iCloudで携帯電話以来の大変化が起こる...それは未来のコンピューティング

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予想以上のインパクトになりそうです。

携帯電話使う前の生活って、どうだったでしょうか? 携帯電話がユビキタスな今とは違い過ぎて、思い出すのも大変なんじゃないでしょうか。今回公開されたiCloudも、携帯電話に匹敵するターニングポイントを作ろうとしています。古いやり方から移行し、コンピューターをみんなにとって使いやすいものにするのです。しかも、コンピューティングをなくすことによってそれを実現しようとしています。

どういうことでしょうか?

アップルがiOS 5とともに打ち出したものはたくさんありますが、iCloudほど大きなものはありません。SiriとかFind my Phoneとか通知機能の改善とかいろんな機能がありますが、iCloudと比べるとかすんでしまうほどです。iCloudによって、もうコンピューターを買う必要がなくなる人も出てくると思われますし、そうでない人にとってもコンピューティングのあり方がまったく変わってしまおうとしているのです。

かつてコンピューターとは、一握りのエンジニアの人だけが使うものでした。それが1980年代になって、お金を出せば買えるものになりましたが、実際使うには特殊な知識がたくさん必要でした。90年代になると、コンピューターで一般的な作業をするくらいなら大した知識がなくてもよくなりましたが、何かちょっとでも想定外のことをしてしまうと、すぐに技術サポートに電話しなくてはなりませんでした。そして2000年を過ぎてからはもう少しは簡単になりましたが、それでもコンピューターの中にはフォルダーとか階層構造があって、いろんな情報がどこにどう収まっているかという基本的な理解が必要でした。でも今、iCloudを使えば、そんな理解すら不要になります。

もはやファイルシステムとかフォルダといったものの管理はいらなくなります。どこに何を保存しようと関係なく、アプリを立ち上げるとそこにデータがあるんです。写真も音楽も文書も動画も、アプリも地図もすべてです。データを探したり、フォルダからフォルダへ移したり、手動でシンクしたりも必要ありません。バックアップの心配も無用です。電源を入れるだけ、以上です。

iCloudによって、我々のマシンはデータを見るためのスクリーン+αくらいのものになります。テレビ番組を見るときに使うテレビ端末みたいな感じで、使い方を学んだり、中身を管理したりする必要はないんです。iCloudで、コンピューターとそのファイルシステムは完全に不要になります。もちろん、使いたい人は既存のパソコンを使ってもまったく問題ありません。音楽も写真も文書も、すべてはただそこにあるんです。そしてもちろん、パソコンを捨ててiPhoneとかiPadオンリーにしても大丈夫です。どちらにしても、すべてのデータはクラウドの中に安全なホームを持ち、デバイスとは自動でシンクしてくれます。

2001年、スティーブ・ジョブズがアップルのデジタルハブ戦略を発表しました。それは、「Macがデジタルデバイスすべてをつないでコントロールする中心的ツールになる」という内容でした。現在から見ると当たり前のように感じられるかもしれませんが、この戦略があったことで、その後アップルは急回復し、世界一の企業へと成長を遂げていったのです。

そしてアップルは成長するにつれて、変化もしていきました。「アップルコンピュータ」の「コンピュータ」を名前から外し、「アップル」になったのです。それでも、ハブとしてのコンピューターは必要不可欠なもので、ホームのコンピューターがケーブルやポートを通じてすべてのデータの流れやガジェットを管理してきました。コンピューターが必要ということは、その使い方の知識や、コンピューター上で作ったり使ったりしたものの管理も必要でした。

でも今、ハブは必要なくなりました。というか、ハブがクラウドに移動したことで、ユーザー側が意識する必要がなくなったんです。今、ハブはノースカロライナにある空調管理されたビルのどこかにあります。それは冗長化されたサーバー群で、無線やアンテナを経由してiPhoneやiPadやパソコン、テレビにつながっているのです。

