初めてネットストーカーにあった時の話をします

初めてネットストーカーにあった時の話をします 1

ストーカー被害、経験ありますか?

米Gizmodoでネットストーカーの体験談が掲載されています。体験したのは、Wired.comのコミュニティマネージャーであるArikia Millikanさん。彼女があったネットストーカーとは?

私がサイバーストーカー(ネットストーカー)にあったのは、大学1年生の時でした。

あれは2004年、ミシガン大学でエンジニアリングの勉強を始めたばかりの頃の話。今まで、誰と友達になるとか、パーティーに行くとか、男の子との会話を楽しむとか、そういったことに制限をつけられることはなかった。

が、それでも母親が厳しかったので、大学生になったあの年はやっと初めて彼氏ができるチャンスがやってきた時だったし、初めて自分のコンピューターを手にして、学校の宿題以外では使えなかったインターネットを制限を受ける事無く好きなようにアクセス出来るようになった時だった。つまり、初めて自由というものを味わっていた時だったのだ。

そんな時だったので、初めてバイオメディカル・エンジニアリングの授業に行き、そこで最初にAndyを見た時、私の胸はそれはもうドキドキした。Andyはまさに理想の男性だった。私好みのツンツンとした黒髪ヘアーに髭、さらに私が聞いた事が無いどっかのバンドのTシャツを着ていたAndy。まさにどストライク。1回目の授業で教授が出した質問に見事に答えたのも素敵だった。

ある日、私は化学の試験の後タバコを吸いながら、2人の男子BillyとAmanと試験が難しかった話をしていた。エンジニアの授業は離れたキャンパスで行われていたので、そこから3人一緒にバスに乗りさらに会話は盛り上がった。この出会いから一緒に勉強するようになり、私たちは友達になった。

驚いたことに、Amanはなんと寮でAndyのルームメイトでBillyはすぐ近くの部屋に住んでいた。なんとラッキー、仲良くなった気の合う男友達2人に、理想の男子Andy。まさに男子の三連単である。

それからは、勉強するためにBillyとAmanの寮に行ったり、勉強するテイで行って結局はウイスキー飲んでゲームして遊んだりしていた。階上に住んでいるバンコクからのスーパーフェミニストでハードコア音楽を好むKelleyも加わり、私たちはさらに良きライバルとして仲を深めていった。

それでも、Andyだけは謎めいた部分があり、どこかに壁があったように思う。私がなんとか会話を盛り上げようとしても、彼はシャイで丁寧ながらも無愛想な態度で1人で勉強しにどこかへ行ってしまうのだ。あんなに男らしい見た目なのに、授業の外では内気な彼に戸惑ったものだが、思えば彼を前にした私の態度もたぶん緊張と期待でおかしなものだったのだろう。Andyと私はなかなか距離を縮められずにいた。

そんなどこか距離がある私たちも、政治への興味という共通点はあったように思う。彼は超左翼だったし、私はいつもJohn StewartのDaily Show(政治ネタのコメディ番組)を見ていた。11月の大統領選挙、この国の次の4年間を決める大事な場面に私たちはみんなで集まってテレビを見ていた。選挙の結果には皆愕然とした。

特に彼は、今まで彼がこんなに喋るのを聞いた事がないと思えるほどに批判した。私はこれにはビックリし、彼にどういう話をすれば興味を持ってもらえるかというのをメモしたのだった。私はそれほど彼に夢中になっていたのだ。

次の日、スクリーンネームHowCouldBushWinという誰かからメッセージがきた。(この時はまだGchat普及前で皆AIMを使っていた時代だ。さらに、MySpaceなんかに自分のスクリーンネームを載せていれば知らない誰かからランダムにメッセージが来ていた。Facebookが登場して大学生にとって新たな交流の場が生まれるのは、この夏のことである。)

HowCouldBushWinはチャットで選挙に関する話を始めたが、その内容はいかに納得のいかない酷い結果かというもの。チャットに返答を返すと、またあちらから返ってくる。質問はお互いに続き、しだいに私もチャットの会話に引き込まれていた。「まぁ、いいや。もう行かなきゃ。」最後にそうタイプして、夜の予定があったのでチャットを離れた。

