Apple新導入のコンテンツ定期購読サービスは不当?

2011.02.16 11:30
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雑誌出版業界が期待し、恐れていたものが、ついに来ましたね。

Appleが今月創刊iPadマガジン『The Daily』と同じコンテンツ定期購読モデルを今日(15日)、iTunes App Storeの全パブリッシャーに解放しました。今後利用者は1号1号ダウンロードしなくても、新聞・雑誌・動画・楽曲等のアプリ内課金APIを使って新刊を楽々ダウンロードできるようになります。

利用規約もフェアに思えます。パブリッシャーはどれでも好きな購読メソッドをキープできるんじゃないでしょうか。スティーブ・ジョブズCEOはこう話していますからね。

我々の哲学はシンプルだ--Appleがアプリに新規購読者を紹介すればAppleに売上げの30%の取り分が生じ、パブリッシャーが既存・新規購読者をアプリに連れてくればパブリッシャーが売上げの100%をキープし、Appleの取り分はゼロとなる。我々が求める条件は、パブリッシャーがアプリ外で購読サービスを提供する場合は、それと同等(かそれ以上の)サービスをアプリ内でも提供し、カスタマーがアプリ内でワンクリックでそれを購読できるようにしなくてはならない、ということだけだ。

要するに、サイトからNYタイムズを定期購読したら料金は丸々NYタイムズに行くんだけど、iPadで購読ボタンを押して定期購読したらグレイ・レディー(NYタイムズの愛称)の懐には70%しか残らないってことですね。「それはやり過ぎでしょ」と感じるパブリッシャーがほとんどかもしれないけど(ルパード・マードックは別として)、オフライン販売の手数料課金モデルとやってることは同じですからね。

問題は「iPadとAndroidタブレットの間で出る利益差にパブリッシャーがどう対処していくのか?」。だってAndroidタブレットから購読してもらったら取り分100%で、iPadから購読されると取り分たった70%ですからね。その差額分の穴を埋めるためiOS対応版の料金を割高に設定すると、消費者は自分がこっちのガジェット選んでしまったばっかりに...と恨めしく感じるだろうし(訳註:どっちみちジョブズは「同等かそれ以上」と断っているので、他のアプリより高くは設定できない取り決めですけどね)。

NYタイムズを30%安く買いたいという、たったそれだけのためにAndroidタブレットに乗り換える人がいるとも思えないですけどね。新聞離れも激しい今日び。ニューズの「The Daily」と同じ料金でNYタイムズ定期購読したがる人は多いだろうけど...。

まーしかし、定期購読が誰でも使えるようになったのは何よりですね。雑誌も新聞も漫画もデジタルで読みたいのは山々なんだけど、漫画『Marvel』1巻買うたびに1ドル99セントも払いたくないですもん。それだったら紙の方が安い! みんな考えること一緒だと思いますよ。10分の娯楽のためにそんなにお金出しませんよね。定期購読の料金体系(単品合計よりグンと安い)が適用になれば、今の数千人という単位から数百万人に読者が一挙に増えるはず。

これを契機に読者には求めやすい価格、パブリッシャーには健全な成長の下地ができるといいですね。

以上の原稿公開後、気になる新情報が入ってきました。
 


パブリッシャーに送られたメモがDigital Dailyに出たんですけど、それによるとこのアプリ内定期購読APIは全アプリに利用が義務付けられているようなのです(マガジンのサイトに飛ぶリンクはアプリから外さなきゃいけない)。となると話は全然違ってきますね。

パブリッシャーはアプリ外で購読サービスを販売すれば利益の100%はキープできます。が、それでもAppleのアプリ内購読は必ず使わなきゃダメで、使わないとApp Storeから追放されちゃうんだそうな。「App Storeにアプリが残るよう、コンテンツ購入用にIn App Purchase API(アプリ内購入API)を採用したアップデートを2011年6月30日までにご提出ください」とありますからね...これって定期購読を使わないアプリも全員導入なんだろか...。

コンテンツ配信でAppleのサーバーを使う人に課金するのは構わないけど、NetflixやAmazonは自社ネットワークからコンテンツ配信しているわけで、そういう会社にまでアプリから購読ボタン押したからって紹介料を課金するのはどうなんでしょう...理解できません。もしこれが本当なら合理的でも公正でもないですよ...。

(訳註:出版社や法律の専門家からは反トラスト法違反の声もあがってますが、そこまでいくにはまだシェアが少し足りないような...。新ルール適用で影響をモロにかぶるのはアマゾンでしょうね。Digital Dailyの読者さんが「NY Times for KindleがKindle for Androidにはダウンロードできるのに、Kindle for iPhoneにはダウンロードできなくなってる...新規約と関係あんのかな?」と書いてます。どうなることやら...)