これらのサーバーが、文書をパソコンからiPadに移動したり、電話で撮った写真をApple TVに移したり、外出先で買った音楽が家のパソコンのiTunesに入っていたりさせます。パソコンはもういらなくなり、どこに何があるかも意識する必要はありません。それがクラウドのすごいところです。保存がリモートでできるだけでなく、どこに保存したかを覚えておく必要がまったくないのです。

もちろん、Googleもこの数年同じゴールに向かっていますし、もっと進んでいる面もあります。新しいAndroid端末とかChromebookを買ったときは、ただGoogleアカウントにログインすれば、メールも連絡先も音楽も文書もボイスメールも写真もそこにある、という感じです。でもGoogleは設定とかそのサービスをどう使うかという知識が必要ですし、いろんな操作も必要です。Googleのクラウドサービスを使いこなすには、ある程度のパワーユーザーでないといけません。前もって何をしたいかはっきりわかっていないと、使えないんです。そしてオフラインで使おうと思っても、それは無理です。

iCloudが実現しようとしているのは、こうした高度な機能を誰にでも使えるようにしようということです。すべてシンクできるということ自体も知っている必要がなく、ただシンクしてくれるんです。電話のアップデートも、モバイルの写真のダウンロードも、ファイルのバックアップも、ただそっとやっておいてくれるのです。

もちろん、多くの人はこれらの機能をDropboxなどのサードパーティのアプリで使っていたでしょう。でも、僕らのたとえばお父さんにはそれができたでしょうか? アップルは、ハブ機能を完全に引き継いですべてのシンクや整理を意識させず、自動で行うようにしてくれました。すべてはユーザーのアクション中心です。ただ自分のタスクをすればよく、残りはiCloudがやってくれます。

ユーザーがiPhoneを手にしてただ写真を撮れば、それはもうどこででも見られるようになります。ただ電話を夜に充電させておけば、バックアップしてくれます。文書はなくならず、スケジュールもいつも最新です。デジタルのこまごましたものを全部整理してくれます。すべて細かいものまでバラバラにさせず、いつでも必要なところに、つまりユーザーの目の前に、持ってきてくれます。

これが実現できる理由は、(ちょっと直感と違うかもしれませんが)iCloudがピュアにオンラインじゃないからです。Googleのクラウドサービスと違い、iCloudはローカルなものでもあります。ユーザーにとって何かが必要なときは、「今」必要なんだということを理解しているんです。だからオンラインに見に行かせるのではなく、バックグラウンドでプッシュしてくれるんです。完全にデバイスベースのアプリと、完全にインターネットベースのサービスの間に立ってくれる存在です。たとえばiTunes Matchは、ダウンロードモデルからユーザーを移行させるべくデザインされていますが、ダウンロードした楽曲でも利用可能です。ここでも、アップル側は非常に高度なことを実現しながら、ユーザーはそれを意識しなくてもいいようになっているんです。

アップルのエコシステムを信じれば、あとはすべてやってくれます。シームレスに、すべてのスクリーンに。電話も、タブレットも、コンピューターも、テレビも、iCloudはそれらすべてを統合し、コンテンツをすべてのスクリーンにプッシュしてくれます。iCloudがスクリーン間の壁を取り払うことで、ひとつのデータを複数のデバイスで見たり、聞いたりできるようになります。あるスクリーンで何かを変えれば、それが全体に流れていくようになります。

さらにアップルではデベロッパーがiCloudにアクセスすることを可能にしているので、より多くのアプリでiCloudを生かしたものが出てくることでしょう。すべてはシンクされ、デバイスからデバイスへ広がっていきます。日々のさまざまな仕事が処理しやすくなり、コンピューターもより速く、効率よく、生産的に使えるようになります。

iCloudのゴールは、OS自体をリプレースしてしまうことだと言えます。もうiOSもOS Xも、Windowsもいらなくなります。ただデバイスと、それを通じて保存するデータがあるだけです。iCloudはコンピューティング不要のコンピューティングです。そしてすべてが、誰にとっても使いやすいものになります。iCloudのおかげで、誰もがパワーユーザーになれるのです。

Mat Honan(原文/miho)