「持てる武器は全て持って戦います」 KDDIのWindows® Phone担当者へインタビューしてきました

2011.08.10 11:00
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KDDIから突然発表された、Windows® Phone 7の発売。2010年の秋から「未来へ行くなら、アンドロイドを持て。Android™ au」として、Android™のauを大々的にアピールし、今年に入ってからさらに勢いが増してきたKDDIが、なぜ今のタイミングでWindows® Phoneを投入してきたんでしょうか。

こんな疑問を持ちつつ、KDDIのサービス・プロダクト企画本部プロダクト企画部商品戦略グループの、佐藤毅氏にインタビューする機会を得られたので、お話を伺ってきましたよ。
 

 
■Windows® Phoneはケータイに似てる!


佐藤毅氏(以下佐藤):本日はよろしくお願いします。

ギズモード(以下ギズ):よろしくお願いします。まずは、プロフィールからお願いします。

佐藤:僕は移動体通信の世界は2000年からで、これまでKDDI含めて3つの通信事業者、1つのメーカーで多くの端末に関わってきました。今はパーソナルプロダクト企画部で商品戦略の業務を、コンシューママーケティング部でマーケティング全般の仕事を兼務でしてます。今回はWindows® Phone 7のプロモーションやマーケティング周りを担当してます

ギズ:そうなんですね。それではさっそくですが、KDDIとマイクロソフトが一緒になって、Windows® Phoneを出すことになったのはどんな経緯があったんでしょう。

佐藤:元々は昨年の秋に海外で発売されたWindows® Phone 7の次のバージョン、いわゆるMangoですね。これの日本語対応のタイミングと、auの通信方式であるCDMA2000対応のタイミングがほぼ同じ時期になりそうだ、というのを聞いてアプローチしたのがそもそもの始まりですね。まさに「Android™ au」と言いまくっていた時期に仕込んでいた、ということですね。

僕自身は今年の3月にWindows® Phoneのマーケティング担当として合流して、そこで初めてWindows® Phone 7に触れました。それまでは個人的にAndroid™やiPhoneをずっと触って来た僕ですが、そのときこれはイケるんじゃないか? と思いました。

最近はiPhoneやAndroid™などのスマートフォンを多くの人が使っていらっしゃいますよね。でも、ケータイのテンキーから、いきなりタッチパネルの端末に移行するというのを、ハードルが高いと感じる方も多いんです。

日本のケータイは、基本的にはずっと同じ操作体系で機能が拡張してきました。だから使い勝手を大きく変えることなく、新しい体験を手にできたわけです。でも、いまのスマートフォンってどちらかというとパソコンでの体験をモバイルするという概念なので、今まで蓄積してきた体験を捨てることになっちゃう。それが不安なんです。

そういう方がいまスマートフォンにどんどん移ってきてて、この夏のauのスマートフォンにAQUOS PHONE IS11SHというテンキーがついたAndroid™があるんですけど、売れ行きを見ると想定以上にめちゃくちゃ売れてて、あぁやっぱりという結果になってる。台数は言えませんけど(笑)

これは僕の個人的感覚になるんですが、どうも端末を触っているとWindows® Phoneは、日本のケータイの操作性にものすごくよく似てるんじゃないかと思うんですね。Windows® Phoneの特長の1つでもあるメトロUIなら、ケータイユーザーに受け入れられやすいんじゃないかなって思ったんです。



発表会でWindows® Phoneを触ってきた時の動画


ギズ:メトロUIはスムーズに操作できて、直感的ですよね。

佐藤:そうなんです。メトロUIは、左にスクロールして、縦の項目を選ぶ。左にスクロールして縦。日本のケータイでも、スクロールしてセンターキー。スクロールしてセンターキーと選択していけば、階層が下りていくんですよね。パノラマと呼ばれる画面構成の特徴をちゃんと意識して作ったアプリであれば、Windows® Phoneはケータイと同じ概念で操作できる。この部分こそが日本のケータイを使っている人にすんなりと入っていけるはずだと思いました。

(Windows® Phoneを手に持ちつつ)さらに、Windows® Phoneの設定から選べるテーマカラーを見ててわかったんですが...マゼンタって大江戸線の色に似てません? パープルが半蔵門線、ティールが南北線、ライムが都営新宿線、ブラウンが副都心線で、ピンクが浅草線、オレンジが銀座線でしょ。で、残りが東西線、丸ノ内、千代田...ね? 実は日本の地下鉄の色なんですよこれ! まさに文字通りじゃなくて「色」通りメトロUI!

