Siri、それはAppleの裏切り

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約束は守るためにあるのか、破るためにあるのか。

米GizmodoのMat記者がSiriで感じたAppleの裏切りとは。

昔々、僕はAppleに誓いを立てた。

「パソコンから電話からステレオ、僕のテクノロジーライフの全てをコントロールしていいよ。プレミア価格でもいいよ。Appleの製品にどっぷりつかるよ、本も音楽も映画もアプリもAppleから買うよ。そのどれもがApple製じゃない端末では使えないとしても、それでもかまわないよ。」

Apple製品に囲まれることで、それらにちょっとお金をかけることで、その代償として期待するのは実に簡単になこと、使える、ということ。ただそれだけだ。Apple製品を使っている人は、僕と同じような取引をしたんだろうと思っている。

故に、最初にSiriの広告を見た時、何かとても素晴らしいものなんだろうと思った。今までのApple製品がそうであったように何か期待すべきものだと、そう思った。消費者が使えるレベルの初めての人工知能。電話に人工知能のアシスタントがはいってくるなんてどんなに素晴らしいことだろうか、と。

さて、1ヶ月以上Siriを使ってみて、まだあの時期待した何かを見つけられずにいる。人工知能を持ったアシスタントの代わりに僕が見たものは嘘、Appleが裏切った誓いだった。

昔々に誓いを立てた僕が望むもの、それはApple製品はそのプレミア価格に見合うだけのものでなくてはならない、ということ。今までAppleは価格に見合う製品を生み出してきた、例えそれが市場から1歩遅れることになったとしてもだ。iPodは世界初のミュージックプレーヤーではない、しかし世界で最良のプレーヤーだと言えるだろう。iPhoneは世界初のスマートフォンではない、しかし人々の生活を今までにはないくらい劇的に変えたと言えるだろう。iPadは世界初のタブレット端末ではない、しかし僕はクパチーノが首を縦に振るまで購入を待った。結果はどうか、どれも待つ価値があった製品だった。

そしてSiri。もしそこそこのものでいいのであれば、僕はここまで待たずにとっくにT-Mobileの49ドルのAndroidを買っていただろう。が、僕は待った。待って待って、そして数百ドルをだしてAppleのiPhoneを買ったのだ。そこに期待したのは、今までApple製品に感じた待つ価値値段の価値体験の素晴らしさである。

AppleのiPhone 4Sの広告はどれもかなりのSiri押しである。まるでAppleの新CEOはSiriであるかのような押しだ。広告はテレビだけではない。Appleから送られてくるメールもSiri押し一色である。

この広告には大きな難点がある、それはSiriは未完成のそこそこの出来だという点。Siriはベータ製品だ。公式にベータだ。AppleサイトのSiriのページには小さくだが「ベータ」のタグがある。

...ベータ? ベータってのはGoogleの専売特許だろう。Appleがベータ版を出すときは、大抵は一般ユーザーの手には届かないところにある。欲しい人は取りにいける、だが使えと無理強いすることはなかった。が、今は広告までだしているではないか。Appleの広告を見てiPhoneを購入した人にとって「ベータ」の文字は何も意味を持たないだろう。

しかし、Siriの認識力はまさにベータのレベルだ。Siriが僕に返した言葉で1番多いのは「it didn't quite get that.(よくわかりませんでした。)」 僕のせいなのか? 僕のちょっとした南部訛りが悪いのか? 僕のモゴモゴした喋り方がダメなのか? 何が悪いのかはわからないが、ただ1つ言えるのは、僕のNexusはSiriが聞き取れないことの大半はきちんと理解できるということだ。

僕の言葉が聞き取れない以上に最悪なのは、僕が意味したことを理解してくれないということ。大抵の場合、Siriは本当にバカ。いやもちろん、Siriは言われたことをすることはできる。が、Appleが発表して約束したような、ニュアンスを汲み取るようなことはできやしない。最近のSiri中絶問題なんてまさにそれの極みだ。(※中絶問題は独自の検索開発の難しさが表にでることになりましたね。しかし、これこそまさにニュアンスが汲み取れないということの証明でしょう。)

Siriのコマーシャルでは、女性がSiriにとある病院への1番速く行く方法を尋ねている。Siriがきちんと返答できるのはなぜか、それはこの女性が行きたい場所を的確に伝えているからだ。どこに行きたいのか、その場所をきっちりと的確に伝えればSiriは仕事ができる。が、現実ではそんな的確な話し方はしない。現実での会話はもっとニュアンスを含んだぼんやりしたものばかりじゃないか。その現実世界の会話ではSiriはまるで役に立たない

