DNPが開発した音楽コンテンツ用の電子透かし技術がちょっと惜しい!?

DNPが開発した音楽コンテンツ用の電子透かし技術がちょっと惜しい!? 1

音楽用ファイルの違法コピー防止機能というとDRMDigital Rights Management)が有名ですが、一部では音楽用ファイルにコピー制御情報や著作権情報を埋め込んで電子透かしを入れる技術もあります。こちらは専用のソフトでチェックしないと確認ができなかったりで、実用性が非常に低いそうです。

また、非常にアナログな方法になってしまいますが、DRMやファイル自体に電子透かしが入っていても、再生している音声をマイク経由で録音しちゃえば、簡単に違法コピーできちゃいます。しかも、最近は高音質で取り込めるマイクも安価に販売されていることもあって、元のデジタルデータと遜色ないような録音ができてしまうケースもあるようです。

そこで、大日本印刷(DNP)はマイク経由で録音した場合も違法コピーだと判別できるような電子透かし技術「ゲンコーダ Mark for COPY PROTECT」を開発しました。人間の可聴域をカバーした20Hz~20kHzの音源を利用する場合に、以下の2つの技術を組み合わせています。

DNPが開発した音楽コンテンツ用の電子透かし技術がちょっと惜しい!? 2

聴覚マスキングを利用した「妨害雑音:X」

1) 下限部の20Hz~400Hzの帯域を20Hz~200HzのA帯域と200Hz~400HzのB帯域に分ける。

2) 本来のB帯域の音成分に重ねて、A帯域よりも音が高く、音量が小さい「妨害雑音:X」をB帯域に埋め込む。

→通常の再生時には、A領域聴覚マスキングという現象が起きるため、通常の再生では妨害雑音は聞こえない。

 下限が音波帯域が200Hzからしか録音できない機器を利用して録音すると、A帯域の音が消失するため、聴覚マスキングが作用せずに「妨害雑音:X」が明確に聞こえるようになる。

音脈分凝を利用した「妨害雑音:Y」

1) 上限部の6kHz~12kHzのC帯域と12kHz~18kHzのD帯域に分ける。

2) C帯域に、本来のC帯域の音成分に強弱を加えた「妨害雑音:Y1」、D帯域に、C帯域と正反対の関係になる強弱を加えた「妨害雑音:Y2」を埋め込む。

→通常の再生時には、人間の脳がC帯域・D帯域双方の強弱変化を平準化しようとする補完作用(音脈分凝)の影響により、音楽に違和感を感じることはない。

 上限が12kHzまでの範囲でしか録音できない機器を利用して録音すると、D帯域の音が消失するため音脈分凝が作用しなくなり、「妨害雑音:Y1」を含んだC帯域の音が再生されるため、音楽に違和感を感じるようになる。

映画館でCAM撮り対策に使う技術(映画の映像に人間の目では見えないビデオカメラにしか映らない特殊なノイズ映像を重ねて流し、後でビデオカメラの映像を見ると、グチャグチャになって何が映っているのか分からなくなる技術)の音声版と言った方が分かりやすいかも知れないですね。

ただし、この技術が発揮される前提条件って、200Hzから12kHzまでの範囲でしか録音できない機器のみなんですよね。なので、録音する機器側が、20Hzから18kHzをカバーできてしてしまえば、何ら問題ないはずです。確かに、一昔前であれば、20Hzから18kHzをカバーしている製品は、ちょっと手が出せないような価格帯だったのかも知れません。しかし、技術の進歩で高機能かつ高スペックな製品の低価格化は著しい昨今、20Hzから20KHzまで録音できてしまうマイクとレコーダーの組み合わせって意外と安価で実現できるのではないかと思い、調べて見ました。

レコーダーの方は、安価で高機能なリニアPCMレコーディングを実現したと評価が高いTASCAMの「DR-05」(実売価格:8千円前後)の周波数特性を見てみると、20Hz~40kHz +1dB/-3dB(Fs 96kHz、EXT IN→LINE OUT、JEITA)と記載がありました。条件を軽々とクリアできています。マイクの方はどうでしょうか。同じメーカー同士の組み合わせで考えると、TASCAM純正マイクの「MC 834」(実売価格:10万円弱)あたりであれば、20Hzから20kHzまでカバーできるようですね。さすがに、マイクの方は高いものしかないのかなと思いましたが、他メーカーも見てみると、オーディオテクニカに安価ながら、20Hzから20kHzまでカバーできる「AT2020」(実売価格:8千円前後)というのがありました。

あくまでも、カタログスペックがフルに発揮されれば...の仮定になりますが、「DR-05」と「AT2020」の組み合わせ(実売価格:1万6千円前後)で、DNPが開発した音楽用の電子透かし技術の壁はクリアできちゃう訳なんですね。もし、5~10年以上前にこの技術が開発されていれば...音楽業界などは諸手を上げて歓迎したんじゃないかと思いますが、20Hzから20kHzまでカバーできる機器が手頃な価格で溢れている現在においては、音楽コンテンツ用のコピープロテクトとしては、そんなに大きな壁じゃないような気がしますね。

ユニークな技術なだけに少し残念な気持ちになってしまいましたが、この技術の有効な使い道としては、先ほどの映画のCAM撮り対策として映画の音声部分に適用してしまえばいいんじゃないかなと思いました。さすがに、CAM撮りで利用するビデオカメラで20Hzから20kHzの周波数特性をカバーするのは難しいと思いますので...そっち方面で有効活用できないものでしょうか。

あとはライブやコンサートや演劇などの音声録音の対策でしょうかね。録音された音楽等を流す部分以外は、ほぼリアルタイムに変換が必要そうなので簡単には実現できなさそうですが、身近に音声録音可能な機器がありふれているこのご時世ですから、そういった対策には効果テキメンではないかと思います。ちょっと、純粋に音楽コンテンツ用としてはキビシイんじゃないかなという感じですが、何らかの形で実用化される日が来るといいなぁ。と思っていますので、DNPさん頑張ってください!

音楽コンテンツの違法コピーを抑止する電子透かし技術 『ゲンコーダ Mark for COPY PROTECT』 を開発[大日本印刷]

DR-05[TASCAM]

AT2020[オーディオテクニカ]

(KENTA)