SONY「我々はアップルみたいな狭っこい会社にはならんぜよ」

SONY「我々はアップルみたいな狭っこい会社にはならんぜよ」 1

「君らのせいで週末は大忙しだったよ」

春先のソニー特集の直後、ソニー広報のトップからこんな電話がありました。

特集で伝えたかったメッセージはちゃんと聞き届けてもらえたようで、ギズの批判にはもっともな点も多いと同調さえしてもらえましたが、これまでの失敗および今後どう軌道修正していくかについてはソニーの方からも直に読者にお伝えしたいとのこと。確かに。その方がフェアですよね!

というわけで、翻訳が星の光ほども遅れてしまいましたが、以下にジョージ・ベイリー(George Bailey)さんのインタビューをご紹介。

ベイリーさんはハワード・ストリンガーCEOが5年前に始めた変革の総仕上げのため昨年、IBMからソニーのチーフ・トランスフォーメーション・オフィサーに抜擢された大御所ですよ。

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Joel Johnson:  まず一番にお伺いしたいのは、消費者の信用の問題にソニーがどう対処していくか、というところから。読者から寄せられた今のSONYブランドに対する反応がネガティブで、これには僕自身驚いてるんですよ。

George Bailey: おたくのブログは読んでるし、そこで今何が起こってるかも把握してるよ。消費者目線にフォーカスするブログなことも理解している。

その上でこれだけは言わせていただきたい。君は記事中、日本の家電メーカーが業界全体の問題として、消費者第一のフォーカスを見失ってしまったように思える、と書いたよね。消費者が喜ぶものよりエンジニアリング重視の傾向があると。これはねえ、ソニーの世界観からすると非常に耳の痛い話なんだよ。なぜって我々には、常に消費者を幸せにするもの、喜んでいただけるものが何であるかを汲み取り、優れた技術で消費者をアッと言わせるものを作ってきた、という自負があるから。それが創業以来ずっと受け継がれてきた当社の伝統だからね。

とは言え、ここ数年は、その本懐をやや見失ってしまったかもしれない。それは私も認めざるを得ない。東京のエンジニアが満足するものでも、サンフランシスコ、ニューヨーク、ブリスベーンの消費者に満足してもらえないものもあることは明らかだ。

ソニー(をはじめとする日本の全家電メーカー)が消費者を喜ばせ、幸せにし、付加価値を与えるものにフォーカスできなくなったというのは、おそらく本来あってはならない以上に当たってるのかもしれない。まずはそれを認めるところから出発しなくては。その意味でも、君の言い分はフェアだと思う。

 

 我々はこうした問題を問題として認識するだけでなく、その問題を打開するためにアグレッシブに動いてきた。企業としてこうした問題撲滅をどう進めていくのか、君にちょっと教えてあげよう。「よーしわかった。じゃあ月曜からまたお客様にフォーカスしていくとするか」 と、ただ言うだけではダメ。通用しない。

実は当社は1年も前からこの問題に取り組んでいる。昨年4月には企業再建も行った(日経詳報)。 ソニーは世界に17万人の社員を抱える、収入800億ドルの大企業。これだけの船の進路を変えるには、本当に抜本的アクションが要るのだ。そこで全社規模の構造改革を行い、「水平型プラットフォーム」なるものを創成したのだ。

なぜこんな話をするのかというと... 例えば、この構造改革のひとつに「R&D、コモンソフトウェアプラットフォーム」というのがある。デジタルイメージ、ブルーレイ、Vaio PC、ブラビアTVなどなど、これまで事業ごとに研究開発とソフトウェア開発をバラバラに進めていたグループを全部ひとつの共通プラットフォームの指揮下に統合する施策のことだ。これ、企業のお決まりの飾り文句と勘違いしてもらっちゃ困るよ、いいね? これが重要なのは、無論コスト削減効果もあるが、消費者の側から見てもっと重要なのは、これでソニー製品ファミリー全体の共通ユーザーインターフェース創出に着手できる体制が整った、という部分なのだ。

Joel Johnson:  そういえば5年前ストリンガー氏が就任した際にも社内にサイロ(部門間の壁)がある、このサイロを切り崩さなくちゃならん、と散々言ってましたもんね。あの時はサイロは完全には崩れなかったと思うんですけど、こうしてソニーからまた同じ話が出てくるところを見ると、ストリンガーCEOがひとりでやってた時よりも更に変革を徹底できた、あるいは彼がその道筋を付けてくれた、ということになるんでしょうね。

プラットフォームはどうでしょう? グループ間でどれだけ連結が進んでますか? プラットフォームの方向性は上級管理職が決めてトップダウンで、異なる製品を扱うグループに指示が下るのか、それとも各プラットフォームの内部も「サイロに分かれている」、もっと自然発生的(オーガニック)な状態なのか?

