iPhone中毒より煙草の方がまだいいと思うこれだけの理由

2011.08.24 20:00
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携帯デジタル端末はいろいろお付き合いしてきたけど、あんなに夢中になった相手はiPhoneが初めてです。でもiPhone中毒嵩じてiPod touchと交換しちゃいました。今は他に夢中になれるもの探してるとこ。

楽しい時期もありました...でも付き合っていくうち自分が自分じゃなくなっちゃうみたいに感じてしまったんです。誰かといる時も、ひとりの時も、この端末と一緒。端末は一瞬一瞬を情報で満たし、豊かさを奪っていきます。うまく一線が引けたら良かったのだけれど、それもむずかしくて――何よりこれはふたりの問題なのにがんばってるの自分だけなんだもの、疲れちゃったんです。

一番堪えたのはiPhoneが、この私から静かな心の余白を奪ってしまったことです。前は用事の谷間に空いた時間があれば一日のこと心の中で消化したり、ただぼんやり宙を見つめて過ごしていたものですけど、その当たり前のようにあった隙間の時間は、消えてしまいました。
 
かわりに暇さえあればスマホゲーム『Words With Friends』で遅れを取り戻したり、Facebookをとめどなくスクロールしたり、タスク、タスク、いくらでもタスクが待っています。やった分、多少ドーパミンのレベルが上がって快感なので、それが癖になってまたズルズル戻ってしまう自分...なんだかスロットマシーンに入れ込む高齢者みたいで、そんなことに縛られてる自分が恥ずかしくなってしまったんです。

知り合いも似た関係に苦しんでる人がほとんどでした。地下鉄で、街角で、移動中の車で、レストランで...たまにハッと顔上げて辺りを見回すと、みんな周りの人も下向いてなんかやってるわけですよ。それ見て一瞬、「あ~あ、機械に魂吸い込まれちゃって...かわいそうに...電波届かなかったら味わえる人生のいろんなこと見過ごしてしまってるのね...」と悲しくなって、でも次の瞬間にはまた下向いて携帯いじってしまう自分がいるのです。


iPhone断ち

と言っても、すっぱりiPhone断ちしたわけじゃないですよ。iPhoneを人にあげて、iPod touchを買ったんです。iPhoneがヘロインならtouchはメタドン(ヘロイン中毒治療薬)。touchなら、気に入ってるiPhoneの便利な機能は沢山使えて、尚且つ、メール、テキストメッセージ、Facebookはパスワード抜きで接続できる野良回線ないと使えません。

ああ、なんという心の平安!  ネットをOFFにするだけで世界はウォールデン池に一変します。

テクノロジーの張り巡らされた世界で逃げ場所探しあぐねる現代人は確かに、ウォールデンの山小屋に逃れたソローに一脈通じるものがありますよね。

森に入ったのは、どうせ生きるなら意識的に生きたいから。人生の真髄とだけひたすら向き合って。それが教えてくれるものが学べるかどうかを見極め、死ぬ時になって人生生きてこなかったと気づくことがないように...私は深く深く生き、人生の精髄を吸い尽くしたかった。―ソロー、「ウォールデン 森の生活」より

でも、デジタルで取り残される孤独は現実世界の孤独に直結してるんですよね...。例えばディナーパーティーで自分以外の人が全員テーブルに向かって頭を垂れて液晶で顔テカらせてたりすると、やっぱり孤独がヒシヒシくるわけです。

手持ち無沙汰で「なんかしなきゃ!」という気持ちに追い立てられるときは本読んで気を紛らすことにしたんですけど、それもねぇ...。iPhoneハマり過ぎても浮きますけど、本も浮きますよ...。四六時中せかせか手を動かして話題についていきたい衝動を抑えつつも、周囲に溶け込みたいっていう気持ちはあるので。せっかく交流を深める場に来たのに自分だけ大交換台に受話器繋がってないっていうのも変ですもんね。

...で、煙草の効用を試してみることにしたんです。
 

中毒は他のものと代替可能な傾向が強いもの。タイタニックで席を交換するように、中毒Aで困ったら中毒Bに置き換えてやればいいのです。TechCrunch曰く、「テクノロジーは新たな喫煙」らしいですし。この最近の記事でAlexis Tsotsis記者が紹介したイギリスの最新調査によると、24時間ネットに繋げない状態に置いてから1000人に感想を訊いてみたら「イライラする」と答えた人が53%、「孤独に感じる」と答えた人が40%だったそうですよ。まるで煙草の禁断症状だな...と言ってる人が沢山いるの見て、これだって閃いたのです。


スマートフォンより喫煙がまだマシだと思うこれだけの理由

まだ煙草が習慣になるところまではいってませんが、スマートフォンに比べまだ煙草の方がマシかな...と思う理由を探してみるとこれが結構あるんですね(ここでは煙草で死んだり病気になるとかの悪影響は抜きで考えてます)。

