Mozillaのエバンジェリストが語るFirefoxとブラウザ、そしてWebの将来

2010.07.12 12:00
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Firefox 4Firefox HomeFirefox Sync、はたまたHTML5などなど、いろいろ語ってくれました!

かつてInternet Explorerが全世界を支配するかに見えたそのとき、Firefox 1.0がそれに果敢に挑戦していきました。6年後の現在、IEは衰退しつつあります(一般的にはまだ高いシェアを持っていますが)。スマートフォンの世界はWebKitが支配しています。では、Mozillaはどこに行こうとしているのでしょうか?

今回、Mozillaのデベロッパー・リレーションズのディレクターで、オープンソース・エバンジェリストのクリストファー・ブリザードさんにインタビューを行いました。Ace Hotelの素敵なインテリアの中、Stumptownコーヒー(クリストファーさんはカフェイン抜きで)飲みながら、MozillaとWebの将来について聞いてきましたよ。

続きでどうぞ!
 

Q: iPhoneアプリ(Firefox Home)を出されるんですよね?

A: ブラウザっていうのは単なるテクノロジーのかけらじゃないと思うんだ。それはある意味自分自身であり、目的地であり、知識なわけだから。Firefox Homeでは、モバイルデバイスにおける全てを本当にラクにしようとしているんだ。たとえば、モバイルでタイプして何かしようとするのはいまだに一苦労だよね。だから、データをつないであげること、アイデンティティをつないであげることが大事なんだ。ブラウザは本当に自分自身のことを、ちょっと気持ち悪いくらいよく知っているからね。

モバイル横断、デスクトップ横断にしていく。僕はこのテクノロジー(Firefox Sync)を複数のOSや自宅のマシンで使っているけど、すごく革新的だよ。全てがシンクする感じで、新しくブラウザを立ち上げても、それは自分自身のことをちゃんと把握しているんだ。


Q: デスクトップに関しては、Javascriptのスピード競争が激しくなっています。デスクトップ版のFirefoxでは、どんな点がポイントだと思いますか? ChromeやSafariは、Firefoxが初めて使った拡張機能を持つようになりました。Firefoxは次に何をしようとしてるんでしょう? 成長率で見れば、Chromeが他を超えるスピードで迫ってきていて、グーグルも非常に力を入れています。たとえば、Chrome以外のブラウザでYouTubeを見ると、「Chromeを使ってみて」と言われたりします。

A: うん、なので、やることはたくさんある。JavascriptやC frontでのバトルはまだ終わっていない。また、僕らの間では「Chromeに触発された」と言ってるんだけど、彼らはベースラインJIT(Just In Time)コンパイラをブラウザに内蔵しているね。JITコンパイラでは、コードをダウンロードすると、コンパイルしてネイティブコードで実行するんだけど、そうすると非常に速く、安定もする。

Firefoxでは、3.5以降、我々の間ではトレーシングという技術を導入している。トレーシングでは、コードを実行中につかまえて、最適化してくれる。アプローチはだいぶ違う。

Firefox 4では、我々はベースラインJITを導入する。まだできていないし、どのバージョンにも搭載されていないので、テストした人はいないんだけど。これで、Chromeの特徴的なパフォーマンスと同等になると思う。でも我々はさらにトレーシングもするつもりなんだ。わかったのは、多くのアプリケーションに対して、特にCPU負荷が高いことをしようとする場合、僕ら(Firefox)が勝ってしまうということで、それはフェアじゃないしね。

Firefox 4でやろうとしているのは、他より一世代先を行くJavascriptエンジンを搭載することで、それはすごく面白いことだと思うし、楽しみにしているんだ。より大きなミッションは、Web上のアプリ全体を引っ張っていくことで、これはすごく重要だと考えている。

グーグルがNative Clientを打ち出しているよね。あれは、Web上でのパフォーマンスを改善するための解決策の一部なんだ。実は僕らのトレーシングでも、同等かそれにすごく近いパフォーマンス向上が可能なんだ。Native Clientとか、またはネイティブコードに近づくには、より高速化するだけだってことはわかっている。これはあと2、3年続くと思うよ。


Q: 今、この業界の3大プレイヤーがそれぞれ自社のブラウザ普及に努めているのは面白いところです。マイクロソフト、アップル、グーグルそれぞれが、自社ブラウザを持っていますね。その中でMozillaは唯一、真の独立系のようですが。

