iPadキラーはなぜ値段でiPadに勝てないのか?

iPadキラーはなぜ値段でiPadに勝てないのか? 1

昨年1月にジョブズがiPadを発表したとき最大の衝撃は価格でした。

4万8800円

まさかそこまで安いとは誰も予想できなかったんですね。AppleはMacBookも1000ドル切らないし、それまでモバイル市場ではハイエンド路線でしたし、Appleのお偉いさんが投資家に何度も「500ドル切る値段じゃジャンクみたいな製品しか作れない」と言ってたのはなんだったのだ!...と。

でもiPadは500ドルで買えるけど、ジャンクじゃないし、今もこの分野ではベストセラーです。で、iPadキラーは軒並み価格ではiPadに勝てていないのが現状です。

iPadは一番安い16GBのWi-Fiモデルで500ドル(日本は4万8800円)、一番高い64GBの3G対応モデルで830ドル(8万1800円)。

これに対し、今年のAndroidタブレットの本命「Motorola Xoom」(気圧計も装備)はWi-Fiモデルが600ドル、3Gモデルが800ドルします。

iPad(10インチ)より小ぶりな7インチでは、HTC Flyerが700ドル前後、サムスンGalaxy Tabも契約抜きで600ドル、BlackBerry PlayBookでもiPad並みのプライスです。

webOS初のタブレット「HP TouchPad」もすごくいいんだけど、値段は報道によると700ドルとか。

どうしてもiPadのマジックナンバー、500ドルの壁は破れないんですね。どうして?

 

 あの価格競争力については、「アップルがフラッシュメモリを大量に買い占めちゃってるから」だとか、「CPU独自製造ライン持ってるから」だとかいろいろ言われてますが、「みんな一番大事なポイント見落としてるよ。考えてみれば当たり前のことなんだけど。アップルストアがあるから安くできるのさ」と書いているのはTech RepublicのJason Hiner記者です。

Appleストアは世界に300店舗以上。オンラインのApple Storeもあるので、Appleはお客様に直販できる体制が整っている、だから販売マージンを店に支払わなくて良いぶん安くできる、というわけ。

小売チェーンのBest Buy、Target、ウォルマート、アマゾンなどでも売ってますけど、どこも常に在庫は限られてるみたいだし、そちらはiPadを売るのが目的というより、市場シェアを確保し、商品PRのために置かせてもらってるんじゃ...というんですね。

「アップルは小売提携販売店経由のiPad販売で利益がほとんど出なくても、ストアやオンラインショップの直販で出る利幅が大きいのでチャラにできる。しかしモトローラ、HP、サムスンなどは小売店に卸して売って出る利益がすべてなのだ」と同記者。

まあ、Hiner記者は300店舗の従業員にかかる人件費を度外視してますし、理詰めの推理ですけど、確かに直営店には競合の製品置かなくていいし、小売網抱えてるアドバンテージは侮れませんよね。

無論、iPadのマジックナンバー(500ドル)を解読するには小売戦略だけじゃなく、パーツ1個1個の値段も勘定に入れないといけません。

その点、Appleは世界で最も垂直統合型の会社です。直営販売チェーンを営むだけでなく、ハードもソフトも全部社内でデザインしており、果てはデジタルコンテンツ販売ストア(iTunes) まで自社でやっています。

社内開発だから、知的所有権の使用にかかるライセンス料も払わなくてOKです。例えばiPad内蔵のA4プロセッサは(インテルやAMDやNvidiaじゃなく)Appleが開発・所有している技術がベースのものだし、OSもマイクロソフトやグーグルではなくアップルの独自OSですからね。

あのHPがTouchPadを作るのにPalmを買収したのは何故かわかります? マイクロソフト(今もって信用に足るモバイル戦略を打ち出せてない印象)への依存をやめ、インハウスにモバイルOSを抱えることで自社のモバイル事業の運命は自分でコントロールしたいと考えたからです。

また、iTunesのメディアプラットフォームでは、デジタルストア(App Store、iBooks、iTunes)で楽曲・動画が売れるたびに売上げの一部がAppleに落ちます。iBooksはまだアマゾンの足元にも及ばないけど、App StoreとiTunesはデジタルメディアストアの中では一番成功している例です。

iPadはパーツ全部足すとたぶん500ドル以上の価値はあると編集部では見ています(iSuppliなんかの部品見積りはR&Dその他の要素を勘定に入れていないのであまりアテにできない)。AppleがiPadの製造・販売にかかるコストを吸収できるのは、その後ろにこれを応援するデジタルコンテンツ販売のエコシステムが控えているし、価格をコントロールするあらゆる面に管理が行き届いているお陰でしょう。

つまりエコシステムとコントロール、これに尽きるのです。その点、他社はそこまで統合型ではないので500ドルはなかなか実現が難しい。販売戦略、デジタルコンテンツ市場、ハード&ソフトの技術開発...全部ですもんね。

「Appleはこの業界でホール・ウィジェットをつくる最後の会社だ」とジョブズは言いました。ホール・ウィジェット―つまりウィジェット(小型装置)を何から何まで全部つくる会社ですね。ライバル各社は今、iPadというウィジェット相手に苦戦を強いられているようです。

[TechRepublic]

Photo: Bryan Derballa/Wired.com

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*本稿は、1995年よりテクノロジー、科学、ギークカルチャーのニュースをお届けしハイブマインドを拡散しているWired.comのゲスト寄稿です。

Brian X. Chen - Wired(原文/satomi)