(一同爆笑)

これ日本のメトロの色じゃんって思ったときに、日常的にメトロの路線図を指でなぞって目的地への経路を確かめてる僕らからすればこんななじみのあるものはないし、そのお作法こそがまさにメトロUIの概念そのものじゃないかと。「おぉ~これおもしろいじゃん!」となったわけなんです。これなら日本でもイケるかも! と。

そしてその後、実際にシアトルのマイクロソフトに行ったときに聞いたんですが、日本のメトロのサインシステムも参考にしたと言ってましたし、日本のケータイの操作体系も参考したと聞きました。

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ギズ:なるほど。それでは、Windows® MobileとWindows® Phoneの違いはなんでしょうか。

佐藤:Windows® Phoneは、Windows® Mobileとは全く違うモノですね。MobileはまんまPCのモバイル版って感じですが、Phoneは全くのゼロから構築し直している。しかもPhoneの使い勝手がPC向けのWindows® 8にも展開されるわけで、流れが逆なんです。名前は似てるかも知れないれど違う。ところが、全く違うやつだということは、触ってみないとわからない。

ギズ: 触ってもらうまでに興味を持ってもらわないといけないと思うんですが。

佐藤:その通りで、今回のWindows® Phone IS12Tはデザインにもその工夫を施しています。

どういうことかというと、これまで開発されてきたスマートフォンのデザインは往々にして、金属で囲む、たとえば蒸着を施すなどするのが王道のデザインで、カラーもクロや白など、これぞスマートフォンだって佇まいでしたが、Windows® Phone IS12Tはデザイン言語としてはまったく逆のことをやってます。

メトロUIのカラーリングに合わせたビビッドなカラーと、それを引き立たせるブラックの縁取りは、スマートフォンのデザインの常識だったベーシックな色と輝く装飾の組み合わせとは真反対。外観から中のUIまで、ひとつの世界観で統一しているというのはオモシロいと思うんです。まさにデザインが、それまでのスマートフォンとは違う、Windows® Phoneは他とは違うんだということをパッと見で示してるわけです。

そして、それを使っている人が何を使っているのか、パッと見でわかるというのも必要です。スマートフォンは裏が顔です。その裏を見て、一目で何の機種かわかるようでなければダメなんです。


ギズ:佐藤さんは開発にどのように関わっていたんですか?

佐藤:僕自身は全体マーケティングの担当なので開発には直接関わっていません。

Windows® Phoneはハード要件、ソフトウェアの要件がキッチリと固められていて、通信事業者が関われるところはほとんどありません。ですから、いわゆる三種の神器をカスタマイズしようと思ってもそれはできませんでした。

ezweb.ne.jpのいわゆるキャリアメールは、送受信するためのアプリが10月には出ると思います。このアプリはMangoに搭載されるメーラーをベースに作るため、リリースが少し遅れてしまいますが、マイクロソフトさんと社内の担当部署が協力してがんばっています。


ギズ:このソーシャル時代に、ezweb.ne.jpのキャリアメールはどれほど使われてるんでしょう?

佐藤:いや、そこなんです。それがですね、たとえば今の進んでる高校生ってメールしないんですよ。メールを打つならむしろ電話してしまうし、リテラシーの高い子たちは宿題はSkype™をつなげて一緒にやる。授業中にカチカチメールするんじゃなくて、非公開のfacebookアカウントを使ってグループで共有する。撮った写真もfacebookシェアしたり。これが当たり前なんです。

なので、この子たちが大学生や社会人になったときに、はたしてキャリアメールの果たす役割って何なんだろうと考えるわけです。だって、もう@facebook.comやGmailのアカウントを持ってたりするんですから。そして、こういう子たちを見て他のグループの子たちもその流れに乗っていくし、その子たちも大学生や社会人になっていっちゃう。

今までにKDDIがSkype™と提携したりやfacebookと協力関係を結んできたのは、そういった先を見据えて動いてきたからなんです。foursqure然り。決して闇雲に動いているわけじゃないんですよ(笑)

Windows® Phoneのソーシャル情報をまとめてくれる「Me」は、これ1つで自分宛てのメッセージや自分が発信したつぶやきなんかを一覧で見ることができる。こういった機能を搭載しているのを見ると、Windows® Phoneはそれを使う「人」に照準を合わせているんですね。それと、auならではのjibeもパノラマデザインでしっかりと作り込んでもらいましたので、mixiやGREEも一緒に見たいという人でもちゃんと楽しめます。ここもポイントです。

ギズ:ソーシャルメディアの勢いはほんとにすごいですからね。


■Android™も、Windows® Phoneも


ギズ:端末を作るにあたっては、どのように開発が進んでいったんでしょうか?