その夜、部屋に戻ってくると、新たなチャットのメッセージが待っていた。それは面白い写真へのリンクでその日はそれを見て、笑って、そのまま寝た。

次の日、授業が終わるとまたメッセージが来ていた。私は姿を明かせば結局はBillyかAmanなんじゃないかと思いつつ返答した。正体がわからない誰かとのチャットは進み質問は続き、進めば進むほどさらに会話に引き込まれていった。この誰かは、明らかに私のことをもっと知りたいと思っている。現実ではシャイでアプローチできない誰か、又は現実では見せない違う部分を知りたいと思っている誰かだ。私は、誰かの興味を惹いているというが嬉しかった。

私は、彼がどこで私のことを知ったのかを聞き出そうとしたが、彼は質問を上手い事交わしながらさらに私を会話に引き込んでいった。思うに、私が彼の正体を当てようとするのを見て、彼は楽しんでいたのだろう。Billyでしょと言えば、少しの間は当たったような態度をとって、さらに私を会話にひきこんでいった。

こんなことくだらない。こんなことしてる暇はない、勉強もしないといけない。そう思った私は、最後にもし彼が正体を明かしてやって来てくれるのであればと思い、自分の誕生日パーティーに招待した。彼の正体はどんな人だろう、夢にまで見た彼は誰だろう、スマートで礼儀正しくてちょっとシャイな彼は誰だろう。私は彼の正体が実はAndyである事を夢見て、自分の誕生日パーティーへ向った。

Andyはパーティーに来なかった。パーティーに来ていた人の中には、実は自分がチャットの相手だと明かす人はいなかった。しかし、翌日のチャットで、HowCouldBushWinは、昨夜のパーティーで君はキレイだったと褒めた。嘘ばっかり、パーティーに来てなかったくせに、私の知り合いじゃなくてネットのただの変な他人のくせに、私のスクリーンネームはどうせMySpaceかどっかでみつけたんでしょ、私はそう彼に反論した。

すると彼は、じゃぁどうして昨夜君が着ていたものを僕が知っているんだい? と言って来た。これには驚いた。映画スクリームのドリュー・バリモアの気分だ。

私は彼に消えてよと返していた。正体不明の誰かは、私の思う理想の誰かであることを願っていた。しかし、そうでないとわかれば、もうこんなチャットはおしまいだ。すると彼は正体を明かすと言って来た。正体、それが知りたいがために長い事チャットをしてきたのだ。知りたい。知らなくてはならない。正体を明かすという約束をすると、チャットは終わる事無くまた続くこととなった。

さらに、私はサインオフしたくないと思っていた。これは私のネットだ。友達との交流の場であり勉強をする場だ。オンラインである必要がある。結局、オンラインになる度に彼からメッセージが来ては、今日こそは正体を明かすというチャットが始まることになった。

その後、ついに彼は同じ学科の誰かであるというとこまで私は突き止めた。私が来ていたレディオヘッドのTシャツが好きだと彼は言った。しかし、そのTシャツはルームメイトから借りて1度だけ授業に着ていったものだ。それ以外では来た事がない。やはり彼は同じ学科の誰かなのだ。

授業中、全ての男子を懐疑的な目で見るようになった。誰か私を見つめている人はいないか、他の人よりも多く長く私と目が合う人はいないか。ある日、HowCouldBushWinは、その日の授業で私に合図を送ると言って来た。自分が誰かわかるように、授業中に合図を送ると。その日の授業は周りに集中していたものの、ついに合図を見る事はなかった。その後、彼は合図を送ったと言って来たが、ここまでくると私は満たされないイライラした気持ちの方が大きくなってきた。

もうたくさんだ。私は、HowCouldBushWinをブロックすることにした。ブロックしてしまえば、なんだかホッとして、もうこれは終わったことだ正体がわからなかったのもしょうがないと思うようにした。

次の日の夜、今度はHowDidBushWinがメッセージを送って来た。

HowDidBushWin:話そうよ。僕が誰かを教えるよ。

私:OK。

HowDidBushWin:ほらね、話してくれると思ってたよ。

私:誰なの?