煙草の方が人と交流できる: 煙草吸いながらだったら、私も人と会話を楽しむぐらいのことはできますよ。どうしても人に話し掛けなきゃならない用事も生まれます。「ごめん、ライター貸してくれる?」―このひと言から恋愛に発展する確率の方が出会い系のOKCupidより絶対高いんじゃないかな? 長続きしないかもだけど。

iPhoneより煙草の方が操作が簡単: 煙草なら歩きながら吸ってもコケることもなし。電話したり自転車漕いだり空を見ながらでも楽しめます。

どれだけお金がかかるか分かる:煙草を吸う知り合いを見ると、1週間に何本吸って、いくらぐらいかかるか、かなり正確に把握している人がほとんどです。iPhoneは私の場合、使い放題だったから、何時間ログインしてるかサッパリ分かりませんでしたよ。分刻みの従量制なら少なくとも「もったいないから使うのセーブしよう」とか考えも及ぶんでしょうけど。


110818cigarette_warning_labels.jpg• 煙草は吸うのにかかる時間が決まっている: 煙草は暇潰しは暇潰しでも次元タイマー付きの暇潰しです。一服して休憩っていうのが時間的にキリがいいんですよね。これがiPhoneで「休憩」だと普通は予定より長くなっちゃうし、休憩始めた時より神経疲れてしまったり、ありますから。

煙草は中毒だと周りも理解してくれる: 「ちょっと一服してきます」と席を立つと、「ああ、吸わないと禁断症状出るんだな、煙草に縛られて大変ね」ってみんなある程度は理解を示してくれます。別に「嫌な奴!」とまでは思われません。誕生祝いの席で「ちょっとInstagram(iPhone写真共有アプリ)チェックしてきます」と席を立ってもナカナカそうは思ってもらえないのが現実。

煙草吸ってるのは見れば一目瞭然: 喫煙中の人は見たらわかるし、吸った後でも臭いでわかります。隠すの大変ですよね。でも、家の会計士が話しの途中で端末に目を落としても、こちらは「オイコラうちの仕事より大事な用事って何なの、え!? そのFacebookメッセージ何書いてんのよ? 危篤?エロ? ちょっと見せろや!うりゃー!」と声にならない叫びを上げながらガン飛ばすだけ。画面は全く見えません。

がんスティック(煙草)はオフラインでも使える: アノニマスにニコチンのパスワード盗まれる心配もないし、AppleにGPSで現在地追跡される心配もなし。マルボロは「アップデートしてください」と要求もしてきません。

トイレに落としても拾わなくていい: 煙草なら手突っ込んで拾って乾かして祈らなくてオケー。いや、拾いたいなら拾ってもいいですけどね。パーラメントならビールの飲み屋に置き忘れて大ごとにはなりません。

警告が明記されている: たばこメーカーは少なくとも「体に害」だってちゃんと箱に明記する程度のストレートさを持ちあわせています。が、iPhoneにはなんの警告ラベルもありません。ユーザーは子どもにも使わせるし、車の中でも使っちゃってます。

携帯電話の健康への影響はまだ結論がついていない: 喫煙がもたらす病気の研究はかなり進んでます。煙草の効用に関する情報も豊富です。携帯利用による脳腫瘍、Angry Birds中毒...なんていう正体不明の怪物に比べたらまだ煙草の疾患の方が対処法もはっきりしてる気がします。

煙草は手が疲れない: iPhoneで何ヶ月もメールやテキスト打って親指痛くなってたことに、やめて初めて気づきました。

セックスの後は煙草に火を付ける方がスマートフォンつけるより百倍セクシー 特にパスコード入れないと立ち上がらない携帯は余韻もぶち壊しです。


禁煙の方が簡単: 知り合いを見ると、禁煙に成功した人は大勢いますけど、スマートフォン断ちに成功した人ってあまり聞かないです。

美的観点から言ってもiPhoneより煙草の方が私好み:  世の中の人たちのデジタル生活って、みんな気味悪いぐらい同じだと思いません? 端末はみんな似たようなのばっかり。知り合いのメールも似たようなのばっかり(メールで作家の頭角現す人もいないけどね)。サイトも似たようなのばっかり(こんなサイト見たことない!という冒険がない)。私の連絡先の人たちはテキスト送信の習慣も大体一緒で、どのテキストのやりとりも似たようなのばっかり。その点、煙草吸う人は十人十色ですよね。ああいう個性が無性に懐かしくなってしまったんです。友だちのクリスタが吸うのはNat Shermanブランドだけ...彼女が唇に挟むと、あのブラウンが引き立ってひどくチャーミングなのです。マリーは薬指と中指の間にマルボロ・ライトを深く挟んで、吸うときは手で顔を覆うのが癖。フィルター抜きのキャメルの匂いは、父の思い出として私の中に永遠に刻まれています。

ま、最近の父はめっきりあの香りも抜けてしまいましたけどね。ドクターストップかかって煙草諦めたんです。で...これを単なる偶然の一致と片付けていいのかどうか判断迷うんですけど...煙草やめたちょうどその時期に初めての携帯を買ったんですね。

買ってからは寝ても覚めても褒めまくり。「連絡帳まで入っとるんじゃよ」と喜んでいたのに、買って2週間でトイレに落としてしまったんだって。「どんな気分だった?」と訊いたら、こう返ってきました。

「何もかも失った気がしたよ」


【筆者紹介】Anna Jane Grossman:ニューヨーク在住ライター。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・マガジン、ギズモードなど全国配信の大手メディアに寄稿多数。犬も得意分野です。

*本稿はMotherboardからの再掲です。


ANNA JANE GROSSMAN(原文/satomi)
 

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