世界最大のPCメーカー・HPがPC事業売却を検討...って、それでいいんでしょうか?

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世界最大のPCメーカーであるHPが、PC事業の分離を検討していることを発表しました。PC市場は成長が鈍化しているし、まあ仕方ないかという向きもあります。でも、本当にそれでいいんでしょうか?

今回のHPの決断は、かつてPC事業をLenovoに売却したIBMの模倣にも見えますが、当時のIBMの状況と違うのは、HPのPC部門が黒字であることです。しかもHPの昨年度売上の3分の1はPC事業によるものでした。でもHPの経営陣は、今後はPCに対する需要は伸び悩み、事業として効率が悪くなると考えたのでしょう。そして、効率を改善しようと努力するのではなく、切り捨てることを選ぼうとしているのです。

HPのレオ・アポテカーCEO(ちなみに彼はソフトウェア畑の出身)は、この決断は「タブレット・エフェクト」を感じたためだと言います。「タブレット・エフェクト」とは言い換えれば「アップル・エフェクト」であり「iPadエフェクト」なのでしょうが、それですべて説明できるんでしょうか。PCが抱えてきた本当の問題から目をそらそうとしているだけではないでしょうか。

ここ数年アップルのビジネスが拡大する一方で、PCマーケットは伸びが鈍化しており、今年第一四半期には出荷台数が前年対比マイナスになりました。でも、競争をあきらめてしまったら、アップルを超えることはできません。TouchPadで対抗しようとしたけど、失敗だったと言うのでしょうか? でもTouchPadは発売からたった6週間しか経っておらず、あきらめるには早すぎます。

たしかにTouchPadは現時点で高く評価されていないかもしれませんが、WebOSにはファンがついています。問題はハードウェアなんです。というのは、WebOSはiPad 2の上ではTouchPadの2倍の速度で動いたと報告されています。だから、まずすべきことはハードウェアの欠点を見つけて修正し、TouchPad 2をなるべく早くリリースすることではないでしょうか。

PCに関して言えば、アップル製品の需要が高まっていて、自社製品のシェアが低下しているからといって、それでいちいち撤退していたら最後にはアップルしか残らなくなってしまいます。他社に負けそうになったら、負けずに生き残る方法を考えるべきです。そうやってイノベーションが起こるはずです。世界最大のPCメーカーがそれをしなくなったら、誰がするんでしょうか?

PCが死につつある理由は、アップルの存在ではありません。PCが死ぬとすれば、それはPCメーカーが逃げだすときです。世界にはアップルの競合が、強い競合が必要です。たとえば僕は数年前にWindowsのノートPCからMacBook Proに乗り換えましたが、それは仕事上FinalCut Proを使う必要があったからでした。今はその必要がなくなったし、MacOS Xにも日々不満を感じるし、Windowsに戻らない理由はありません。でも、戻るためには戻るための理由が必要です。ユーザーとしては、Windows PCを使ったら自分の毎日がどれだけ素敵になるかを知りたいんです。それがわからなければ、現状維持に流れてしまいます。PCメーカーには、乗り換える理由をしっかり提示してほしいんです。

幸い、IntelがPCのイノベーションのために一肌脱いでくれています。MacBook Airを超える端末を手の届く価格で実現するために3億ドル(約223億円)を投じてくれているんです。こういった資金も活用できないでしょうか?

マーケットシェアが低下したメーカーがみんな撤退していたら、市場にはアップルしかない状態になります。でも、アップル製品しかない世界って、どうなんでしょう? そんなことになったとき、PCメーカーの経営陣は、「ユーザーが買わなかったせいだ」と言うかもしれません。でもユーザー側からすれば、市場の変化に対応した製品を送り出せなかったPCメーカーに責任を感じてほしいものです。

メーカーが戦いから逃げてしまったら、世界はよくなりません。ユーザーの選択肢が減り、イノベーションも起こりにくくなってしまうはずです。HPをはじめとするPCメーカーのみなさんには、自分たちが撤退する理由を考える前に、ユーザーが自社製品を買う理由、買わない理由を再度じっくり考えてほしいと切に思います。

Image credit:Shutterstock/Andre Blais

Brent Rose(原文/miho)