HowDidBushWin:簡単に言えることじゃないんだ。

チャット会話は数時間続き、また彼の正体が知りたくて知りたくてどうしようもなくなった。結果、HowDidBushWinのスクリーンネームもブロックすることにした。すると彼はさらに他のスクリーンネームで話しかけてくるようになった。

HowdBushDoIt、ブロックした。すると次は、Conan4Pres。

...Andyはコナンが好きだったな。もしかしてAndyなのか? しかし、この正体不明の誰かからのメッセージは全て無視しなくてはいけない。実は正体は私の望む誰かだと思わせるのが彼の作戦なのだ。なぜなら彼がなりたいのは、私の望む誰かなのだから。

彼は私の夢見た人ではない、だが私の知っている誰かであるはずだ。Billy、Aman、Andyがつるんでいる男友達の誰かだろうか。いつもでっかいヘッドフォンをしてMMORPGをしてるあの男だろうか。キャンパスでスクーターに乗っている彼らの別のルームメイトのあの男だろうか。SMポルノに誘おうとした階下に住んでい4年生のあの男だろうか。1度も誘いに応じていないけれど、いつもクラブとかに誘ってくる化学の授業が一緒のシャイなギークのあの男だろうか。ハロウィンのパーティーで会ってから最近デートに誘ってくるあの男だろうか。

考えれば誰もが怪しい。しかし、同時にこの誰でもないのかもしれない。もしかしたら1度も話したことがないような、Facebookで私のスクリーンネームを偶然見つけただけの全く他人の誰かかもしれない。正体をつきとめる証拠はない。そうこう考えている間もストーカーはその手を緩めることはなかった。

icanmakemoreforu:僕の正体がわからなかったら、悲しいでしょ。

ブロックした。

talktomearikia:頼むよ。話そうよ。ちゃんとするから。

ブロックした。

pleasearikia:そのうち、君が欲しいものをあげるよ。

pleasearikia:話してよ :(

pleasearikia:話してくれたら、君のことを想って俳句作るよ。

pleasearikia:何でもするから。今、1度だけ。5分だけ。

pleasearikia:僕はおかしくなりそうだよ。

pleasearikia:イライラしてきた。

pleasearikia:これで君は幸せなのかよ?

また彼と会話というか、議論をすることになってしまった。非常識なメッセージを送った後なだけに、彼は正体を明かせば一生嫌われてしまうかもしれないと言う。正体を明かさなければ、現実ではまだ関係を保てるかもしれない、と。そんなことはないと説得しても、やはり彼は正体を教えてはくれなかった。結果、私はまた彼をブロックすることになった。

授業にでても全く集中できないので意味が無い。私は授業への欠席が増えていった。

その頃になると、友達数人にはこの状況を打ち明けていた。中には心配して、自らストーカーのスクリーンネームに話しかけ正体をあばこうとしてくれる友人もいたが上手くいかず、結果彼を怒らせるばかりだった。彼はだんだん私へのメッセージが攻撃的になっていった。攻撃的なことを言って来た後は、必ず謝ってブロックしないで、正体を明かすと言って来た。

私も私で、彼の正体が諦めきれずあの手この手で彼にアプローチしてしまった。どこかで会おうと言うと、会うというアイディアでいろいろ会話を盛り上げるものの、彼は結局それには応じないのだ。だから、またブロックすることになる。しかし、翌日には新たなスクリーンネームでまた話しかけてくるのだ。

stalkerdearest:なんでブロックするわけ? なんでこんなにいろんなスクリーンネームを使わせるようなマネするんだよ。

そして、夜食に私が注文しているサンドウィッチはあれだこれだと当て始めるようになったのだ。これがきっかけでついに、私は警察に相談することにした。誕生日パーティーで来ていたドレスの話をしたあのドリュー・バリモアみたいな夜からずっと保存していたメッセージを全て印刷し、キャンパスポリスの所へ行き、嫌がらせを受けているから辞めてもらえるようになんとかしてほしいと相談にいった。

しかし、キャンパスポリスにしては、物理的に嫌がらせをうけていない以上は何もできないし、やり方がわからないのでIPをたどることもできないという状態。彼らにとってみれば、物理的に被害を受けていない私の相談は、所詮おかしなものだったのだろう。