佐藤:ええっと、auってIS01を出したのって1年ちょっと前なんですよね、たったの。なんか遠い昔のように感じますけど、スマートフォンの本格展開が一番遅かったわけです。2011年は「iPhone vs Android™」の構図になるのはわかってましたから、じゃ、Android™=auとなるように「Android™ au」ってプロモーションを仕掛けたわけです。auのAndroid™、ソフトバンクのiPhone、ドコモはスマートフォン、かな。そんな感じで市場の認知は進んでいるはずです。

でも「iPhone vs Android™」ではなくて、実際には「Android™ vs Android™」になってる。ドコモさんのファミリーメーカーが本格的にAndroid™を出してくるのは夏だと踏んでましたが、NECさんが抜け駆けしたり(笑)、サムスンさんの初代GalaxyがIS03と同じくらい売れたりと、想定以上にスマートフォン市場の競争が激しくなっちゃった。これは業界の人はみんなそう思ってると思いますが。

そんな中で、1年前には日本で発売して受け入れられるものはAndroid™とiPhoneしかなかったのが、今回Windows® Phoneという選択肢が増えたんです。それも世界初、日本初の7.5のバージョンで。出せるものはどんどん出していこうというのが、社長の田中の方針。今回もそれに則っています。田中の口ぐせは「"なぁんか最近、auってどうしちゃったの?" ってくらいにまで次々と新しいものを出さないとダメだ」ですから。

なので、選択肢として揃えられるならやってやろうじゃないか、と。スマートフォンという市場でauが勝つために、モテる武器は全て持って戦う。そういったときに声をかけさせていただいたのが、富士通東芝さんなわけです。富士通さんも東芝さんもPC分野でマイクロソフトさんとのお付き合いがある会社ですし、防水や薄型化も得意なメーカーさんですから、今回はいい製品を作っていただきました。マイクロソフト本社でも、Windows® Phone IS12Tのデザインは大好評でした。


ギズ:Windows® Phoneの発表会でアプリの数が少ないですが...。という質問が記者からありましたが、この点についてはどう思われますか?

佐藤:それって当たり前ですよね。

まず、Windows® Phoneは日本でまだハードが出ていないわけです。海外でも去年の秋に発売されたばかりで、販売シェアも数%しかないプラットフォームに、iPhoneと同じアプリ数を求めるのは違うと思います。日本でハードが出ていないのに誰がアプリを開発するんだかっていうね。

すでに発売されている海外では、伸び率でいうと、Windows® Phoneのアプリ開発は一番伸びてます。スマートフォンのアプリの世界というのは先手市場で、一番最初に出したところが一番シェアを取る仁義なき世界だから、当然Windows® Phoneアプリは伸びているわけです。

だからこそですが、僕たちがWindows® Phoneを盛り上げて、アプリもいっぱい作ってもらえるようにしないといけないなと思います。


■まずはWindows® Phoneに触ってほしい


ギズ:Android™ auとしてアピールしていたKDDIが、いきなりWindows® Phoneも出してきたのはびっくりしたんですが、これも戦略だったんでしょうか。

佐藤:もちろんです。Android™は大きな戦力。でもドコモさんもAndroid™で本気を出してきました。だから僕たちは奇襲攻撃をしなきゃいけないんです

Windows® Phoneは周回遅れだから追いついてきたら取り扱おう...じゃ、僕らは勝てません。周回遅れかもしれないけど、他にない魅力がある。だったらそれを他より先に出しちゃえと。でもだからといって、ソフトバンクさんみたいにどれか1つの機種だけに絞ってマーケティングコストをかけるというのもできません。なぜなら2位だから。2位が3位と同じ戦略を取ったら1位に潰されるんです。

僕たちはシェア上位の会社の戦略も、シェアが迫る勢いの会社のそれも見なきゃいけないから、大変です。ドコモもソフトバンクもどっちも気にかけなきゃいけない。それにソフトバンクさんは、ウィルコムをグループに収めて、数でauに迫ろうとしている。どの業界もこのポジションの会社は戦略が難しいんですよ


ギズ:たしかに大変そうですね! 去年からの流れで、ギズ読者の意見を見ていても、au頑張ってるじゃん。とか、auいいよね。という声も多く聞こえてきてます。

佐藤:ありがとうございます。この流れを続けていかなきゃいけないですよね。これからも「au面白いよね」って言われるようにしなきゃですね。auというブランドをまた復活させたいですから。

ギズ:最後に締めの一言をお願いします!

佐藤:日本のお客さまがスマートフォンに興味、関心をもってきてシフトしてきた今、このWindows® Phoneというものにまずは触れて欲しいと強く思っています。触れてもらえば、きっと良さが伝わると思います。

ギズ:長い時間ありがとうございました!

佐藤:ありがとうございました。


Windows® Phone IS12T

(大野恭希)
 

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