Siriに、○○病院への1番早い行き方と聞けば答えることができる。が、救急病院への1番早い行き方と聞けばそのエリア内の病院のリストを返すだけだ。そのリストには病院への距離はあるが、どれくらいかかるかの時間や交通情報はない。つまり、病院への1番早い行き方なんて示してくれはしないのだ。広告は嘘はついていない、しかし事実を伝えるのには大きく失敗している。

さらにコマーシャルでとある場所への行き方を尋ねた後のシーンはでてこない。なぜか、それはSiriがナビできないからである。賢さが今一歩なGPSではナビが上手にできないのである。僕の2年前のAndroidはできる、だがSiriはできない。Siriはリストを表示するだけだ、そこからは自分の目で追っていくしかない。指定された道を外れようものなら、Androidは新たにルート検索して道を表示してくれる。だがSiriは自分が尋ね直さないと何も教えてくれはしない。これがパーソナルアシスタントか?

Siriの広告と現実にはまだまだギャップがある。例えば音楽。CMにあるように「Coltraneの曲を再生!」と言ってもSiriは「Coal Trainは見つかりませんでした。」と答えるばかり。...やはり僕の話方が悪いと言うのか? Siri、君はいろいろな人の話し方を踏まえて理解するような頭はないのか?

他にも基本的な問題がある。例えば「send my wife a text message and tell her I want to meet her for lunch. (妻にメッセージを送ってくれ。彼女に伝えてくれ "お昼は彼女と一緒に!"と。」と言うと、まさに言葉の通り「お昼は彼女と一緒に!」と送るのだ。彼女に伝えてくれがコマンドとなっており、その前後の文章を理解していない。ここでいう妻と彼女が同一人物だということがわからないのだ。もしそれが理解できればメッセージは「お昼は君と一緒に!」となるはずだ。HerをYouに変えることができるはずだ。確かに、細かいことだろう。が、その細かさこそが僕がAppleに期待することなのだ。その細かさが今までApple製品が行ってきたことなのだ。

他にも基本と言えることがSiriはできない。電話についている人工知能のアシスタントに求める基本だと思えることがSiriはできない。それは例えば、バッテリーの残りがどれくらいか教えてくれるとか、Wi-Fiをオン/オフにするとか、容量が後どのくらい残っているかとか、マナーモードに変えるとか。ユーザーが期待するような実に簡単なことがSiriはできないのだ。

サードパーティーのアプリにはほとんど対応できない。アプリを起動することも落とすこともできない。カメラアプリを起動している時に写真を撮れと言っても「写真家タイプじゃないし」なんて言ってくる。なんとも役にたたない音声認識である。写真だってそうだ。iPhotoで妻の写真を画像認識させているというのに、同期した後Siriに妻の写真を見せてというとこれまた全く理解できない。もう、なんなんだよ!

今この記事を書いている最中も周りに3つほどWi-Fiが飛んでいるというのに、Siriに尋ねるとWi-Fi見つけられないと言う。もう、なんなんだよ!

さらに最悪なのは、Siriは常にネットワーク接続が必要ということ。接続が切れれば、アシスタントは消える。小さくかかれた「ベータ」の文字で許せる範囲を超えている。

少なくとも僕にとっては、Appleに誓いをたてたことのある僕に撮っては、Siriは賢いアシスタントとは言えない。細かく指示されたことに従うだけのただの音声プログラムだ。それも、その指示が理解できれば、指示した人の声を聞き取れれば、というレベルのね。これがもし、GoogleやMicrosoftの製品ならば、そんなもんかと諦めもついただろう。だがこれはAppleだ。完璧を売って来たAppleだ。期待を裏切らない、約束を果たすAppleの製品だ。そう思うとSiriで感じた期待への裏切り、広告と現実のギャップへの失望は大きい。僕が誓いをたてたのは、こんなAppleじゃないはずだ。



期待が大きければ、失望も大きい。今までずっと期待に応え続けてきた者からの裏切りはどんなに大きいものでしょうか。Appleが裏切ったのか? それともユーザーが期待しすぎているのか? Appleの言う最高のユーザーエクスペリエンスは何だったのだろう。

そうこ(Mat Honan 米版