極限で勝負を分けるのはテクノロジーではない...アフガンの大脱獄成功が投げかける懸念の舞台裏

極限で勝負を分けるのはテクノロジーではない...アフガンの大脱獄成功が投げかける懸念の舞台裏 1

まだまだ厳しい戦闘は続く...

突如として流れたビンラディン殺害のニュースに世界で驚きの反響も広がる中で、ややその直前の大事件への注目は弱まってしまった感じですけど、アフガニスタン南部カンダハル州の刑務所から反政府武装勢力タリバンのメンバーを中心に500人近い大脱獄が成功してしまった事件の真相からは、いろいろと新事実も明らかになってきてますよ。この脱走劇の裏側を知れば知るほど、執念のプロジェクトの凄みに度肝を抜かれちゃいそうです。いざご覧あれ!

 

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実はこの大脱獄事件が起きた今回の刑務所は、以前にも前代未聞のタリバン大脱走が成功したと話題になっており、かなり現場では警戒が強められていました。2008年に生じたその大脱走の際は、堂々と刑務所に対して外側からタリバンが襲撃を仕掛ける形で、なんと1000名を超える大量解放につながったと伝えられていますね。さすがにひそかに行なわれた今回のタリバン側の救出劇では前回を上回る脱獄者数を喧伝することはできませんでしたが、まさかの再脱走劇に関係者のショックの度合いはただならぬレベルだとのことですよ。

実際の脱獄プロジェクトがスタートした時期は、もう何か月も前の昨年末にまでさかのぼります。前回の大脱獄以降、一気に警備レベルがアップしている問題をクリアーするため、刑務所の監視塔からはほぼ目と鼻の先に位置しているものの、まったく当局からはマークされておらず、無警戒だった協力者の家の床下が最初に掘り抜かれ、それ以来、ひそかに刑務所内の真下を目指して、ただひたすら手作業でトンネルが掘り進まれていくことになりましたよ。

まるでアリのように勤勉に働いて、ただわれわれは掘りに掘り続ける日々を重ねた。5か月以上も何ら重機を使うことなく、人力のみで掘り進んでいったんだ。大きな物音を立てたり、見慣れない機械を持ち込んだりして、変に周囲の注意を引いて気づかれてはならなかったからね。

最終的に完成したトンネルの長さは320~360メートルと発表されており、いざ刑務所内と救出ポイントとなる家の床下を結ぶトンネルが開通したその日の晩に、速攻で大脱出作戦が敢行されたと伝えられています。

あれは真夜中の午前2時の出来事だった。いまでも感動のうちにはっきりと記憶の中へよみがえってくるよ。突然だれかがウトウトとしていた自分の足の指先をコツンコツンと叩いて、静かに俺に付いて来いって合図したんだ。案内された刑務所内の床下に見事に穴が開いていてね。急いでそこからトンネルの奥へ奥へと潜って行ったよ。

そう脱走者の1人も語るとおり、実は刑務所内の大半の脱獄者も計画について知らされぬまま、まさに一晩のうちに大脱走が行なわれた様子が明らかになってきていますね。このトンネル計画について詳しく伝えられていた3名のタリバンの囚人が、次々と案内役として刑務所内の仲間へ声をかけ、夜中の11時から午前3時半までの4時間半という短い時間で一気に500名規模を逃れさせたんだそうですよ。ただこうしてまったく逃走中も見つからずに終わったのは、やはり刑務所内部の職員の中にも複数のタリバン内通者がいて、夜中の警備の間も脱走を黙認する動きがあったはずだとの疑いもかけられていますけどね...

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いずれにせよ、この大脱獄の背景で驚きを誘っているのは、タリバンが大して高度なテクノロジーを駆使することなく全計画を成功させてきたことも大きいんだそうです。いまだにiPhoneを持ってるだけでも超珍しいとニュースになってしまうご時世だとのことですし、自分たちが決して技術的には恵まれているわけではないと当のタリバンの側も十分に認めていますよ。

トンネルの出来栄えは決して優れたものではなかった。狭いトンネル内を移動するだけで30分は余裕で経過したと思う。途中で少なくとも1か所はトンネルが崩壊して自分も生き埋めになってしまうのではないかと本気で心配せざるを得ない場所もあったのは事実だ。どうやらそこは道路の真下だったようだが、頭上を車が通る度にザザッと土が落ちてきて気が気ではなかったからね。

一方で、この日のタリバンの手際よさと組織力には脱走者の中からも感嘆の声が洩れていましたよ。たとえば、刑務所内でトンネル奥へと降りていく前に、すべての携帯電話はひとまず回収されたんだそうです。早めに逃れた人が興奮してうっかり計画を漏らしちゃったりしないように、こういう分野にまで対策が講じられていたみたいですよ。さらに、トンネルから再び脱出ポイントの協力者の家の中に到着すると、速やかに順番にグループ分けされて自動車でもっと安全な場所へと移送され、万が一、脱獄の最中に見つかってしまった非常事態の際には、身体に爆弾を巻きつけた突撃要員が自爆テロを敢行して脱出の時間稼ぎをする計画だったことまで明らかにされています。

われわれはテクノロジーのレベルでは敵に劣る。だが、本当に重要なのはテクノロジーなんかじゃない。いまそれを悟った今回の脱獄者たちは、以前にも増して戦闘にすべてを捧げる決意を固めている。

そう自信満々で述べながら、あるタリバンの匿名の司令官は今回の大脱獄劇を振り返っていますよ。ますますタリバンの士気は盛り上がりを見せる一方なんだとか。

この事件が衝撃的だったのは次の2つのポイントにおいてだ。まず第一に、たとえ非常に警備を固めた場所の心臓部であっても攻略できると思わせる、まさにタリバンならば何でもできてしまうというメッセージを内外に送ってしまったことだ。そして第二に、今回の解放されたメンバーの中にはタリバンの重要な戦力となる人物が多数含まれており、タリバンの力が確かに増強されてしまったことに間違いはない。

事件を総括し、あるタリバン戦線の大物は残念そうにこう語ったとされています。まだまだこの地域での紛争の早期解決は期待できそうにもありませんね...

NYT via The Atlantic

Brian Lam(米版/湯木進悟)