George Bailey: まあ、サイロを全部切り崩したと言ったら誇張になるね。まだサイロは若干あるよ! でも、島田さんという男がいて、水平的な「R&Dコモン・ソフトウェア・プラットフォーム」は彼が総括しており、そういったソフトウェアの開発者とデザイナーは全員彼の配下に集まって、異なる事業グループ全てと協力しながら作業を進めている。が、最終的には、プラットフォームの外観や仕組みの最後の意思決定を行うのは、その水平的プラットフォームのオーナーだね。

今のSonyで我々は、とても協力的に仕事を進めている。これは当社のカルチャーの中でも、今後とも維持していきたい部分だね。だが一方、今の我々には明快なアカウンタビリティと変革中心の姿勢も求められている。こちらは実践までに少し時間がかかるだろう。2010年が深まるにつれ消費者にもその恩恵が見えてくると思うよ。2011年を迎える頃には、確実にね。目下、大変な努力をしているところだ。

それが分かる秘話をひとつ。2週間前、ソニー・ピクチャーズのヘッドのマイケル・リントンとロサンゼルスで会った。私は東京からコンスーマープロダクツグループとネットワークサービス・グループの人たちを一緒に連れてった。VAIO、PlayStation、その他全部作ってる人たちだ。 驚くかもしれないが、「どうしたらソニーにしかできないブレイクスルーのサービスを創出できるのか?」という仕事の話し合いを持ったのは、それが実は初めてだった。

きっと君も、みんなみたいにこう言うだろう。「あーそうかいそうかい、そりゃ結構なアイディアで。それにしても、なんでソニー・ピクチャーズもソニー・ミュージックも端末もみんな同じ組織の中にあるのに未だにブレイクスルーが起こせてないの? 一致団結して何かやるってところが実際見えないのだけど、それは何故?」。今のソニーには、これに前向きに取り組む仕組みができたと思うよ。

新しい人たちが会社を動かしている。昨年4月1日をもってソニーは新体制になった。彼らはこの任務にコミットしている。マイケル・リントンと彼のチーム。コンスーマープロダクツグループを率いる吉岡さん。ネットワークプロダクツグループを率いる平井さん。彼らは定期的に会合を開いて、この問題に取り組んでいる。だからプレスリリースとか演説だけじゃなく、ちゃんと実体が伴なう、担当者も会議もある変革なんですよ。

Joel Johnson:  ソニーでお話を伺った人の多くは、前は躊躇していたのに、今はもっとくだけた感じで意思疎通が図れるようになった、と話していましたよ。素晴らしいですね。

ところで、いつになったら、ソニー・エリクソンとの提携から撤退し、携帯事業を全部インハウスで展開するんでしょう? というのもソニエリの存在意義も今となっては失われてしまった気がして仕方ないんです。

George Bailey:  いやあ、当社はむしろソニーエリクソン製スマートフォンに全力を注いでいるところだ。米国の発売時期はまだわからないが、ここ日本では4月1日発売だし、米国もそんなに違わないだろう。[編集部注:Experia最新型の米国発売日は未発表]。あのスマートフォンはAndroidベース。私もいじってみたが、iPhoneやBlackberry並みかそれ以上の携帯だと思う。

因みに私はずっとBlackBerry中毒。BlackBerryを誰よりも早く使った人間のひとりで、みんなと同じように使い始めてすぐ中毒になった。ソニエリに切り替えたのは、ソニーで働いてるから、だよね? ソニー・エリクソンは使わなきゃならん。正直言って、[前の]Windows OSは最初ちょっと使いづらかったね。

あれが好きな人もいる。あれでシックリくる人も。だけども、AppleやBlackBerryのエクスペリエンスに慣れた人には、このAndroidベースのスマートフォンはすごくすごく魅力だろうね。だから、誰にでも合うソリューションなんて、ないということ。