リリース(UPDATE:日本語版に差し替えます);

Apple、App Storeでサブスクリプションを開始

2011年2月16日、Appleは本日、App Storeで雑誌、新聞、ビデオ、音楽などのコンテンツ系アプリケーションを配信する全てのパブリッシャーを対象とする新しいサブスクリプション(購読)サービスを発表しました。これは最近、News Corpの「The Daily」アプリケーションに対してAppleが提供した画期的なデジタルサブスクリプション課金サービスと同じものです。

App Store内で購入されるサブスクリプションは、これまで何十億のアプリケーションの購入とIn-App Purchase(アプリケーション内課金)に利用されてきたものと同じApp Storeの課金システムとを通じて販売されます。パブリッシャーは価格とサブスクリプションの継続期間(週、月、隔月、三ヶ月、半年、一年)を設定します。購読者はサブスクリプションの継続期間をワンクリックで選択すると、その期間に応じて自動的に請求が行われます。

購読者は自分のアカウントページで購読中のサブスクリプションをまとめて確認・管理することが可能で、サブスクリプションの自動継続をキャンセルすることもできます。このサブスクリプションに関わる支払い手続きはすべてAppleが処理し、現在のIn-App Purchaseと同様、30%を得ます。

「私たちの考えはシンプルです。─Appleが新しい購読者をアプリケーションに招き入れた場合、Appleは売上の30%を得て、パブリッシャー自身が既存もしくは新規の購読者をアプリケーションに招き入れた場合には、パブリッシャーが売上げの100%を手にし、Appleの取り分はゼロになるというものです。パブリッシャーがアプリケーション以外の場所でサブスクリプションを提供する場合には、外部での提供条件と同じ、もしくはより有利な条件のサブスクリプションをアプリケーション内部でも提供し、購読者がアプリケーション内で、ワンクリックで簡単にサブスクリプションを購入できるようにして頂きたいと考えています。
Appleではこの画期的なサブスクリプションサービスが、パブリッシャーの皆様のコンテンツをiPad、iPod touch、iPhoneに向けてより広くデジタルで提供するまったく新しい機会となり、新規および既存の購読者の皆様にも喜んでいただけるものと確信しています。」と、AppleのCEO(最高経営責任者)、スティーブ・ジョブズは述べています。

自社のアプリケーションにAppleが提供するサブスクリプションサービスを採用するパブリッシャーは、アプリケーションの外でデジタル購読者を獲得する他の手法を活用することもできます。例えば、パブリッシャーのウェブサイトでデジタルサブスクリプションを販売したり、既存の購読者に対して無料購読を提供するなどです。こうしたアプリケーション外の取引についてはAppleは関与しないため、売り上げの分配も発生せず、購読者の情報をAppleとやり取りすることもありません。パブリッシャーは、アプリケーション以外の場所で契約した購読者に対しては、アプリケーション内に独自の認証プロセスを用意する必要があります。

しかしながら、パブリッシャーがデジタルサブスクリプションをアプリケーション以外の場所でも販売することを選んだ場合には、それと同じサブスクリプションを同価格またはそれ以下の価格で、アプリケーション内からのサブスクリプションを希望する購読者に対しても提供する必要があります。

さらに、今後は、購読者をアプリケーションの外部に誘導してコンテンツやサブスクリプションを購入させるようにするリンク(ウェブサイトなど)を、パブリッシャーがアプリケーション内に設置することはできません。

App Storeを通じて行われる全ての取引において、顧客のプライバシーを守ることは、非常に重要な事項です。App Storeを通じてサブスクリプションを購入するお客様は購読時に、自分の名前、メールアドレス、郵便番号をパブリッシャーに提供するか否かを選択することができます。
これらの個人情報の利用方法はパブリッシャーのプライバシーポリシーによって管理され、Appleによるものではありません。パブリッシャーはApp Storeの顧客に付加的な情報の提供を求めることも可能ですが、その際には顧客に明確な選択権が与えられ、そのようにしてパブリッシャーに提供された情報は、Appleではなく、パブリッシャーのプライバシーポリシーによって運用されると事前に伝えられることが前提になります。

革新的なApp Storeは世界90カ国でiPhone、iPod touchそしてiPadのユーザに向けて35万種類以上のアプリケーションを提供しており、iPad用のネイティブアプリケーションの数も6万種類以上におよんでいます。累計出荷台数1億6000万台以上のiOSデバイスを使う世界中のユーザはゲーム、ビジネス、ニュース、スポーツ、健康、リファレンスそして旅行を含む20のカテゴリーの広い範囲からアプリケーションを選ぶことができます。


Jesus Diaz(原文/satomi)
 

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