【独占!】ジョブズが建てる家

2010.09.29 18:00
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図面もホレこのように!

ジョブズが1984年の大昔に買って荒れ放題となっていた歴史建造物「ジャックリング邸」を取り壊し、念願叶って新しい家を建てる運びとなりました。

ジャックリング邸は元オーナーが州・地元保存会に働き掛けて修復・保存を求める運動を展開したおかげで、かれこれ6年近くも取り壊しが凍結となっています。その間、ジョブズは新築・改築にかかるコストの比較、環境アセス、法廷のカンフーバトルを展開してきたわけですが、ようやく許可が下りブルドーザーで潰す日を迎えたというわけですね。


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跡地に建てるのは総工費845万ドル(7億円強)の戸建ての家。デザインは「人間の創造物の礎を成す魂」とまで言う人が建てる家って、どういう家なのかな? と興味津々ですが、実物は期待通りでもあり、人によっては拍子抜けかも。

その前に少しだけ歴史をおさらい。

Jackling House(ジャックリング邸)はAppleスティーブ・ジョブズCEOがMacを売り出した頃に高級住宅街ウッドサイドに買った家です。AppleInsider拙訳)が去年4月に今の荒れ放題な家の中の写真を紹介しています。

スパニッシュコロニアル様式を西海岸一帯に広めた建築家ジョージ・ワシントン・スミスが1926年、銅鉱山の大物実業家ダニエル・ジャックリングの私邸として設計したもので、全14室+バスルーム10室という広壮な構え。

ここにジョブズは10年間住んでからパロアルトの小さな家に越し、ここは一時人に貸していたのですが、空き家の状態が10年続き、ジョブズは2001年に建て替えのため取り壊し許可の申請を行います。で、いったんは町から許可が下りたのに、歴史建造物保存運動の市民団体「Uphold Our Heritage」が議会とジョブズを訴え、2004年には許可撤回に! その後は未来を生きるテックCEOと過去に生きる団体との間で醜い法廷の争いが続いていたのでありました。

じゃあ、新しい家はどんな豪邸なのよ? ―というと、これがそんなかけ離れて違うわけじゃなくて、サイズは今の屋敷のざっと3分の1(4910平方フィート)。ビリオネアの水準抜きに見ても、ほんとに実利主体の家なんですよ。

ウッドサイド町議会に提出された初期デザインの図面を入手しましたので、ご覧ください。
 

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どうでしょう? ガラスと鉄筋のハイテクなチャペルとか豪邸と言うよりは、ちっこい隠れ家の佇まい...。6エーカーの広大な敷地には自生の植物を植え(今の家もそうだけど)、3台収容の簡素なガレージ、窓とデッキがふんだんにある全5ベッドルームの家を建て、石の散歩道をこしらえて...なんか野菜畑までありますよ? すべてに無駄がなく整然としてプラグマティック。しかるべきものがしかるべきところにある家ですよね。

敷地こそ一緒ですが、ジョージ・ワシントン・スミスが設計した現ジャックリング邸の絢爛豪華なところはすっかり影を潜めています。今ベッドルーム8室とバスルーム9.5室ある母屋を取り壊した跡地には、その半分のサイズの居住・仕事スペースがあるだけ。住み込みのお抱え運転手の離れ、料理人の離れもなければ、テニスコートもなし。

この前の道をちょこっと行った先にはオラクルの友だちラリー・エリソンの家があるんですが、あっちなんて封建時代の日本家屋がテーマの7000万ドルの豪邸ですよ? あちらが将軍の御殿なら、こちらは坊さんの家みたいです(バフェット信者の坊さんじゃないけど)。

「この建築プランには、資産家にしては不自然なほど切り詰めているところが如実に出ていますよ」と語るのは、甲羅占い師...ではなく、米テキサス州オースティンの建築事務所「Sentient Architecture」の経営パートナーChristopher Travisさん。彼は周辺の建築環境にどう人が反応するか予測するソフトウェアを開発するスタートアップの創業者でもあります。