あれはあれで続ける。あれとは別のフォームファクターで今、全く新しいモバイルデバイスのプラットフォーム戦略も抱えているしね。アップルと違い、我々には最小のスマートフォンの液晶から55型BRAVIAまで、MotionFlowから3Dから何から何まであらゆるものを通じて人にコンテンツを届ける能力がある。それもフルレンジに取り揃えてゆくので、相当パワフルになる。

Joel Johnson: 先日、ソニーが兼ねてから温めていたAndroidベースの「Google TV」事業の発表がありましたよね。ソニーは本当にAndroidを採用し、製品にフルレンジに採用していくんでしょか?

George Bailey:  Google TVについてはコメントできない。まだなんにもリリースされてないからね。ただいくつか教えてあげよう。我々は自社製TVを含め、あらゆるスクリーンサイズで楽しめるようなインターネット・エクスペリエンスを絶対責任をもってみなさんにお届けする。私も手持ちのVAIO Media Center PCをBravia XBLに繋いで長いこと使ってるが、これが結構素晴らしいエクスペリエンスなのだ。あのユーザーエクスペリエンスをTVでも実現できるような、もっと新しい、従来と異なる手法も、必ず責任をもって見つける。

多くの面でAndroidは非常に魅力的なプラットフォームなので、多くの様々なデバイスにAndroidは搭載されるだろう。 これが唯一のプラットフォームと言うつもりはないが、非常にパワフルなプラットフォームであることは間違いない。コンシューマに実質的アドバンテージを与えるものとなるだろう。

Joel Johnson:  Sonyのソフトウェア技術サイドからは、社内で開発したシステムではなくAndroidを育成することに対し抵抗は? 他社OSより自社OSという、企業カルチャー的な部分はないんでしょうか? それとも、PlayStation 3からLinuxのオプションが消えてしまったのは、単にPS3発売がうまくいかなかった副産物? 

George Bailey:  Sonyは世界最高の家電のエンジニアを抱えていると思う。伝統的に見て、これは素晴らしいことだ。しかしそうあるが故に伝統的に、あんまり他社と協力したり、他人のプラットフォームを土台に開発したり、社外の人と一緒に働かなくていいという部分もある。アナログ時代は、これで良かった。全部自分でやって、我々は大成功を収めた。デジタル時代は、ゲームががらりと違う。 それを当社のカルチャーに受け入れてもらうまで、少し時間がかかった。 例の「ここで発明したものではない(Not invented here:NIH)」症候群が我々にもあるのか? 答えはYes。 変える方向で動いている? Yes。

面白いのは、これをどれだけ受け入れられるかが、年代によること。次世代という感じの若手エンジニアとよく会ってると分かるんだが、彼らにはすんなり呑み込めるのね。いやホント。なんでも協力するし、自分たちが開発を行う土台のプラットフォームは別にSonyの発明品でなくても構わない。デジタル時代に育ったガイズなんだね。こういうのやることに対して非常にオープン。「ここで発明したものではない(から受け入れない)」なんて意識、これっぽちもない。

だが、アナログ時代に育った人は、なんでも自分たちの手でできたSonyの黄金時代を覚えているから、発想の転換はもっと難しいかもね。思いっきり正直に言ってしまうと。

Joel Johnson:  Sonyはあれだけ絶大で、ガジェットや一般家電を代表する顔だったので、そのプライドが多くの人の足かせになって20年間あらぬ方向に行ってしまったようなので、今のお話は非常に興味深いですね。でも、これから本当に変革を担っていく人たちが、世界におけるSonyの位置を知ってる話を伺って、元気が出ました。

George Bailey: それは、ほんの小さなところに出る。私が気に入ってる製品は、Dashだ。完璧じゃないが、なかなか優れたソリューションという人も多い。枕元に置いて、すぐインターネットに繋げ、自分でいろいろ設定できるデバイス。あれは全部Sonyが作った製品じゃない。だいぶ他社と協力して実現した製品だ。

Joel Johnson:  Dashも、Sonyの中途半端を示す例だと僕は思うんですけどね。Dashも良い製品なんですけど、今はほぼなんでも1台で済む、ソフトウェア駆動の収束型デバイスの方向にすべてが動いてますよね。だから、Sonyが今必要なのは突発ヒットのはずなのに、絶対なりそうもない超ニッチ指向の製品を量産し続けるのも妙な気が...。製品ラインを減らして、引き締める動きはないんでしょうか?

