Googleは10%なのに30%取るなんて...AppleのApp Store購読モデルに反発続々

Googleは10%なのに30%取るなんて...AppleのApp Store購読モデルに反発続々 1

iPadにデジタル購読きた! やった! これで雑誌New YorkerもPopSciもワンクリックで定期購読できるし、毎号魔法のように自動配信されるし、アプリ開いて毎号購入しなくていいし、ゴタゴタもイライラもなし。紙マガジンの定購更新もしないでこの瞬間を待っていたー! 

...と虹色のことばかりじゃないようで...購読サービス開始のプレスリリースには、こんな見落とせないポイントが2つあるんです。

パブリッシャーがデジタルサブスクリプションをアプリケーション以外の場所でも販売することを選んだ場合には、それと同じサブスクリプションを同価格またはそれ以下の価格で、アプリケーション内からのサブスクリプションを希望する購読者に対しても提供する必要があります。

さらに、今後は、購読者をアプリケーションの外部に誘導してコンテンツやサブスクリプションを購入させるようにするリンク(ウェブサイトなど)を、パブリッシャーがアプリケーション内に設置することはできません。

あとこれ。

Appleは本日、App Storeで雑誌、新聞、ビデオ、音楽などのコンテンツ系アプリケーションを配信する全てのパブリッシャーを対象とする新しいサブスクリプション(購読)サービスを発表しました。

ここで言わんとしているのは結構危ないことなのです。3つあります。

1)企業は自社のサービスやコンテンツの定期購読サービスをApp Storeの外で売る場合にも、Apple新導入の購読サービスを使って同じ値段かもっと安い値段でそれを提供しないといけない。

2)この購読ルールは新聞・雑誌だけでなく―楽曲・動画サービス、例えば楽曲ストリーミングのRdioやRhapsody、動画ストリーミングのNetflix、Hulu Plusなどにも適用となる。

3)サイトのポップアップ窓やウェブストアへの誘導リンクを通してコンテンツを売るアプリ―例えばアマゾンのKindleやB&NのNook―は、それができなくなる。iPhoneやiPad対応のアプリを持っているアマゾンや「他の書店」にも新ルールが適用になる点は、リリースとは別にApple広報が認めました。Appleが数週間前にSonyのReaderアプリをブロックした時にその兆しはありましたが。

アプリ内購読の度に30%の手数料が生まれてしまうんです。これって、iPadをスペシャルな端末にしたものを提供する人たちをAppleが食い物にしているってことになりませんかね...。翌日グーグルがこれに対抗して発表したオンライン決済サービス「One Pass」は手数料10%ですから...どうしても割高感が...。

ユーザーの決済情報もユーザーがうんと言わないとAppleからパブリッシャーには流れてきません(うんという物好きはいない)から、マーケティングの手足をもがれる格好となります。

Appleが開発者に送ったメモには「App Storeにアプリを残しておけるよう、コンテンツ購入用にIn App Purchase API(アプリ内購入API)を採用したアップデートを2011年6月30日までにご提出ください」とありますから、全員6月30日までに新規約に従わないといけません。

実質、iPadでコンテンツを買う一番楽な道は、これでApple決済となるわけです。アップルは消費者に選ぶ機会を平等に提供できるように配慮した、と言ってます。外のサイトから購読なり予約をしたものについてはパブリッシャーの利益の取り分は100%だ、と。フェアに見えるけど、アプリ内で購読サービスの提供が義務付けられてるわけだし、アプリからサイトにはコンテンツ購読・購入用のリンクさえ置けない―これでは消費者にAかBを選べと言ってることにならないですよね。

iPadに購読サービスを置いてもらいたいパブリッシャーはAppleの規則にNOは言えませんしね(みんな置きたいに決まってる! 現にPopSciは、アプリ外の購読サービスの準備もそこそこにiPad購読をライブにしちゃいました...それも1年15ドルの激安価格)。

でも、ちょっと考えてみて欲しいんですけど、Rhapsody(NYタイムズでもRdioでもなんでもいいけど)を一度も使ったことなくて、アプリを端末にダウンロードしたとしますよね。アプリを開いたら購読が必要だった...とします。自分だったら;

A)その端末で購読しちゃって、好きなものをその場でゲットしたい?