A: 僕らはブラウザだけを作るオンリーワンだよ! 広告も売らないし、OSも作らないし、ハードウェアも売らない。とにかくブラウザを作るだけだ。


Q: 以前は、「Mozilla vs. マイクロソフト」で、それはみんなにとってわかりやすい構図だったと思うんです。でも今、グーグルのブラウザを使うことに関してはそれほど抵抗を感じないですよね。みんな、「○ァック、グーグル」っていう感じじゃないですから。そういう感覚は「Mozilla vs. マイクロソフト」において大きかったと思います。なので、Mozillaとしては今の環境でどう戦おうとしていますか?

A: 僕ら内部でも、それについてはよく問いかけているんだけど、結局いつも、僕らは人に関心があるっていう事実に行きつくんだ。実際、それが一番大事なことなんだよね。そしてWebは民主化を進める力なんだ。だから、みんなが好きなものを僕らが作り続ける限り、みんなはそれを使ってくれるはずだ。僕らが自分たちの技術をよく理解し、より大きなゴールを達成するためのメカニズムとして改善し続け、投資し続けていれば、僕らは大丈夫だ。だから、他のプレイヤーとの競争に関してはそんなに心配していないんだ。

僕らはカネという意味では多くのリソースを持っていないけど、チームの結束という意味では、チームの大きさに対してすごく良くやっていると思う。僕らは他社と同じくらいのサイズで、ときにはより大きくも、小さくもなる。

資産も多い。強いブランドアイデンティティを持っている。みんながFirefoxを何度も何度も選び続けてくれているのは本当に興味深いことだと思う。Chromeのユーザー数が増えているけど、僕らのほうも、彼らの倍のユーザーを増やしているからね。みんなが僕らを好きだって知っている。みんなは僕らに対して、「Firefox大好き! Firefoxが自分のエクスペリエンスを変えた」と思ってくれていて、それはすごく大きなことだよ。テクノロジーではなく、コンシューマーの世界で、僕らはそんな資産を持っている。

でも僕は、自分たちにとって大事なことにフォーカスしていれば大丈夫だ、とも思う。僕らは自分たち自身を再構築していくし、みんなが好きなものを作り続けていくんだ。


Q: 機能をコンパクトに抑えることと、充実させることのバランスはどんな風に保っていきますか? もちろん、シンクは大きな新機能ですね。統合的なブラウジング体験という意味では、すごく納得いきます。

A: これにはかなり時間をかけているよ。ときどき自分自身を再構築するのはすごく良い考えだと思うし、僕らはそれをし続けているんだ。多くの人はこれを知らないけど、拡張機能はもともと、コンパクトなエクスペリエンスを作り出すために編み出されたものだったんだ。拡張機能があることで、機能に対してノーと言えるし、「コアのブラウザ体験には不要だから、拡張機能にしよう」と言えるわけだ。だから、何千もの拡張機能があるんだと思うよ。

Chromeにも拡張機能があるし、Safariもそうなると思う。でも、僕らと同じものではないんだ。彼らが拡張させる土台のプラットフォームは、ほとんどの人は気付いていないけど、APIがすごく制限されているってところが違いなんだ。それに対して、Firefoxはオープンプラットフォーム。UIはWebと同じ言語で書かれているから、編集もできるし、変更もできる。すごくフレキシブルなプラットフォームなんだ、ハックできるっていう意味で。だから、誰もが何でも試すことができる、大きな余地があるんだ。僕らの安定性という意味では変わらないけど、みんなが実現しようとしている創造性を支えているんだ。

他のブラウザでは、これは真似できない。彼らは、僕らが拡張機能で使った言語をみんな使っているけど、同じじゃないんだよ。クリエイティブである力、変化する力、そして、みんなが求めていることを見つける力は、拡張機能によって僕らが見に着けたものだし、これからも僕らの成長を助けてくれると思う。

僕らはこれをモバイルでもやろうと思う。データがすごく大事だと思う。僕らは、ただのブラウザから、アイデンティティであり、シンクになろうとしている。だから僕らは今面白いことをたくさんしているんだ。


Q: Operaは、たくさんの機能を開発したという意味で面白いと思うんです。たとえばSafariとかChromeでも使われてる、スピードダイヤルのやつとか。彼らの立ち位置については気になりますか? Operaにはすごくいろんな機能があって、他社にとっては一風変わったミニ実験場みたいになっていますね、「あ、あれうまくいってるんだ、ウチでも使おう」みたいな。でも、携帯電話においてでさえ、Operaは勢いをなくしているようです。