George Bailey: その点は君の意見に賛同せざるを得ない。思いっきり正直に言うと、うちはSKU(在庫管理単位)あり過ぎるかもね。複雑過ぎるかもしれない。これも元を正せば善意から生まれた状況ではある。消費者の抱えるニーズになるべくターゲットを絞り、その狙った市場で本当に素晴らしいものを作ろうと努力する当社のエンジニアから生まれてきた製品なのだから、結構なことではないか、ね? モチベーションはいいのだ。しかし残念なことに、それでインパクトが薄れてしまっている。

一方アップルを見ると、あそこはまた、信じられないぐらいフォーカス絞ってる会社なんだよね。iPadにあれだけのハイプを生み、しかも新発売はまだあれ1コ(3月段階)。ソニーはどうかというと、今年これから新発売の製品が8種、12個控えている。これについてはもっとフォーカス絞らなきゃならんな...と思うこともあって努力はしてるので、来年ぐらいには成果が見えてくると思うよ。

ところでニッチな製品のことだけど、私は少しぐらいあっていいと思う。ひとつには、それで特定の顧客層のニーズを満たすことができるし、あとひとつには彼らから学ぶことができるから。

我々は一発大当たりのヒットを出せるのだろうか? 出て欲しいよ、まったく! 

でも一発野郎よりむしろ私が見据えているのは、Sony製品ファミリー全体がますます付加価値をつけていく展開だ。 自宅でも、車でも、職場でも。55型TVでもVAIOでも。スポーツ観戦したいと思えば、製品ファミリーの隅から隅までコンテンツの転送がますます容易になっていく―そんなレンジひと塊の、エンド・トゥ・エンドの機器のサプライチェーンだね。そして、いろんな異なる端末を経由して、もっと簡単にエンターテイメントが楽しめるようになる。どれか突発的にヒットして1本で終わりというんじゃなく。 人はたぶん、Sonyの製品ファミリー全体を見て「Sonyが買いたい。使ってベターだし、製品同士の連携がもっときちんとしてるから」と言うようになると思う。もちろん、クオリティーに定評のあるブランドもあるし。

そりゃもちろんメガヒットだって、出したい! ワクワクするよね。

Joel Johnson:  確かに、相互互換性は息の長い成功への鍵だと思いますね。別に少ないSKU品目中心にあれもこれも開発する必要はないわけで(それが可能なら、それも良いビジネスになりますが)。ここしばらくソニーを見ていて思うのは、なんか自分が欲しいものが何かわからないところが問題なのかな、と。

George Bailey: SKUに関してだが――我々がアップルほど狭っこくなることは絶対ない。ああは、なりたくない。 我々はもっと沢山の選択肢を、幅広く提供したいのだよ。だが、ちょっと多様化し過ぎた嫌いはあると思うので、これからはもっともっとフォーカスしていきたい。これから我々が市場に出すものを見て消費者にも、違いがわかっていただけたら幸いだ。

Joel Johnson:  では最後の質問。ややそれ繋がりの質問なんですが...今後Sonyのロボット市場復帰はあるんでしょうか? 僕はロボットがなくなって本当に胸にぽっかり穴が空いた気分なんです。あれって実は重要だったんじゃないかという気がして。

George Bailey:  そうだね、君がブログで市場の関心を充分喚起して、これを買う人、これにお金を払う人の数が充分揃ったら、我々としても復帰はやぶさかじゃない。今言ったことは単に私の個人的見解であって、会社の意見を代弁してるんじゃないけども。しかし、こればかりは我々の一存ではどうにもならんのよ。だって誰もロボットに金出したくないんだから! こっちも、やるからには利益あげないと! と言ってる自分も、ロボは好きだが

ロボットから生まれた技術は他のデバイスに活用した。まあ、やってみるのも楽しそうだな。興味示す人をブログでうんと確保してくれ。そしたらたぶん私もロボ発進の太鼓叩けるから。

Joel Johnson(原文/satomi)

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