B)帰るまで我慢して、コンピュータから購読する?

ふつう、B選ぶ人なんかいませんよね? コンピュータ開いて登録する手間が余分にかかるぶん、サイトにくるお客様には値を下げて誘導リンクを貼る、なんてこともパブリッシャーはできないんですから(それはAppleに禁じられてる)。「NYタイムズに100%渡したい」という鋼の意志の人でもない限り購読はまずAppleの決済を通ってしまうでしょう。でも誰もそんな気にしないだろうし、違いが分かる人はもっと少ないと思うんですよね。

 

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新聞社はまさに映画『Saw』みたいなサバイバルの罠に囚われてるわけですが、その一方でAppleはAmazonいじめです。iPadアプリからアマゾンのストアに直接飛んで本を買うことはできません。仮にKindle書籍のアプリ内購入をAppleが許す場合は、全部Appleの決済システムを通さなきゃだめ...つまりiPad&iPhoneでKindleブックが売れる度ごとにAmazonはAppleに30%持ってかれるんです。いくら儲かるのかわかりませんが、Amazonの利益はこれで消えちゃうんじゃ? だけどAmazonは「市場のどんな端末でも本が読める」という大前提を破るわけにはいかないので、iOSのエコシステムからおいそれ足を洗うこともできない。自社のエコシステムを構築する過程でAppleのiPadとエコシステムに対応したAmazonなのですが、まさかそれが人質になるとは...ゴ~ン。

NYタイムズやAmazonのような大企業に打撃になるだけ...と思っちゃいけません。サイトからiPhoneやiPadにテキスト拾ってきてオフラインで読めるようにする「Instapaper」はiOS対応端末のリーダーでは一番気に入ってるんですけど、あれ開発したMarco Armentも怒ってます...。Instapaperを他プラットフォーム(AndroidやWP7)向けに作ってOKにするプラン(月額1ドルで購読可)を発表した時は本当にワクワクでしたけど、あの彼の懐も寂しくなるんだろか...。

テキストの出版社の他にも影響は及びます。Rdio、Pandora、Rhapsodyなんかの楽曲サブスクリプションサービスにも平等に新ルールが適用された日にゃ(プレスリリースにはそうある)壊滅的打撃ですよね。RhapsodyのプレジデントJon Irwin氏はこう直球投げてます。「Appleの取り決めによれば、我々は音楽レーベル、出版社、アーティストに払うコンテンツ使用料とは別に売上げの30%をAppleに払わなくてはならないことになるが、これは経済的に受け入れ難い」―つまりAppleの新ルールではサービスの採算が合わないと言ってるんですね。

それはRhapsodyだけじゃないでしょう。動画配信Netflixの「Watch Instantly(今すぐ視聴)」ボタンも購読がマストだし、TVコンテンツ有料配信のHulu Plusもそう。購読料の30%をAppleに払ってもまだサービス続けていけるんでしょうか...?  何度も言うようですけど、アプリではAppleから買う、サイトから直接購入する、という2つの選択肢は提供できないんです...こんなの選択じゃないですよね。

Arment氏のツイートじゃないけど僕も「dick move」と言わざるを得ません。幸いRhapsodyは戦ってますよ。書簡の最後でIrwin氏はこう書いてます。「この最新の変化に対抗すべく、我々としても市場の仲間と共同でしかるべき法的手段かビジネスの対抗手段を固めていく所存だ」。今のご時世、Appleに反旗を翻すなんてクソ度胸ないとできません。気概に拍手。これはバトルになりそうですね...。

実際問題、Appleの新購読サービスは ―「ユーザーフレンドリー」というきらきらの包装紙にくるまってるからよく見えないけど― コンテンツプロバイダ全社とiPad&iPhoneユーザー全員の間に会社が無理やり割り込んで権力を奪い取る動きなんですよ。...それで? それで一向構わないんです。こういうエコシステムはそれで回ってるんですから。TwitterやFacebookにただ乗っかってるプロダクトやサービスを考えてみると分かると思うんですが、Appleは取るべきなんですね。ただ、iPadのエクスペリエンスを素晴らしいものにする支援をしてきてくれた人たちを潰してしまうほど沢山取るのはどうかなーと思うだけです。

Matt Buchanan(原文/satomi)