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iTunes Matchは音楽視聴の「未来形」なのか?

開始早々、恐れ入りますが...。
先日、米国でiTunes Matchのサービスが始まりました。これで米国のiTunesユーザーは、CDからリッピングするなどして持っている楽曲ファイル(のうち、iTunesに存在するもの)すべてをiPhoneなどから聞けるようになりました。しかもローカルにあるファイルをアップロードする手間もなく、手持ちの曲はiTunesから自動でiCloudに追加されます。
これまで端末から端末に移動させて聞いていた音楽をクラウドから聞くようになるなんて、なんだか一時代進んだような感じもします。でも、音楽アプリ関連の話題を中心に扱うサイトEvolver.fmのヴァン・バスカーク記者は、音楽ファンの視点からiTunes Matchに関して問題提起をしています。これは本当に画期的なサービスなのか、と。
どういうことなんでしょうか? 以下はヴァン・バスカークさんの記事です。
かつて音楽好きのハードドライブにある音楽ファイルのほとんどは、P2Pネットワークから入手したものか、CDからリッピングしたものでした。もしアップルの描く音楽クラウドのビジョンが世界中で実現されるなら、その未来は過去と大きな違いのないものになるでしょう。MP3ファイルが、CDからリッピングされるのか、音楽ブログからダウンロードされるのかという違いくらいじゃないでしょうか。
スティーブ・ジョブズは、ユーザーには音楽を「借りる」意志はないと考えていたのでしょう。だからiTunesが本当の意味でのサブスクリプションサービスの形態を取っていないのだと思います。もちろん、アップルのiCloud、そして最近ローンチしたiTunes Matchの機能は本当にスマートだし、便利なのですが...。でもこのシステムは結局、無限に続く見えないUSBケーブルを年25ドルで借りられるというようなものです。有料であれ無料であれ、音楽ファイルを「所有する」ということに変わりはないのです。
もちろんアップルもいろいろ考慮したうえでiTunes Matchを立ち上げたはずですし、音楽を「借りる」のでなく「所有する」ことの意義も十分にあります。サブスクリプションサービスでは、自分の音楽コレクションをサービスをまたいで利用したくても、そのための良い方法がないのです。
音楽ファンなら、気に入った曲をずっとキープしておきたいはずです。それはユーザーの一部、生活環境の一部となるべきなのです。なので、MOGとかSpotifyとかRhapsody、Napster、Rdioといった現状のサブスクリプションサービスのように、サービスをスイッチすると自分の音楽コレクションをなくしてしまうようでは困ります。仮にサブスクリプションサービスをまたいで音楽ファイルを利用できる状況になったとしても、アップルはそうしたサービスに参入しないでしょう。アップルがデジタル音楽分野に参入した動機は、自社製のハードウェアをより魅力的にして他社製品に乗り換えにくくすることにあったからです。簡単にスイッチできるサービスでは、アップルにとってのメリットは小さくなってしまいます。
音楽は空間的にポータブルに、たとえば家と車の間で持ち運べるだけでなく、時間的にもポータブルである必要があります。 数年、数十年と、人生を通じて持ち運べなくてはなりません。これは音楽ファンが潜在的なレベルで意識していることだと思います。特にデジタル音楽は、アナログなフォーマットと違って物理的な形がなく、ただでさえあやうい感じがするからです。
これまでにも何度か音楽の物理フォーマットが変わったことがありましたが、それには一定の痛みを伴いました。音楽ファンは同じアルバムをカセットやレコード、CDと買い直していきました。新しいフォーマットには新しい利点があり、そうせざるを得ませんでした。
デジタル音楽の場合、そうではありません。音質やアプリベースのフォーマットが徐々に改良されていくことを除いては、これは最後の視聴フォーマットです。だから、同じ音楽を何度も買い直す必要はありません。または少なくともそうであるべきです。