A: 彼らはかわった位置にいるよね。どうするんだか、僕にはわからない。彼らのモバイル製品は素晴らしかったし、特にフィーチャー・フォン(多機能携帯電話)では、サーバーサイドの機能が良かった。僕が知る限りでは、誰もその位置はとってないね。


Q: Skyfireも、いくつかのスマートフォンでサーバーサイドでの圧縮をしていますが...。

A: それについてはまたみんな気づかない面白い話があってね。みんながMozillaを選ぶ理由は互換性なんだ。テック系のWebサイトを一歩出てしまうと、WebKitでは動かなくなってしまう。(Skyfireの)創業者はインド人だけど、インドでは、Firefoxでさえ動かないようなサイトがいっぱいある。でも、他のブラウザよりはましなんだ。だから、Webの境界ぎりぎりのところでは、Firefoxの互換性がすごく役に立つんだけど、WebKitベースのブラウザではそうでもないんだ。って、僕らは聞いてるよ。

だから、僕らは自分たちがOperaのようになるとは思わないアーキテクチャが違うし、コミュニティも違うから。僕らはOperaがこれまで持っていたよりマーケットシェアが大きいし、だからOperaのようになってしまうんじゃないかっていう心配はあまりしていない。それに、組織も全然違う。彼らはすごく大きくて、公開企業だよね。財務諸表も見られる。オフィスの誰かが言ってたけど、750人とかの人がいるらしい。すごく大きいんだよ。携帯電話にポーティングするのに全部の時間を割いている。デスクトップブラウザはモバイルプラットフォームのためのテストベッドに過ぎなくて、だから僕はあまり同じ立場になるんじゃないかっていう心配はしてないんだ。


Q: 携帯電話では、ほとんどの電話に搭載されたいですか、それとも、一部でいいですか? Androidだけで十分ですか?

A: いや、シェアは伸ばさないといけない。フルブラウジングできるようにしたいから、今は基本的にスマートフォンの中でも上位機種になっている。僕らは、自分たちにとって必要なやり方と場所でイノベートできるためには、オープンプラットフォームでなくてはいけない。iPhoneはそういう意味で恐ろしい拡張機能でできるクリエイティブなことに関しても、iPhoneでは許されるわけがない。他社ではイノベーションしてるのに、すごく怖いことだよね。

だからAndroidをやっている。Windows Mobileもやろうとしてたんだけど、っていうのは、彼らには良いブラウザが必要だったからなんだけど、彼らの方がもうプラットフォームを閉じてしまった。

(Windows Phone 7に関しては)マイクロソフトは「Silverlightの機能は必要なら使っていいけど、アプリストアを通してくれ。拒否権はこっちにあるけど」って感じなんだ。だからやらない。多分彼らは何らかのIEのバージョンを出すんだろうけど、ひどいものだろうね。


Q: IE7ベースから派生したものみたいでしたが...

A: モバイルWebの素晴らしいのは、みんなが新しいブラウザプラットフォームを使おうとしてることで、マイクロソフトだけが、その流れを元に戻そうと必死なんだよね。


Q: では、Webアプリの将来はどうなると思いますか? グーグルはWebアプリ関係では今とても大きな存在です。Androidはある意味で彼らの場つなぎ的なものにも見えます。そんな動きが見られますが、Mozillaとしてもやっぱり同じように、「これからはWebアプリの時代だ」みたいな考えですか?

A: それについてはちょっと違う立場なんだ。っていうのは、新しい課題がたくさんある。どうお金にするかってことや、どう軽くするかエンジンはどうするか、とか。面白いのは、ブラウザは今、その中とかそれ自身で、すごく便利で強烈なアプリを作れるようになってきたってことだね。それ自身が便利なものになっていて、単にデータを見るだけとか、データを取りやすくするだけっていうんじゃなくなってきた。

そこがChrome Web Storeでは大きなウリだと思う。お金を作る手段でもあるんだろうけど、基本的にコンテンツが見やすくて、ナビゲーションしやすく、見つけやすいようにするのが目的だと思う。そのためにはやることがいろいろあるだろうけどね。