「こういう類いのことが起こるのは、クライアントが建築家になるべく余計なものがない実用重視のものを作るよう、わざわざ指示を与えた場合だけです」、「放っとくと、どうしても誰もが想像する豪邸らしい豪邸(McMansionともいうべき)になっちゃいますから。僕が思うに、この図面はジョブズがプレーンでシンプルなものを具体的に求めたから、結果としてこうなったんだと思いますよ。...ほとんど禅ですよね。どことなく東洋のシンプリシティ(わびさび)が感じられます」

シンプルなのもそのはず。ジョブズ邸の設計には、あのアップルストアの有名どころをいくつか手がけたボーリン・シウィンスキー・ジャクソン(Bohlin Cywinski Jackson)も加わってるんですねー。たぶんアイディアの出処は彼かもですね。

もっとも、この図面は最終版じゃなくて、ジャックリング邸の修復にかかる費用と取り壊して新しい家を建てるのにかかる費用(これは1375万ドルvs850万ドルで修復する方が高い。原文は逆になってますが)を具体的金額で比べる書類が法的合意締結に必要だったので提出した図面です。ラフな資料ではありますが、アップルのリーダーの持つ美的好みとパーソナリティーの一端が伺えるかと。やっぱり家は人が持てるものの中で最もプライベートなところが出る所有物ですからね。増してや神よりもお金が自由にできる人なら予算の制約もないわけですし。

試しに環境心理学者Sally Augustinさんにも図面を見せてみました。建築プロセスに心理学的配慮を盛り込むよう個人・法人相手にコンサルティングを行っている方です。

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「これらの図面から受ける印象は...そうですね、スティーブ・ジョブズもご家族もわざわざ外に出て誰かに何か証明しなくても、自分の肌の中の自分(素のままの自分)にとても満足しているんだなあ、ということですね」、「彼らは自分たちが家に必要なものは何か、自分たちでじっくり吟味して、それをそのまま建ててもらうんです」

デザイン全体を見ると、新邸宅は直線に支配されています。これはAugustinさんが言うには、かなり強いコントロール欲の現れなんだそうな。あともうひとつ彼女が気付いたのは、必要なものと必要じゃないものの選別がほぼ超自然的と言ってもいいほど吟味されている点です。

「必要なものを慎重に吟味する姿勢は、ベッドルームのある棟(最初の図面)のバスルーム ―トイレが左右2つ+洗面台―  が共有になってるところにも出てますね。このデザインはとっても効率的なのです。各部屋にバスルームを備えるよりずっと経済的なんですよ」(←てか、1個1個の部屋にトイレとシャワーが別についてんのなんてアメリカの金持ちぐらいだっつーねん!)

[ジョブズが建てる家の図面]


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効率的かつ経済的なスペースの使い方。飽くなき実用性の追求。虚飾を排した独創的デザイン。なんかどっかで聞き覚えありますよね? そうです、アップルのデザイン原理(クリーンでタイト、無用なものが無いデザイン)。最近は建築・デザイン会社の間でもこの原理を応用する動きもありますが、そんな中、スティーブ・ジョブズは「家のiPhone」をデザインしていたんですねーはいー。

これについてはTravisさんも同意見で、この初期プランから彼が感じるのは、プライバシーと自然な佇まい、仕事が好きな男(この図面には女性的なものがない)のために建てる家だ、ということなのだとか。特に仕事、ね。

「機能的。娯楽のためにデザインされた家じゃなくて、自宅兼職場という環境です」、「仕事が好きな人ですね」(Travisさん)。人の注目が要らない人物だということは、質素な造りと家の配置にも現れています。

「欧州中を進軍して渡るパットン将軍じゃないですね。今ある環境に対し、やさしくあろうとしている。家を取り壊すにしても慎重に壊してもらいたがる。とても内省的な生き方の人かと。彼は外で起こってることに自分の中で起こってることを掻き乱されたくないんですよ」


見積りでは、取り壊しから新邸宅完成までにかかる工期は22ヶ月。最終的にどこまでこの図面通り実現するかは分かりません。着工前にジョブズからはもう1本、プランの詳細が公開される見通しですからね。

それにしてもジョブズもこのジャックリング邸にはだいぶ悩まされましたね。古い屋敷はもう懲り懲り。当分買わないでしょうね。


Bryan Gardiner(原文/satomi)
 

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