原子力と福島原発について知っておくべき全てのこと

2011.03.16 16:30
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地震後、福島第一原子力発電所の状況は時々刻々変わっており、情報についていくのがやっとですよね。幸い事態の進展を追っている専門家や団体は無数にありますので、今回は現況を正確に把握する上で役立つ情報を集めてみました。


まず福島原発の構造・仕組みですけど、それはBBCの映像がわかりやすいです

炉心の基礎部材の解説は、ブロガーのJason Morganさんがマサチューセッツ工科大学(MIT)のリサーチ科学者Dr. Josef Oehmenに解説してもらいましたよ。全訳(pdf)

福島原子力発電所はいわゆる「沸騰水型軽水炉(Boiling Water Reactors)」、略して「BWR」です。 沸騰水型軽水炉は圧力釜のようなもの(URLがMITに移転後この文章は削除されてます)。核燃料で水を熱し、沸騰して蒸気が上がると、その蒸気がタービンを回し、タービンから電気が生まれ、発電後は蒸気を冷やして水に凝結させ、またその水を元の場所に戻して核燃料で熱するんですね。この圧力釜、稼働中の温度は258 °Cです。

核燃料は酸化ウラン。酸化ウランは融点が約3000 °Cという極めて高温のセラミックです。この燃料はペレット(レゴブロックぐらいのサイズのちっちゃなシリンダーを想像してみて)内で加工し、1本1本を融点2200 °Cのジルカロイと呼ばれるジルコニウム合金でできた長いチューブに入れて密封します。こうしてできたのが「燃料棒」と呼ばれるもの。

燃料棒は一緒にまとめてもっと大きなパッケージにし、こうしたパッケージを沢山、炉に入れます。このパッケージを全部合わせたものがいわゆる「炉心」です。


 

 
核反応プロセスはBoing Boingの解説が詳しいですよ。

核分裂反応の要はプロキシミティ(近寄せること)です。燃料棒の中では多くのウラン原子が分裂しながらぶつかり合っています。この燃料棒を燃料集合体の中にぎゅっと詰め込めばもっと多くの原子が互いに干渉するので、核反応でもっと沢山のエネルギーが生まれます。この燃料集合体を幾つかまとめて原子炉の炉心に入れると、またまた放出されるエネルギー量は高くなる、という具合。

プロキシミティはまた、制御された環境で行う核分裂反応と核爆弾の違いを分けるものでもあります。爆弾ではものすごいスピードで核反応が起こってエネルギーが放出されます。一方、原子力発電所ではそのプロセスを制御棒で遅らせているんですね。それは喩えて言うならJenga積み木の塔を2つ並べて間にボール紙を挟むようなもの。一方の塔が潰れてもバリアにぶつかるので、次の塔にはぶつからない、というわけ。

核分裂可能な全原子のうち、実際分裂が許されるのはほんの数個ですよ。それなら爆発ではなく、管理の手に負える範囲の量の熱エネルギーが得られ、水を沸騰させるのに使えるのです。


PopSciは核発電所に通常装備されている安全システムについて書いてます。

地震初期に、発電所では核分裂プロセスを自動でシャットダウンします。冷却装置には主発電機と予備の発電機の両方が備わっているので、普通は停止後も稼働できるんですが、今回は津波で発電所への電力供給が一掃され、メインの冷却装置が停止。さらにディーゼルの予備の発電システムも波で破壊されました。核分裂が止まっても、冷却装置は発電所を安全に保つ上で非常に欠かせないものです。

というのも、切ったばかりの燃料棒からも熱が出るし、核分裂反応で出る様々な副産物からも熱が出るので、原子炉の炉心にはまだ熱がだいぶ篭ってるんですね。ここで言う副産物には放射性ヨード、セシウムもあり、どちらも「崩壊熱(decay heat)」なるものを生みます。崩壊熱とは要するにものすごくゆっくり広がる余熱のこと。

従って「オフにした」後でも炉心を継続的に冷やさないと、それやこれやの熱が残ってて、下手するとメルトダウン(炉心融解)を来してしまうのです。


最悪メルトダウン(炉心溶融)が起こった場合どうなるか? 
以下の動画でアル・ジャジーラが解説しています。

関連:全炉心溶融の恐れ 抑制室爆発、原因は不明 2号機-北海道新聞(3/16 02:26)


NYタイムズは、自動遮断システムとメルトダウン(炉心溶融)の全容をインタラクティブなグラフィックスで解説。

ザ・アトランティックは「メルトダウン(炉心溶融)」という用語の意味をおさらいです。

当座の懸念は「メルトダウン(炉心溶融)」が日本の原子炉1基かそれ以上で発生するかどうかだが、潜在的な危険がよく理解できないひとつの理由は、専門家もマスコミもこの生まれつき禍々しい用語をなんらの説明も視座も抜きに無差別に使っていることにある。