でも僕らは、それ以上に大きなビジョンを持つべきだと思うんだ。デスクトップとモバイルは横断できるように、アプリケーションの作り方もWebに関しては変わらなきゃいけないと思う。で、僕らMozillaは、それを実現するのにユニークなポジションにいると思う。一部は標準ベースになると思うし、一部は実験になるだろうし、一部はサービスになるだろうね。僕らはその一部として、アイデンティティへの取り組みをサービスとしてやろうとしている。アイデンティティを持ち歩けるように。

アプリに関してのビッグ・ピクチャーということについては、僕らが関わっていかなきゃいけないことだし、僕らが加速させていくことだと思う。だから僕らはそこにいる。同時に、そろそろどうやってお金にするかってことも考えるべきだし、すぐれたアプリを作るために他社がどうやってお金を作っているかも考えるべきときだと思う。たとえば僕が聞いたのは、iPadに関わってる人が言ってたんだけど「あ、このWebコンテンツ、編集して電子書籍にしてiPadで10ドルで売ったら、みんな買うよね」みたいなことなんだ。


Q: グーグルの動画コーデック、VP8(オーディオコーデックのVorbisと併せてオープンソース化されWebMとして公開)についてはどう思いますか? HTML5動画の問題は近いうちに解決されると思いますか? (クリストファーさんはアップルのHTML5のマーケティングに関して批判的なコメントをしています。)

A: 問題がいろいろある。まず、インプリとしても標準としても、VP8は非常に優れている。標準という意味では、まだ明文化されていないことがたくさんあって「コード見といてください、そこに書いてありますから」みたいな感じだけど。だから、スペックがわかるところまでは行かなきゃいけない。ただのスペックなんだから。

VP8は広く採用されると思うし、YouTubeでも使われるからね。Webコンテンツの20パーセントを彼らは持っている。全部一緒にしたら、誰よりも大きな規模になる。だからVP8は相対的に使われやすくなるだろうね。

エンコードに関しては、VP8は動画を見るには便利じゃないんだけど、動画をエンコードするときにも使えるから、リアルタイムチャットで使えると思う。これらの使い方に関してはみんなロイヤルティフリーで使える。(VP8が対抗している)h.264も悪くなく見えるかもしれないけど、すごく良いってわけでもない。エンコードにすごくCPUを使うし、すごく複雑だから。

h.264の圧縮技術は、エンコードとデコードにものすごいCPUを使っているからできるんだ。h.264の動画をデコードするとしたら、どのプロファイルを使うかにもよるけど、CPUはものすごく食う。

一部のグラフィックカードではデコーディングをサポートし始めているけど、デコーディングに適してないものもあるってことがわかった。ビデオコーデックのデコーディングに適してないんだ。ビデオコーデックを手掛けてる人が説明してくれたんだけど、ビデオコーデックの仕組み上、データに関していろんな方面での知識を持ってなくちゃいけなくて、エンコードもデコードもするとしたらいろんな所を見てなくちゃいけないんだ。ビデオカードは、データとか計算に関しては適しているんだけど、動画に関してはそうじゃないんだ。もしやるんなら、それ用のハードウェアが必要ってことだ。

h.264には3つのプロファイルがあるよね。ベースライン、メインとハイ、確かそんな名前のやつ。面白いのは、みんなベースラインを使うんだよ。主にiPodのためにね。iPodではベースラインしかデコードできないから。高いプロファイルが使えないから、「まあまあ ~ 普通」レベルのフォーマットでみんな終わってしまう。ハイをデコードするなら、エンコードもデコードもすごく負荷が高いから、CPUがたくさん必要になる

一方のVP8で面白いのは、いつも同じプロファイルだってことだ。コンピューティング的にはエンコードもデコードも軽い方だから、すぐ使えるエンコーダーも付いてくる。だからリアルタイムのこともできる(トレードオフもあるけど)。ここにはイノベーションの余地がたくさんあるし、新しい市場で新しいことを試す余地がたくさんある。だから単にWebだけじゃなくて、他のマーケットにも関わってくる。でも、Webに関しては、HTML5対応のブラウザが十分に普及するにはあと2,3年かかるだろうから、ガマンのときだね。


クリストファー・ブリザードさん、ありがとうございました! Firefox 4 Betaこちらから、Fennec for Androidこちらからどうぞ。


Illustration: Nikki Cook

matt buchanan(原文/miho)

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