指の長さでがんの可能性がわかる!? 握力や生まれ順では?

指の長さでがんの可能性がわかる!? 握力や生まれ順では? 1

まるで都市伝説みたいな話が、研究によって証明されつつあります。

昨今のコンピューターパワーを使った研究では、従来のようなわかりやすい健康リスクだけでなく、それ以上のものが見えるようになってきました。新たな研究では、指の長さ握力歯周病の有無までもが、がんや長寿、心臓病の予測に使える要素となる可能性があることが示唆されています。

 そういった研究は統計的手法に基づいてはいるのですが、全てについて同じように信頼できるわけではありません。ジョージ・メイソン大学の数学者であり、さまざまな統計情報を扱うSTATS.orgのボランティアでもあるレベッカ・ゴールディンさんは次のように話しています。

「巨大な情報データベースを使ってあれこれ試してみれば、面白そうな結果を出すのは簡単です。分析結果はポンと出てくるのですが、まったくの偶然による、出まかせの結果であることもあるのです。」とゴールディンさんは語ります。「ある発見が公表されると、第三者がそれは真実でないと指摘するのも今や非常によくあることです。」

医療データベースを分析して結果を出すことは比較的容易なため、レビューが行われるよりもペースが早くなっています。臨床試験ジャーナルだけでも、入念に行われた研究が1日あたり75件も発表されていますが、これらのレビューは11件にとどまっています。それでも、統計的な精査や因果関係の検証のために立ち上がる人もいます。

以下では、そんな研究から発見された、一見不思議なんだけど信頼できる健康リスクをご紹介します。

・指の長さ

少なくともふたつの遺伝子HoxAHoxD)が子宮における精巣の発達を担っていて、精巣ではテストステロンが作り出されます。が、これらの遺伝子は手の発達も支配しています。とくに人差し指薬指です。

この発見によって、テストステロンに関するおかしな仮説が巻き起こりました。たとえば、人差し指と薬指の長さの比によって、性的に健康かどうかや試験における能力、性格や運動能力などがわかるというものでした。

ほとんどの仮説は有意ではありませんでしたが、British Journal of Cancerに掲載された以下の研究によれば、指の長さと前立腺がんとは明らかに強い関係があるそうです。その内容は、もし人差し指が薬指より長ければ、前立腺がんになる可能性が低いというものです。

「奇妙なようですが、あてずっぽうではありません」と話すのは、ロンドンのがん研究協会(Institute for Cancer Research、ICR)のがん遺伝子学者で、上記研究の共著者であるロザリンド・イールズさんです。

イールズさんとそのチームでは、前立腺がん患者1500人と、無作為に選んだ人3000人を比較しました。家族健康歴やその他の要因を無視するとと、60才以上の男性で人差し指が薬指より長い人では、前立腺がんになる確率が平均して33パーセント低いという結果が出ました。さらにそれより若い年齢層では、人差し指が長い人は前立腺がんのリスクが87パーセントも低いことがわかりました。

指の長さと前立腺がんの関連については、他の集団でも検証を行わないとより意味のある評価はできません。が、ゴールディンさんによれば「(指の長さのチェックなら)迅速にでき、非侵襲性(訳注:人体に変化を起こさない)なので、検証してみる価値はあるでしょう」とのことです。

ただ、ICRのスポークスパーソンで分子遺伝子学者のエリザベス・ラプリーさんは「手に対するスクリーニング検査がどの程度有効かを判断するには、まだまだ時期尚早です」とくぎを刺しています。「強いて言えば、この研究は前立腺がんがどのように始まり、テストステロンががんの成長に対し大きな役割を担っているかもしれないということを理解するためには有用です。」

・握力

25年間で45歳から68歳の男性6000人を調査した研究によると、握力はその人が障害を持たずに生きられるかどうかを予測する際にもっとも使える要素だそうです。握力がいちばん弱かった人は、いちばん強かった人の2倍、障害を持つ確率が高かったのです。またより高齢の男女を対象とした別の研究では、握力が強いことと長命であることは相関していたそうです。

ただし相関関係は、「握力が強いから、長生きできた」という因果関係ではありません。長生きするためにいちばん良いのは、これまでの膨大な研究を総合すると、よく食べ、定期的に運動し、喫煙のような有害な習慣を避けることです。

・歯みがき

歯と歯の間が汚れていても、病気とは関係ない...という気がしますが、研究に次ぐ研究の結果、口中の慢性感染症(いわゆる歯周病)は、冠性心疾患のような循環器系の病気のリスクを高くすることがわかっています。

口の中のバクテリアが歯ぐきから血の中に入っていって、動脈を詰まらせてしまうのかもしれません。また、そのような慢性感染による炎症は、心臓発作の原因ともなります

・旅行

旅行は楽しいものですが、皮膚がんのリスクを高める可能性があります。

ラプリーさんによれば、イギリスが1970年代に経済回復に向かう中、イギリス人たちは海外旅行を楽しんだそうです。「その多くはスペインのビーチを訪れ、太陽の下で長く過ごしました」とラプリーさんは言っています。「その年代において、黒色腫の比率が高まっているのがわかっています。」

・生まれた順序

最初に生まれた男の子は、相対的に精巣がんにかかりやすい可能性があります。

「さまざまな研究において、第一子はより高いレベルのエストロゲンにさらされることが示唆されています。エストロゲンは精巣がんのリスクを高める物質です。が、これについては決定的にはまだ証明されていないのです。」とラプリーさんは語ります。

過去40年間で精巣がんは倍増しているのですが、その原因はエストロゲンと同様の化学物質ではないかと見られています。エストロゲンの類似物質は、たとえば農薬などを介して食料や飲料水に入り込んでいるのではないかと考えられます。

また、早く生まれることの健康リスクでもっとも高いものは小児白血病です。これも先に生まれた子供ほど多く見られ、社会経済的地位とも関連があるようです。ラプリーさんは免疫システムが鍛えられているかどうかも一部関わっているのではないかと見ています。

「小児白血病のリスクには、ウイルスや風邪、バクテリアとの接触と関連があると示唆されています。」とラプリーさんは言います。最初に生まれた子供には兄弟がいないため、そうしたウイルスなどとの接触の機会が少なくなります。ラプリーさんによれば、「保育所などに早い時期から通っている子供では、家にいる子供より小児白血病になる可能性が低い」そうです。

データベースを使った医学研究を評価するにあたって重要なのは、ゴールディンさんによれば、大きなサンプルサイズ、提案される要因、確率の計算方法、外的な影響、そして他の仮説への言及などを求めることです。が、健康リスクを客観的に評価することがまずもっとも大事なことだと考えられます。

「知ることがどの程度意味があるかわからない場合でも、薬はたくさんあるのです」ゴールディンさんは言います。「たとえば100万人に1人のリスクは、2倍にしたって100万人に2人です。こうした研究が病気の治療方法の判断に何か非常に大きなインパクトを与えるものでない限り、意義を見出すのは難しいのです。」

Image: Flickr/EUSKALANATO

Dave Mosher - Wired原文/miho)