原子炉の燃料棒が溶けると一口に言っても、溶ける度合いにはいろいろある。炉心の部分・全溶融の際に放射性物質が外気に逃げるのを防ぐため考えられた安全装置(障壁をつくる格納容器)にもいろいろなものがある。最後に、格納容器のバリアが破損する前に核の緊急事態沈静化のため発電所の作業員がとるステップも様々だ。

スリーマイル島原発事故では、原子炉のひとつで炉心の一部がメルトダウンしたが、大部分は発電所の格納容器内にとどまり、外に放射された放射線はほとんどなかった。チェルノブイリの惨事では、しかし、炉心溶融に続いて放射線が大量に外に放射された。ただし重要な違いは、障壁をつくる構造がスリーマイル島や日本の原子力発電所にはあるが、チェルノブイリ原子力発電所には無かったという点だ。

原発事故の規模を0-7の8段階で評価する国際原子力事象評価尺度(INES)によると、チェルノブイリは最高レベルの7で、あんな事故はあれ一度きりだ。スリーマイル島はレベル5(さらに広範な影響のある事故)。現在までのところ福島第一原子力発電所はレベル4(局地的影響のある事故)だが、これはもちろん事故発生初期の評価である。

(訳註:昨日までレベル5か6だと言っていたフランスは、今日レベル7と勧告しました。水曜の会見で東電が「1号機の燃料棒の70%、2号機は33%が損壊した」と発表しました)


New Scientistは被曝が健康に及ぼすリスクについて書いてます。これは日本のマスメディアの方が詳しい。

Brave New Climateは福島原子炉のデザインと一緒に「業界内部の極秘のソースから得た」事実経過をこのように伝えています。

おそらく事実経過はこうだったものと思われる。

a. 地震発生時、福島第一原子力発電所では原子炉1号機、2号機、3号機が稼働中だった。

b. 地震発生時、3基の原子炉すべてが稼動停止となり、制御棒が差し込まれる。

c. 崩壊熱除去のため冷却は継続した。

d. 稼動停止となった原子炉では崩壊熱が急激に下がる。3GWある原子炉熱出力は1秒で200MWの崩壊熱まで下がり、1時間後には50MWとなるものだが、無視できるレベルまで下がるまでには長い時間(3-6ヶ月!)がかかる。

e. 地震後1時間以内に津波来襲。1号機冷却装置の回路に電気を供給する主電源が失われる。

f. 津波でディーゼル発電機も故障したため、7-8時間はバックアップのバッテリーで冷却装置を稼働。

g. 他の緊急用ディーゼル発電機も持ち込んだものの、ポンプを稼働するに足る電力量を確保できなかった。

h. 冷却が停止した結果、燃料棒が2段階フローで冷却できなくなり(ここは沸騰水型軽水炉[Boiling Water Reactors])、結局は高温となって水蒸気と反応し、水素を生んでしまった(水素爆発)。


ギズのKyle VanHemert記者は、放射線漏れが実際どれぐらい酷いのか調べてくれました

原子炉のうちひとつに割れ目が入って全炉心溶融が起これば、ヨウ素131が空中と水中に急速に拡散し、出生異常、甲状腺癌その他の問題が起こる可能性が上がるかもしれないけど、医療関係者は目下のところ努めて楽観的に見ています。週末の段階で発電所の制御室内の放射レベルは平常時の1000倍に達したが、発電所周辺ではたった8倍でした。テキサス工科大学環境放射線研究センターのRon Chesser所長はどちらのレベルも人体には影響のないレベルだと言っています。人は宇宙の放射や不可避なソースから年間平均360 mRemの放射線を浴びています。まあ、それでも特にヨウ素131、ストロンチウム-90、セシウム-137は人体に自然に見られる物質を擬態するので要注意ですが。(訳註:水曜現在発電所と周辺地域は人体に有害なレベル...気をつけましょう)


Treehuggerは当たり前のことだけど、「原子力発電所が核爆弾みたいに爆発する可能性はない」と書いてます(追:詳報)。;

有り難いことに原子力発電所が原子力爆弾のように爆発しようったって、それは物理的に不可能なのですよ。そもそも素材が違うので。

核分裂型爆弾で使うのは高濃縮ウラン(90%以上に濃縮したU-235)かプルトニウム(Pu-239)です。原子力発電所で使うウランの濃度はたった5%前後(研究用のもっと小さな原子炉では20%の場合もありますけどね)。さらに、原子力発電所には核爆発に必要な他のメカニズムも備わっていません。(例えば爆縮や、超臨界質量に到達可能にするガンバレル型の組立構成もありません)


関連:福島原発で起きていること|高松聡のブログ


Adrian Covert(原文/satomi)
  

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