宇宙エレベーターってどうなってるの?

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「バベルの塔」なんて言う向きもありますが、着々と宇宙に向かってるみたいです!

人類が宇宙に飛び出すには、まず地球の重力の井戸から抜け出す必要があります。そのために現在できるのはロケットに乗ることですが、それにはものすごいエネルギーと資金がかかります。もし将来、惑星間(あるいは恒星間)を横断して生活するなら、手段としてロケットしかないのでは心もとないです。

そこで、各国の科学者や投資家のみなさんが集まって、宇宙エレベーターを作ろうとしてるんです。宇宙エレベーターは、格段に少ないエネルギー消費高さ約10万kmにまで達し、乗客を重力の井戸から脱出させてくれる乗り物です。

未来の通勤・通学に欠かせなくなるかもしれない宇宙エレベーターってどんなもので、今どんなことになってるんでしょうか?

・宇宙エレベーターとは?

宇宙エレベーターは、作りとしては意外にシンプルです。ものすごく強靭なリボン状の素材が、赤道海上に構築された可動基地から宇宙に向かって延びていて、宇宙側の端は静止軌道上にあるアンカーに接しています。そのリボンの上をクライマーが上って行き、人間や荷物を載せたカゴを運ぶのです。

宇宙エレベーターは貨物や人を重力の井戸から引き上げる仕組みであり、ロケットのように燃焼の力で押し出すのではありません。そのためエネルギー消費は少なく、運べる物資は多くなると期待されています。しかも一度作れば長く使える設備なので、1日に1回以上のペースで動かせるし、使い捨てされているロシアのソユーズに比べればはるかに低コストになります。

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・なぜ低エネルギーで低コストなの?

NASAによれば、スペースシャトルの発射1回ごとに4億5000万ドル(約375億円)かかっています。その多くは燃料と、燃料を地球から行って帰るのに必要な分積載するために使われます。でも宇宙エレベーターでは、ロケット燃料は必要ありません

How Stuff Worksによると、こんな仕組みです。

エレベーターは、アンカー上またはその近くにある自由電子レーザーシステムから動力を得ます。エレベーターにはおそらくガリウムアーセナイド(GaAs)でできた光電池が付いていて、レーザーから受け取った2.4メガワットのエネルギーは変換され、ニオブ合金の磁石を使ったDC電気モーターで使われます。

1ポンド(約454グラム)の荷物を運ぶコストはロケットだと1万ドル(約83万円)もかかります。でも、宇宙エレベーター計画を進めているグループでは、宇宙エレベーターによってそれを100ドル(約8300円)まで下げられると考えています。

さらに、ロケット燃料依存から脱することで、二酸化炭素排出量を削減できます。また、固形ロケット燃料に含まれる過塩素酸塩によって米国の飲用水が汚染されていることは、米国環境保護庁も確認しています。なので、宇宙エレベーター開発には、環境保護上の意義もあると言えそうです。

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・素材は何で作られるの?

宇宙エレベーターの最大の疑問は、地球からアンカーまで10万kmも延びるリボンをどうやって作るかでしょう。短く答えると、「今存在しない物質で、でも現在ナノスケール系技術の研究室などでできつつあるものを使う」です。

端的に言えば、必要なのは炭素原子を編む方法で、それができれば、軽くて柔軟性があって強靭な金属ができるのです。宇宙エレベーターにおいては、金属のリボンはほぼガイドとして存在するだけで、はしごとして使われるわけではありません。言い換えれば、大きな重量に耐え続ける必要はないのです。でも、強く引っ張られる状態や、風やその他地球上空や宇宙空間で起こりうる摩耗には耐えなくてはなりません。

そんなリボンのための物質を開発しようとしている企業LiftPortでは、カーボンナノチューブがそんな物質になると考えています。カーボンナノチューブは軽く、宇宙に運ぶのが容易だからです。以下はLiftPortによる解説です。

宇宙エレベーターは、既存の鉄より軽く強度のある物質、たとえばスペクトラやダイニーマ、ケブラーといった繊維や樹脂で作ることも可能かもしれません。ただ問題は、自分自身の重量をサポートするために必要になる質量です。強度60GPaでも、最初に延ばすリボンは複数のロケット発射が必要な質量になるでしょう。そのためのロケット発射は非常に高コストになります。さらに強度を減らせば、必要な質量は指数関数的に増えてしまいます。たとえばスペクトラでは100回を優に超えるロケット発射が必要になると考えられます。つまりここでは、経済面での問題になります。

もうひとつの問題は、宇宙側のアンカーを何で作るかということです。理想的には小惑星、または地球近傍にある岩塊などがいいでしょうが、現実的には何らかの人工のプラットフォームになりそうです。それなら、地球の周りのいろんなスペースジャンクをリサイクルして作る宇宙エレベータードックなんて、どうでしょう?

・誰が作ってるの?

これまでに宇宙エレベーターイベントのSpace Elevator Gamesが2回あり、発明家たちがエレベーターのクライマーとリボン構造のモデルを作って賞金獲得を目指しました。上の動画は、2006年のゲームで作られた小スケールバージョンの宇宙エレベーターです。

宇宙エレベーターのための新しい素材と方法を探索するカンファレンスを開いたり、発明家や投資家の表彰を行っている団体ISEC(International Space Elevator Conference)もあります。彼らはヨーロッパや日本、アメリカにある他の団体とも連携しています。日本では「日本宇宙エレベーター協会(JSEA)」が中心になっていますね。

また、Space Engineering and Science Instituteでは、宇宙エレベーターのデザインに関する年次カンファレンスを開いています(今年は米国マイクロソフトを会場に、8月に開かれます)。ありそうなことですがGoogleも宇宙エレベーター開発への投資に興味を示しており、数年前Google Earth blogでも、衛星画像上にコンセプチャルデザインの宇宙エレベーターをフィーチャーしたくらいです。

LiftPortのような企業では、リボンのための素材を開発しようとしています。またLaserMotive蛾を殺すレーザーも作っている会社です)では、クライマーに動力を与えるレーザーエネルギービームを作り出そうとしています。

・で、どんなSFで見られるの?

だいたい、宇宙エレベーターは破壊された姿で登場します。印象的だったのは、ゲーム『Halo 3:ODST』で悪役エイリアン集団・コヴナントが地球のモンバサにある宇宙エレベーターを壊しちゃったあたりです。なんでか、動いている宇宙エレベーターより、壊れてる方がそれっぽいです...。

キム・スタンリー・ロビンソンの小説『レッド・マーズ』では、火星の月と地球を結ぶ宇宙エレベーターの描写がありました。でも残念ながらそれも戦争で破壊されてしまって、数千マイルものカーボンが惑星の周りをぐるぐる回りながら燃えていくんです。もしくは、宇宙エレベーターを舞台にしたかっこいいチェイスシーンが、ケン・マクラウドの小説『Night Sessions』にあります。

宇宙エレベーターは、数ある夢の技術の中でも、SFより現実の方が進歩しているレアな存在です。ポップカルチャーにおいては、ジェットパックとかフライングカーの方が人気ですが、宇宙エレベーターの方がずっと実現性が高く、便利でもあります。多くの宇宙エレベータープロジェクトでは、20年以内に稼働プロトタイプを作ることを目標としています。

Top image by Michael Evans

Annalee Newitz(原文/miho)