人体自然発火はどう起こる?

人体自然発火はどう起こる? 1

心地よい居間で好きな本読みながらウトウトしてたら突然体が燃え出して灰になる...考えるだけでゾッとしますよね...。

昨年12月に焼死したMichael Fahertyさん(76)の遺体を検分したアイルランドの検視官が、先月そういう結論を出しました。公式に「人体自然発火」が死因と断定されたケースとして注目を集めています。

遺体の下の床、上の天井を除けば、周りの家具にもアパートにも火の手は回っていませんでした。遺体だけポッカリ燃えてたんですね。これではこの道25年のベテラン検視官も人体自然発火(spontaneous human combustion:SHC)以外、考えられませんよね。外から燃やしたのなら家もある程度燃えてなきゃおかしいし...。

まさか現実にあるなんて思いませんでしたけど、そんなに怖がる必要はないですよ。人体自然発火はたぶん...起こっていません。過去300年間にそういう事例が200件も報告されているのは事実ですが、その本当の死因については1998年にイギリスの科学者からもっと現実味のある説明が提示されているのです。いわゆる「wick effect」、ろうそくの芯みたいな現象ですね。

人体がいわば、ろうそくになるのです。

「それと人体自然発火とどう違うの? 同じぐらい怖いって!」と言われそうですけどね。これが起こると人体はみるみる炭の山になり、さらに気味悪いことに手足だけ燃え残ったりするんです。でもまあ超常現象ではなく、こちらはロジックがあるだけマシかな...と。

 

【注意:下の写真2枚は死体です。クリックで拡大します】

人体自然発火はどう起こる? 2
BBCの番組「 Q.E.D.(quod erat demonstrandum=実現検証)」で Dr. John DeHaanが豚の死骸でwick effectをデモした回がありました。

豚を選んだのは、人間の脂肪のつき具合に似ているからです。これを毛布にくるんで、ガソリンをほんの少し垂らして火花で点火しました。火の手が回るのに時間はかかりましたが、結局は回りました。炎は極めて高温ながら背の低い炎です。

結局、豚は完全に燃え、骨まで灰になってしまったんですけど、周りのものは下の床と上の天井、近くのテレビが1台燃えただけで、ほぼ無傷でした。人体自然発火と報告される事件と同じだったんですね。

wick effectのロジックはこうです。

火花(人体ならタバコや暖炉の火)が服を通過して、皮膚を割き、皮下脂肪に届くんですね。大体の犠牲者はひとりで眠りこけている時に発生したと思われるので、引火しても咄嗟には気づけませんよね。すると脂肪が服に染みていって、これがろうそくの芯の役割りを果たし、脂肪が尽きてなくなるまで燃え続けてしまうのです。

「えーでも人間より豚の方が脂肪多いでしょ」―いやいや実は、脂肪の中身は似たようなものなんですよ。これなら四肢が燃え残るのも、なるほど納得ですよね。手足の方が脂肪分は少ないので。

人体自然発火はどう起こる? 3
アイルランドで最近起こった事件も暖炉が遺体のすぐそばにあって、まさにwick effectの典型例なのです。検視官が単に「wick effect」という言葉を知らなかっただけなのかもしれませんね。

あと被害者のFahertyさんは糖尿病でした。化学品・実験器具サプライヤーのScienceLab社がまとめた「素材安全性データシート」によれば、インシュリンって高温で燃え易くなるんですよね...独り言ですけどね。

KRISTEN PHILIPKOSKI(原文/satomi)