また「ウェブは死んだ」そうです

また「ウェブは死んだ」そうです 1

The Web Is Dead. Long Live the Internetウェブは死んだ。インターネット万歳)」と、ワイヤードのクリス・アンダーソン編集長がウェブ版の最新記事で宣言し、「やっぱり死んだか」、「いや死んでない」とネットで話題騒然です。

え? なんかおかしいって? そうかな?

「王は死んだ。王様万歳」(王が死んでも王政は続く)をもじったタイトルですね。要するにオープンなウェブ、ネットコンテンツをブラウザで見る時代は終わり、ネットはますますFacebookやらiPhone/iPadアプリといった半クローズドなプラットフォームの通り道と化している、というおはなし。

アプリがネットを殺すという話はハーバードおよびイエールを出たオックスフォード大学教授ジョナサン・ジットレイン(Jonathan Zittrain)氏が2年前に予言してますよね。そういやワイヤードは1997年3月号でもブラウザは死んだと宣言してたような...記事中、編集長自身書いてますが...。北斗の拳みたいなもんですかね。

やっと8年後に内臓破裂ってわけですが、それを端的に示すものとして("Atoms Are the New Bits"とフリーロングテールで有名な)アンダーソン編集長が提示したのが、上のインターネットデータ分析協会(CAIDA)の出版物を基にシスコがまとめた「米国内インターネット・トラフィック比率」推計チャート。

ご覧のように約20年前のネット黎明期にはFTPが米国内トラフィックの53%を占めたのに、今は動画が51%、P2Pは23%で、ウェブもたったの23%...4分の1未満! いや~衝撃ですね~。

確かに言わればみればこの記事の冒頭にもあるように、今は朝起きたらメールチェックもアプリ、TwitterやFacebookもアプリ、新聞読むのもアプリ、携帯でポッドキャスト聴くのもアプリ、電話・IMもスカイプなんかのアプリ、夕ごはんの時はネットラジオ、ごはんの後はネットゲーム遊んで、ネット配信の映画観て寝る...みたいな調子。一日中ネットを使っちゃいるんだけど、ウェブコンテンツをブラウザで見る割合いは減ってるかもね。

これが「ウェブの死」。ここ数年はHTMLが支配するオープンなウェブ(グーグルがクロールできる世界)の割合いが減り、壁に囲い込まれたアプリ(グーグルがクロールできない世界)の割合いが増えている、その動きを牽引しているのはモバイルコンピューティングのiPhoneモデルの台頭だ、消費者も自分でスクリーン開けるよりスクリーンの方から歩いてくるアプリの方が生活にフィットするし、企業も金儲けはクローズドな方がやり易いので、当分この傾向は収まりそうもない、と言うんですね。

記事にはこうもあります。

Webもとどのつまりは、IPとTCPプロトコルを使ってパケットをあちこち運び回る、インターネット上に数多あるアプリケーションのひとつに過ぎない。そのアーキテクチャこそが革命なのだ ―その上に開発された個々のアプリではなくね。今あなたがブラウザで見るコンテンツ(大体は80番ポートでHTTPプロトコルを介して配信されるHTMLデータ)はインターネット上のトラフィックの4分の1に満たない。...しかもまだ縮小傾向にある。

果たしてそうかな? 

この手のトレンド批評は数のマジックということもあるので、いったん比率の推移から目を離し、トラフィック全体の増減を見てみましょうかね...。BoingBoingのロブ・ベスキッツァ(Rob Beschizza)記者によると、

1995年から2006年には全ウェブトラフィックは月10テラバイトから100万テラバイト(=1エクサバイト)に増えた。シスコ(ワイヤードが予想に使ったのと同じソース)によると、2005年から2010年にかけて、全インターネットトラフィックは約1エクサバイトから7エクサバイトに増えたそうだ。

同記者がこれをワイヤードのグラフにマッシュアップして作ったアバウトなグラフが、これ。

 

また「ウェブは死んだ」そうです 2

「縮小」どころか、みんな仲良く増えてますよ! 

そもそも使用帯域数でトラフィックをはかるというのも無理あるけど!

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それにしても立派なiPadアプリを出してこの潮流を牽引しているワイヤードが、ウェブの死を嘆くというのもヘンな話ですよね...。記事には「アナログのドル札がデジタル化した途端ペニー硬貨になってしまう。そんな空洞化の形勢も、市場が成熟すれば企業も逆転できるだろうと言われてきた。が、残念ながらそれはまだウェブではほとんど起こっていないし、トンネルの先に光が見えない状況だ」とあるわけで、そうする以外ないんでしょうけどね...。

オープンで、誰でもフリー(自由、無料)に使えるウェブが水際を包囲されつつあるのは本当です。でも、こういう潮流を語る上で避けて通れないのが今だと、ネット中立性原則無効化の動きと、あとは、革新的なのだけどデータ使用量が大きいサービスがバンド幅の壁のせいで頭打ちになって、代わりにケーブル会社のVODやISPが好むコンテンツなど箱に囲われたサービスにユーザーが追いやられている話。それが記事ではすっぽり抜けてるのが気になります。

コムキャストがユーザーの月極めデータ使用上限にNBCのコンテンツの分は含めないとか(コムキャストはNBCを半分所有してるので)、ベライゾンがVimeoよりYouTubeの配信をスピードアップしたりとか、僕はむしろそっちが心配。こういう問題はハードウェアvs.ソフトウェアの構図で見ることもできます。ハードがぐじゃぐじゃだと、ソフトもそうなっちゃうんですよね...。

こんな風にウェブの将来を憂えるのには、それなりの理由があることはあるんです。けど、素晴らしいアプリでウェブの将来が脅かされるかどうかは、わかんないなぁ。今のところアプリはオープンウェブでできないことをやってるわけで(特に携帯端末)、それがウェブと互角になったところで(なるかどうかも分からないけど)、心配するかどうか相談してもいいんじゃないでしょうか...。

僕が好きなiPhoneアプリは今だにSafariです。メディア企業にひと言と言われても、「もっと良いサイト作ってね!」というぐらいだなぁ。あと、そうそう、アプリと言えばクリス(編集長)にお願いがひとつ。ちゃんと僕、死んだ木(紙)のワイヤードは購読してるので、iPadアプリ買わなくても動画観れるようにしてもらえませんか...全額二度払わなくても...?

[WiredBoingBoing]

matt buchanan(原文/satomi)