アップルApp Storeのアプリ検閲と奮闘7ヶ月

アップルApp Storeのアプリ検閲と奮闘7ヶ月 1

ウォルマートで遭遇した面白い買い物客の写真を集めたiPhoneアプリ「Funny Shoppers」が公開後すぐアップルに削除されました。今さら驚くことでもないですけど、スキゾなアプリ承認・検閲に振り回された7ヶ月を振り返ってみましょう。

問題のアプリは、ウォルマート(今やiPhone取扱店)の地獄谷をさ迷うホラーなお客様の写真を集めて人気のサイト「People of Walmart」が、小さな開発会社「Alkali Media」に委託して作ったものです。さっそくAlkaliを運営するマイク・マクナスビー(Mike McNasby)さんに話を聞いてみましたよ。

マイクさんによるとアプリの承認審査は2010年1月から始まり、先週(7月最終週)やっと審査を通ってリリースとなったそうです。

そんな審査するとこもないんですけどね。主な機能は(1)見る:ウォルマートを行き交う人、芋虫状の生き物、その他無脊椎動物の写真を閲覧、(2)撮る:ヘンなお客様を見かけたら『ゴーストバスターズ』みたいにiPhoneカメラでパシャッと影を捉えてアップロード。―非常にシンプルなiPhoneアプリですから。

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不快コンテンツで却下

なのに最初1月に申請した時には「不快なコンテンツという理由で速攻で却下されましたね」とマイクさんは言います。まあ、アップルはポルノのポの字も許さない超厳格な審査で(露出を抑えたポルノ女優大手雑誌のアプリ「Sports Illustrated Swimsuit」なんかはOKだけど)、一時はメインストリームの出版物からジェイムズ・ジョイスやオスカー・ワイルドの小説ベースのエロ漫画まで手当たり次第に却下してましたからねえ...。ジョブズもポルノからの自由を謳ってますし(Safariブラウザ使えば正真正銘のハードコアポルノが丸々見れるけど)。これは驚くほどのことじゃないですけどね。

 

非公認アプリは承認

 

気をとり直してAlkali社とPeople of Walmartは、「コンテンツを一部削除して再挑戦してみることにしました。People of Walmartへのリンクを抜いたらどうなるか様子を見ようと思って」。

今度は人の写真はゼロ。ウォルマートで見つけたモノだけです。ところがまたもや同じ理由(不快なコンテンツ)で却下されてしまったのです。不快コンテンツなんてひとつも混じってないのに。

それも納得いかないけど、もっと妙なことになったのはその後です。ななんと「Shopper Fail」(有料版&無料版)という、「Funny Shoppers」(無料版のみ)のそっくりさんが華麗に承認されてしまったのです。同じPeople of Walmartのサイトから直接拝借した写真がゾロゾロ出てくる非公式アプリなのに。

こちらは削除もされず、App Storeで何度もアップデートを重ねていきました。アップデートのたびにApp Storeの承認プロセスを通るんですけど、 どれも合格。1月にPeople of Walmartがアプリ却下された時と同じ「不快」コンテンツ見せても、こちらは全然オーライなのです。

これはいくらなんでもおかしいじゃないか、ということで、People of Walmartがアップルに「なぜアップルは規約違反のコンテンツと同じもの出してるアプリ、それもサイト公認じゃないアプリの方を売るんですか?」と問い合わせてみたところ、アップルからは「App Storeの他のアプリについてはコメントできません」という回答。

しょうがないのでPeople of Walmartから「Shopper Fail」に削除要請の文書を送って、やっとApp Storeから削除されたという次第です。

ジョブズとハイド

その数週間後。アップルからPeople of Walmartに連絡が入り、こんなアドバイスをいただきました。「アプリに若干の修正を反映してアップデートしたら、そのままのかたちで承認しましょう。修正点:ウォルマートという名前を全削除すること」。

これについて開発者たちは、「アップルはこのアプリをApp Storeに出してウォルマートから文句言われるのだけは避けたい、ウォルマートという言葉さえ出さなければ承認を考え直してもいいよ、と、そう言外に伝えてきたんでしょう」と話してます。(ウォルマートはiPhone取扱店ですもんね)

こうして「Funny Shoppers」アプリは4度目の挑戦でついに承認に漕ぎ着けました! と言っても、その話し合いから何ヶ月も経った後ですけどね。あまりにも長く待たされたので誰も出るとは期待してなかった、とマイクさんも言います。

満を持して(?)のリリース後、アプリはたった1日で「トップセラーのエンタメ部門36位、無料アプリ総合部門275位にランキング入り」し、米Gizmodoにも紹介されます。

すると...アップルからまたまたPeople of Walmartに連絡が...。何かと思えば、今度はアドバイスもなく、いきなり「こんな不快コンテンツはApp Storeに出せない」と承認撤回の連絡です。

こうしてアップルは前の日に承認したアプリを、たった1日で削除しちゃったのです。―あの馬鹿みたいに長く待たされた承認プロセスの挙げ句がこれ...。デベロッパーにしてみれば、まるでコロコロ気が変わる多重人格者に延々振り回されてるようなもんですよね。

「ぶっちゃけアップルもこのアプリがここまで健闘するとは思ってなかったようですね。その点Shopper Failアプリは、このPeople of Walmart公式アプリのダウンロード数とは比べものにならない程度だったので、その心配はなかったんでしょう [確かにPeople of Walmartから削除要請がいくまで安穏と生き永らえてましたもんね] 」とマイクさんは話しています。

でもでも、まだ状況が変わる可能性はある、とAlkali社とPeople of Walmartの人たちは望みを捨ててません。アップルとはさらに何ヶ月も粘り強く交渉しなきゃならないだろうけど。だって「これはどうかな...」と首をかしげるコンテンツ(アップルの場合、その定義からして延々変わるんですが)が見れるソフトなんて、App Storeに他にいくらでも出てるからね、というのが彼らの主張ですね。(例:Cyanide and HappinessTexts From Last Night、Playboy)。

まーしかし出るも出ないも命運はApp Store神の手にすべて委ねられてるわけでして。これがデベロッパーが大手でも独立系でもお構いなし、ロジックもメソッドもあるんだかないんだか...。サムズアップしたと思えばサムズダウンする気まぐれな神さまなのです。

イラスト提供:Sam Sprattさん(ポートフォリオ、ファンページ:Facebook Artist's Page

Jesus Diaz(原文/satomi)