現状はiTunesや他の音楽ストアだけが、時間・空間を超えてデジタル音楽を所有する手段となっています。iTunes MatchとiCloudを使えば自分の音楽コレクションをクラウドに高速に(少なくとも他よりも速く)収めることができます。そうすれば、何度ハードディスクをだめにしようと、何台ノートPCをなくそうと、何台(iOSの)スマートフォンやタブレットやTVのセットトップボックスを壊そうと、一生涯そのコレクションを持ち続けられるはずです。
SpotifyやMOGやRhapsodyといった真のクラウドサービスでは、一生持ち続けられるという感覚が薄くなります。その理由はいくつか考えられますが、まず彼ら事業者がサービスから撤退する可能性があります。または他にもっと良いサービスが出てくるかもしれません。もしくは友達が、自分が使っているサービスよりも他のサービスが好きで、最終的に友達を取るか、サービスを取るかという決断を迫られてしまうかもしれません。
我々はこのあたりの事情を何となく感じていますし、ジョブズもきっとそんな感覚を理解していたのでしょう。ファイルを所有する方が、ファイルへのアクセス権を借りることよりも何かしっかりした感じがします。
でも音楽ファンの視点から見ると、iTunesのシステムにはアップルのハードウェアに縛られるということ以上に足りないものがあります。真のサブスクリプションサービスの方が、音楽ファンにとっては先進的でありがたい機能を実現しています。Facebookでは友達がSpotifyやMOGやRhapsodyで聞いている曲をチェックできるようになっているので、その可能性に気づいているユーザーも増えていることでしょう。
サブスクリプションサービスでは、どんなものでもすぐ聞けるのです。音楽ブログの曲、かつては興味がなかった古いヒット曲、FMラジオで聞いてShazamしたもの、などなど。新しい(または自分的に新しい)音楽を発見したい音楽ファンにとっては、その方が明らかに優れていて、冒険があり、しかも安価な手段となります。ヴィンテージのジャマイカンロックステディの楽しさを急に知りたくなったとしても、サブスクリプションサービスなら、今すぐ可能です。iTunesだと、来月には聞きたくもないものに数百ドルも費やす必要があります。またはBit Torrentクライアントを立ち上げて、無料でダウンロードするかということです。
僕はこの状況への改善策を提案し続けてきました。「ユーザーはすべてのサブスクリプションサービスをまたいで相互利用できる」という契約を結ぶなり、インフラを作るなりといった措置を取ればいいのです。そうすればみんなSpotify、MOG、Napster、Rhapsodyとどこへでもすぐにスイッチできます。
そしてユーザーのプレイリストやプレイ回数のカウント、曲への評価、アルバムアート、プレイリストへのサブスクリプション、ソーシャルなつながり、などなどもサービスをまたいで保持できるようにするのです。こうした相互利用性は、一部のサービス(たとえばiTunes)は特定のデバイスとセットになっていて他からアクセスできないことを考慮すれば、もっと重要になります。今からiCloudに肩入れしてしまうと、それは一生アップルの電話やタブレットを買い続けるという宣言になってしまうのではないでしょうか。
iCloudはiTunesユーザーにとっては便利ですが、音楽への好奇心を満たすものではありません。P2Pを過去のものにしたいすべての人にとっても、良いものではありません。iTunes Match立ち上げに際してはアップルが大手レーベルに対し総計1億ドルを前払いしたと言われていますが、そんな大手レーベルに属さないインディーズバンドや小規模なレーベルにとっても、マイナスになるのかもしれません。
...と書いてきましたが、アップルの戦略としては、デジタル音楽における独占支配をクラウドにも広げつつ、ハードウェアのユーザーの求心力も高められるという意味で、ほぼ完ぺきだとは思います。
たしかに、サブスクリプションで定額聞き放題のサービスの方が、アクティブに音楽を探求するには極楽なのでしょう...。
米国ではこんな「iTunes MatchとSpotifyなどなどと、どっちがいいか」なんて話が実体験に基づいてできるんですね。どちらも基本的には使えない日本にいる者としては、さびしい感じがいたします。
miho(米版 Eliot Van Buskirk)
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