量子コンピュータがハイゼンベルクの不確定性原理を覆す日

量子コンピュータがハイゼンベルクの不確定性原理を覆す日 1

量子力学の基礎と言えば不確定性原理、「ある粒子の位置か速度(運動)は測れるけど、両方は同時に測れない」というアレですが、今まさに量子コンピューティングのメモリでこの法則を覆すところまで.........来てしまってるんだって! 

量子力学って大体そうだけど、不確定性原理の理論的根拠も超難解で、6次方程式ぐらい最低わかってないと頭がついていきませんよね。でも偉人ポール・ディラック(Paul Dirac)が「不確定性原理とはなんぞや?」がざっくりわかる解説を生前残してくれてるんですよ。それによると、ある粒子の位置を測定する方法は極々限られているのだけど、その数少ない方法のひとつが光子を粒子にぶつけ、検出器に光子の落下点を記すこと。これで粒子の場所も分かるんですが、これやっちゃうと速度もガラリと変わっちゃうので、そっち(速度)まで知りたいと思ったら、速度変化に応じて位置も変化させるより他に方法はないんですね。

厳密に言うと、この不確定性原理のせいで、亜原子粒子(原子よりまだちっこいもの)の位置と速度の両方がどうしても同時に計測不能なわけではなく、「超精密な計測はとても無理」という意味であり、アバウトでよければ両方測れますし、どちらか片方でよければ精密な計測は可能です。が、それ以外にオプションはないんですね。光子のぶつかり具合を弱めてやれば粒子の速度への影響は抑えてやれるんだけど、そうすると今度は位置の計測が曖昧になり、しかも(位置をきっちり測る設定時ほど大きく動かないにしても)位置はやっぱり動くというジレンマに陥ってしまうのです。

ノーベル物理学賞受賞者ヴェルナー・ハイゼンベルク(Werner Hisenberg)が1927年に初めてこの理論を発表して以来、量子力学の世界ではこの平衡状態がずっと大なり小なり続いています。これを覆す試みは ―あのアルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)も何度かやってみたのですが― すべて失敗に終わりました。

しかし今、この相対性理論の父がなしえなかったことを引き継ごうと、ドイツ、スイス、カナダの各国出身の物理学者5人が頑張ってるんですね。それもアインシュタインの死後何十年間も、理論化さえされてなかったもの、つまり量子コンピュータを使って

 量子コンピュータの鍵は量子ビットにあります。つまり量子メモリを構成する個々のユニットですね。

計測手順ですが、まずはあらゆる変化の状態と自由度が確保できる充分な大きさの量子メモリに粒子をエンタングル(絡み合わせること)します。次にその粒子を切り離し、どちらかひとつの属性を計測します。もし位置を先に計測したんなら、次は速度を計測するよう、この量子メモリのキーパーに研究者から指示を下す、という具合に。

不確定性原理も影響が及ぶのは粒子どまりで、メモリまでは及びませんから、キーパーで無理なく2回目の測定値が取れるのです。つまりハイゼンベルグの原理などどこ吹く風で、両方その場で正確に(超難解な数学のことなので「ほぼ正確に」でしょうか)計測ができるというわけです。

まあ、不確実性原理を完全に覆すものじゃないにしても、少なくとも我々の量子力学と素粒子物理学の理解を根本から変える動きであることには違いありません。(それどころか惑星間アンシブル実現の可能性がまた復活したりして...いや、独り言です、聞かなかったことに)

こうして数学的なこと見てくると有望に思えますが、ラボ実験までの道のりはまだ長い! 量子ビットも山ほど要りますし。我々が一度に生成できる量子ビットはまだ1ダースとかその程度なんですが、粒子から得た量子の情報を全部エンタングルするにはこれじゃ全然足りなくって、もっともっと沢山必要です。さらにそれだけ沢山の量子ビットを一緒くたにエンタングルする作業、これがまた極めて微妙で扱いにくい作業なのです。絶対不可能っていうほど 扱いにくいわけじゃないけど、まだ今できることの遥か上をゆく難しさなのですねー。

それにしても量子コンピュータのTo-Doリストは溜まるばかり。これがオンラインに登場した日にゃ大変なことになりそうです。

[Nature Physics via Ars Technica]

(本稿は系列ブログhttp://io9.com/からの再掲です)

Alasdair Wilkins(原文/satomi)