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プライバシーが死んだ日

2011.11.18 19:00 [2] [0]

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僕と君の問題は、もう僕と君だけの問題ではないのかもしれない。

思ってもみない事が、思ってもみない人から、思ってもみないところへ発信されてしまう。1度発信された情報は取り返すこともなかったことにすることも不可能です。少し前なら「道でおもしろい人みたよー!」と友人間で話す程度だったのが、今はリアルタイムで写真/動画つきでネットにアップ。あっという間に世界に駆け巡ります。プライバシーはない、プライバシーは死んだのだ。米Gizmodoのデイビッド記者の体験談をどうぞ。


ある日、車の窓を開けたままで妻と口論になった。口論はヒートアップして汚い言葉も飛び出したし、声も荒げた。Volvoのダッシュボードを数回殴りもした。どちらも譲ることもなく、どちらが正しいかという結論もでず、この口論は車が駐車場に入っても続いていた。

なぜこんな話をしているかというと、遅かれ早かれ耳にするだろうと思うから。どうせ聞くなら自分の口から話したい。

言ってしまえば、これはアンディ・ボイル(Andy Boyle)さんから学んだレッスンである。ボイルさんがバーガーキングにいたとき、近くで若いカップルが口論をしていた。カップルの声は大きくボイルさんを含む他のお客さん達の耳にも入ってきた。もちろん口論をしていたカップルも自分達の声が大きく回りに聞こえていることはわかっていた。それなのに、公の場で口論を続けたのはカップルが選んだことだ。つまり、プライバシーを捨てて、周りの人に聞かれてもしょうがないと判断したということだ。が、一体誰がこのカップルの口論がTwitterでリアルタイムでブロードキャストされ、あげくの果てにABC Newsで取り上げられるほどの大事になるなんて思うだろうか?

食べかけのワッパーから手を離して、ことの行方をツイートしようと思った彼にはありがとうと言いたいくらい。ボイルさんはこの一連の流れを「レストランで隣のテーブルのカップルの結婚崩壊会話きいてる。アーロン・ソーキン(米国の脚本家)でもこれほど上手くは書けまい。」のツイートで実況開始。

口論の内容を詳細に実況ツイート、ついにはカップルの写真や動画までもアップした。

とてもプライベートなことをTwitterやFacebookで公開するなんてのは今に始まったことじゃない。多くの人がケンカの内容や、結婚生活のこと等をネット上で共有して話し合っている。が、それは大抵の場合、本人の意志による共有である。自分の生活のどの部分をソーシャルメディア上で共有するか、それを大抵の場合は本人が選ぶことができる

しかし、スマートフォンや新たなテクノロジーの登場で他人との距離の取り方、敬意の表し方が変わってしまったのかもしれない。いつ何を共有したいか、それを決めるのはもう自分ではない。Twitterを使うかFacebookを使うか、それを決めるのも自分ではない。家から1歩外にでればそこはもうソーシャルメディアの世界なのだ。

つい最近、超有名シェフのアンソニー・ボーデン(Anthony Bourdain)氏の裸の写真が盗まれ、ゴシップ誌のTMZに売られたという騒ぎがあった。が、ボーデン氏はTMZ発売前に自ら「TMZに載るみたいだけど、どうせなら今みたら。ほらよ」ってな具合にジョークを交えて写真をTwitterにアップした。

この流れは、ゴシップ好き文化を飾るものでもなんでもないが、きっとボーデン氏は自分の裸写真がでてきても特に驚きはしなかっただろう。彼は有名人だ。公の目が彼に向けられるのを選んだ人間だ。時にはこんな騒ぎに巻き込まれることがあるというのも予想できただろう、もちろんそれは彼が有名人という役割をよく理解しているからだ。

しかし、アンディー・ボイルさんの行動はたんにブロードキャストする/実況する流行にのっただけの行動だ。私たちは知らない間に「誰でも有名人」の世代に足を踏み入れているのだ。有名人として美味しい思いをすることもないのに、有名人になるというリスクを背負わされる世代なのだ。新たなリアリティTVショーだ、好むも好まないもなく知らない間にスターになってカメラが1日後ろからついくる、「アクション!」と1日怒鳴られる、そんなショーだ。

せめてもの救いは、このカップル口論を実況するという残念な行為に対してそれを見た周りの大半の人間が批判的だったということ。批判は公共の場で口論するというカップルの行動にではなくて、ボイルさんの実況するという行為に対して。少なくとも僕が話した人達は、実況の行為に反感を抱いていた。実況自体を見たくないと思い、読まなかった人もいた。他人の生活への興味よりも、それを伝えようとする人の行為への嫌悪感が勝ったのだ。

バーガーキングでボイルさんが聞いたと思ったのはとあるカップルの結婚破局への会話だった。が、彼が本当に聞いていたのはモラルと抑止が崩れて行く音だ。新たなテクノロジーと間違った判断が手を結ぶのを黙ってみているわけにはいかない。ネバー・エンディング・ソーシャルメディア・ストーリーをどこかで変えなくてはいけない。

少なくとも、次に妻と口論をする時は車の窓は閉めようと思う。


家から1歩外にでればそこはもうソーシャルメディアの世界」というのは、怖いながらもわかります。共有は自分のモノを共有するだけでなく、自分の見たモノ聞いたコトなら例え人のモノであっても共有する。

「ねぇ、聞いて。今日電車でね。」なんて帰宅して母親や友達にしゃべって共有していたあの時とは、その共有の規模が違うのです。規模が違えばそれによって生まれる何かの規模も違ってくる。プラスに働くこともあるでしょう、しかしマイナスに働くこともあるのです。恐ろしいのは共有できるテクノロジーではなく、共有の規模を理解できないユーザーの意識、デイビッドさんの言う「テクノロジーと間違った判断が手を結ぶ事」なんです。しかし、色々な人が生活する社会、テクノロジーとプライバシーと共有するという行為は、さらに複雑に共存する道をたどって行きそうです。


そうこ(David Pell 米版

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