にも実はスマートブックのムーブメントの先陣をきっているものがあるのです。Compaq Airlife 100。QualcommのSnapdragonプロセッサ搭載。TFTディスプレイ。ただ発売日が未定なんです。

さてそこで注目のSkylight。アメリカで開催された家電製品ショーのCESで発表された現状予定されているスペックは、10.1インチのスクリーン、1GHzのSnapdragonプロセッサ・Wi-Fiと3G内蔵・8GBの内蔵ストレージ・16GBのUSBメモリスティック・2GBのオンラインストレージ・720pビデオ・HDMI出力・重さ2ポンド(約907g)未満。夢のスマートブック。

夢の端末といっても、Skylightは完璧か? と言われるとそうとは言いきれません。ただニッチなニーズをついてきているのは間違いないでしょう。キーボードがあるというだけで、タブレットよりも使い勝手がいいと思う人は少なくないでしょう。さらにAT&Tがバックアップということで市場で十分やりあえる力があるといえます。さらに登場予定は4月。もしSkylightが予定通り4月に市場にでていたら、iPadのあの驚異的な売り上げにも影響を与えていたかもしれないですね。

そう、発売予定は4月だったんです。今はもう6月。Lenovoの広報はこのパワフルな端末の発売を7月へと延期しました。そして人々はスマートブックという端末、その言葉自体を忘れ始めてしまったのです。

【なんで延期なのよ?】

社会のルールとして、パートナー企業のせいだ! と指をさすのはまず、しないものです。ルールにそって、Lenovoもきちんとつくり出すためには「もう少し時間が必要だ」とだけコメントしました。

が、ARMのマーケティング副責任者Ian Drew氏が5月頭のZDNet UKのインタビューで、ルールのことは忘れたように、Adobeがモバイル端末のFlash開発を遅らせていることが原因だとコメントしています。Drew氏曰く「スマートブックはもう今頃は市場にでているはずだった。が、実際にはでていない。その理由はソフトウェアにある。例えばAdobeが元々は2009年に予定されていたプランを実行していなかったり、ね。」とのこと。

確かにARMとAdobeが2008年の11月に一緒にプロジェクトを行うことを決めたのを考えると予定が大幅に遅れているのは割にあわないでしょう。Flash10.1も6月中旬まではモバイル端末に対応しないようですし。

ただもちろん遅れの原因はFlashのせいばかりじゃないですよ。ARMの構築にも問題があるのです。x86ベースのOSやアプリケーションをサポートしていないとかさ。スマートブックはリナックスベースの新OS搭載が不可欠です。ということはつまり、Skylightは独自のUIが必要なわけで、それには多くの開発者が関わり時間をかけてつくってテストしないといけないわけです。AirLife 100はそこでこけたと言ってもいいです。Androidにちょちょっとかぶり物をさせあとは神頼みというような感じでした。

ただここでラッキーだと言えるのはうまい解決法が実はある、...少なくとも今後見つかりそうだということです。救世主と成り得るのはGoogleのChrome OSです。ARMベースでx86でもオッケー。素晴らしく軽くウェブアプリケーションも動かすことができます。スマートブックにとって完璧なOSだと言えるでしょう。スマートブックが実際に登場すればさらにそれが確信されるでしょう。

【残された時間はない】

遅れたと言ってもFlashも6月中旬にはモバイル対応するし、Chrome OSが救世主になりそうですし。では、一体何が問題なのでしょうか?

Qualcomm曰く「我々はスマートブックという革新的で全く新しい端末で最良な体験をしてもらえるように全力でサポートしています。このスマートブックという新たなカテゴリーはHPのCompaq Airlife 100やDellのStreakの登場で勢いをつけるでしょう。さらに多くの端末は生産されようとしています。Snapdragonの搭載でその勢いはさらに増していくでしょう。140以上もの端末がデザインされつつあり、20以上の端末がすでにあります。HPやDellの端末はこの市場の盛り上がりの始まりにすぎません。」

全てはうまく言っているようじゃないですか。では、一体全体何が問題だと言うのでしょうか?

Qualcommからしたら、Snapdragonは多くの電話、タブレット端末に搭載されているというのは間違いありません。そう搭載されているのは、電話もしくはタブレット端末ばかりなのです。(主流なのです。)

なぜ電話もしくはタブレット端末だけなのか。なぜ各社はもっと他のオプションを考えないのか? その理由はiPadを見ていればわかると思います。Appleが全てだと言っているのではありません。新たなカテゴリーを作っていくのはとても難しくお金がかかることだと言っているのです。その中でAppleがARMベースのタブレットというカテゴリーをつくり出しました。消費者はもうすでにタブレットという存在を知ってしまった。どうやって使い何ができるのかを知ってしまったのです。この状況は、スマートブックを世に送り出していこうという会社にとって超えなくてはいけない2つの壁を作ってしまいました。その2つの壁とは、iPadに慣れてしまった人々とスマートブックというものの存在をどのようにアピールするかということです。

つまり時間がたてばたつほど、ある1つのもの(ここではiPadもしくはタブレット端末)に慣れて行く人々は形式の若干異なるスマートブックを取り入れようとはしなくなるのではないだろうか、ということです。

【つまり問題は?】

スマートブックが完璧な端末だということではもちろんありません。良さと悪さがあります。もちろん良さと悪さはタブレット端末にも、ネットブックにもノートPCにも、もちろん全てのガジェットにあるのです。そんな良し悪しがあるからこそスマートブックはユニークなのです。その独自の目的があるのです。そして、盛り上がりを見せるまえに消えてしまいそうなのです。極論を言えば、悲しいかなこれはスマートブックにだけの話ではありません。

そのうちスマートフォンは市場にでるでしょう、そして誰か購入する人がいるでしょう。他の何もかもがそうであるように、良いところと悪いところがあるでしょう。

問題なのは、スマートブックを必要としているか、欲しているか、それを吟味するチャンスを消費者が与えられそうもないということです。パートナー企業の開発の遅れ、タブレットの登場、それによって我々消費者がスマートブックそのものをジャッジする機会を得られそうもないということです。

これは革命的な端末は1度に1つしかだせないということを思い知らされたような気がします。それが、スマートブックが日の目を見る前に消えていってしまいそうなことの裏にある意味、真の悲しい事実だと思うのです。そして革命的な端末を市場に送り出すことがいかに難しいかを表す例だと思うのです。

Brian Barrett(原文/そうこ)