コックピットの窓が吹き飛び、機長の半身は機体の外に...でも、全員生還!

コックピットの窓が吹き飛び、機長の半身は機体の外に...でも、全員生還! 1

ぎりぎりの状態になりながら、最後まであきらめませんでした。

飛行機に乗ったとき、何らかの理由で減圧して酸素マスクが落ちてきても、すぐに重大な事故になるとは限りません。でも、機長の体がコックピットから半分飛び出してしまい、顔は「窓に(外側から)バンバン叩きつけられ、鼻や側頭部からは血が流れ出て」いる状態で、機体は「秒速80フィート(約24m)で急降下、オートパイロットも無線も停止している」としたら...?

それはまさに1990年6月10日、イギリス・バーミンガムからスペイン・マラガに向かうブリティッシュ・エアウェイズ5390便BAC 1-11が直面した事態でした。同機はティム・ランカスター機長の操縦のもと、81人の乗客を乗せて高度1万7000フィートを飛んでいました。

客室乗務員のナイジェル・オグデン氏がパイロットにお茶はいらないかを聞いてコックピットから出ようとしていたとき、爆発音が起こり、コックピットのドアが飛んで行きました爆発的減圧のために「客室全体が一瞬、霧がかかったようになり」「機体が急降下し始めた」ので、オグデン氏は爆弾がしかけられたのかと思いました。(後日、減圧の原因はフライトの27時間前に行われた窓ガラス交換の際、使われたネジのサイズが小さすぎたためだと判明しました。)

そしてオグデン氏の背後には、恐ろしい光景が広がっていました。

私がとっさにコックピットを振り返ると、フロントガラスが消えており、パイロットのティム(ランカスター機長)が窓から飛び出しかかっていました。ティムの上体はシートベルトを外れて機体の外側に吸い出されており、すでに足しか見えなくなっていました。

私は操縦輪に飛び乗り、ティムの胴回りを抱えるようにして、体全体が飛び出すのを防ごうとしました。彼のシャツは引きはがれ、体は機体の天井部分を挟み込むように折れ曲がっていました。ティムの足が前方に押し付けられていたためにオートパイロットは停止し、吹き飛んだコックピットのドアが制御装置の上に乗ってしまったのでスロットルがコントロールできず、機体は急加速して世界の空でももっとも混雑したエリアを時速650kmで急降下していきました。

全てのものが機体から吸い出されて行きました。酸素ボトルも飛んで行き、私はあやうく頭をぶつけそうになりました。私は死にたくないと思いながら、自分自身も吸い出されるような感じがしました。すると(客室乗務員の)ジョンが駆け込んできて私が吸い出されそうなことに気づき、私のズボンのベルトをつかんで機長のショルダーストラップを巻きつけてくれました。副操縦士のアラステアは運よく安全ベルトを離陸してからずっと着用していましたが、そうでなければ彼も飛んで行っていたところでした。

間もなく圧力は均衡化しましたが、ランカスター機長の体はまだ機体の外に飛び出したままですし、摂氏マイナス17度の風時速630kmの勢いで吹き込んできます。副操縦士が必死で機体のコントロールを取り戻し、2分ほどでやっと1万1000フィートまで高度を下げることができました。その高度であれば酸素濃度が高まります。でも機長はまだものすごい力で機体の外側に引っ張られており、オグデン氏が寒気と疲労に耐えながら抱えている状態でした。

私はまだティムを抱えていましたが、腕の力が弱まってきて、ついにティムの体が放れてしまいました。もうだめかと思いましたが、彼の体は窓を挟むようにU字状になりながら留まりました。でも彼の顔面は窓にバンバン叩きつけられ、鼻や側頭部からは血が流れ出ていて、腕はぶらぶらと振り回されて異様に長く見えました。一番怖かったのは、ティムの目が大きく見開かれていたことです。あの光景は生きている限り忘れることはできないでしょう。

誰かが「もうティムのことはあきらめなくちゃいけないんじゃないか」と言いましたが、オグデン氏はすぐにそれを否定しました。結局、別の客室乗務員の助けも得て、ランカスター機長を機内に引き戻すことができたのです。さらにすごいのは、機長には凍傷と骨折が何ヵ所かありましたが、命に別状はなかったのです。実際、この事故から15年経った2005年の時点でも彼はまだ現役で、英国の航空会社イージージェットでパイロットを務めていました。

ブリティッシュ・エアウェイズ5390便はイギリス・サウサンプトン空港の第二滑走路に不時着し、機長も含め、乗員・乗客全員が生還できました。もっと損傷が激しければ、悲惨な結果になっていたかもしれません。着陸時刻は7時55分、爆発的減圧が起きてから着陸までにたった18分しか経っていませんでしたが、コックピットにいた人たちにとっては、数時間にも感じる出来事でした。

[SMH and Wikipedia via The Atlantic]

Jesus Diaz(原文/miho)