彼からのメッセージなしにオンラインにはできなくなった。オンラインにすれば必ずすぐに彼からメッセージがくる。オンラインにしないなんていう選択はない。勉強するためにも、友達と会話をするためにもオンラインにしなくてはいけない。心配は増すばかりで、コンピューターストーカーから逃れて自分をごまかすために夜遅くまで飲みに行き、授業は欠席するという生活が数週間続くようになっていた。

友人は皆心配していた。誰かとつき合うなんてことは考えられなくなった。私に近づいてくる人はみんなもしかしたらストーカーかもしれないと考えるようになった。

ストーカーは、もし現実で君がストーカーの正体はあなた? と聞いてきたら正直に答えると言いだした。そこで、私は怪しいと思っている人には、聞きにくい質問だがかたっぱしから尋ねるようにした。「僕が君のストーカーを? 本気で言っているの?」そう言われても謎を解くために私は必死になった。

ある日、授業の後ついにAndyにも質問をしてみた。今までの状況を説明すると「最悪だね。」と彼は同情してくれた。それを聞いて私は、犯人は貴方じゃなかったの? とつい言ってしまったのだ。言っても怒らないから言ってと彼に訴えると、彼は笑っただけだった。それはそうだ、犯人が彼のはずはないのだ。わかっていたのにきいてしまった。私はしまったと思い、彼のルームメイトが犯人かもと言ってみたがすでに遅い。よくそんなこと考えるねと彼は私に呆れ怒った。憧れていたAndyとの関係はこれでおしまい。自ら終わらせてしまったのだ。たぶんこれは、人生で最大の屈辱の瞬間だったと思う。

部屋に戻ると、新たなスクリーンネームからまたメッセージが来ていた。

ストーカーは取引を持ちかけてきた。取引の内容は、私が正体だと思っているのは誰かを言えば、向こうも正体を明かすというもの。取引には応じなかった。彼は、間違うのが嫌だから意地はってるだけだろうと言ったが、ブロックした。

また新しいスクリーンネームonemorestubborn。

ブロックした。

最終的に、彼は18個ものスクリーンネームを作り、私はそれを全てブロックした。承認をしないと連絡がとれないようにAIMの設定を変更した。なんだか負けた気がした。素晴らしい人々との未知の出会いを奪われ、オンライン上での交友関係を制限されることになった状況が悔しかった。それもこれも、どこかのしょうもない男が、オンライン上で自分の感情をコントロールできなかったばっかりに。

その後、私はエンジニアリング学部を辞め、文学部に転向することになったのだが、それはストーカーが原因だったわけではない。が、ストーカー事件は私の大学生活の初期に起きたことだったので、大学生活のトーンに影響したし、もちろん成績にも影響したと言わざるをえないだろう。エンジニアリング学部は20%しか女子がおらず、否応にも女子生徒は注目を浴びる。

それが私は気になり、誰に対しても懐疑的な気持ちを持つようになってしまった。ついには教授からも変な目で見られているような気がして来た時、エンジニアリングが私のいたい場所ではないと思った。女性が少数で、多くの男性から好奇の目に晒される環境にはいたくないと思ったのだ。また、閉じられた場所で勉強するよりも、外に出て行く方が自分には合っていると思った。そもそも私は社交的なのだ。

結局、ストーカーが誰だったのかはわからないまま。今でも、あれは誰だったのかと考えることがあるけれど、その度にやはり思い当たる人もでてこない。

あの体験は、言ってしまえば精神的にレイプされたようなものだ。大学生活に傷をつけられた。もちろん、その後は気を取り直したわけだが。しかし、今でも誰かわからない人から連絡があり1分もふざけられようものならパニックを起こしそうになる。

だから、4日前に知らない誰かからメッセージが送られて来た時、映画ラストサマーのジュリーのような気持ちになったのだ。私に送られてきたメッセージにはこう書かれていた。

「君が僕に恋してたのわかってるよ。まぁ、それを認めない理由も明白だったけどね。まず僕はあの時彼女がいた。けど、僕は今独り身なんだよ。」

大学時代のあのストーカーの時と同じように、まずはドキドキした期待があった。もしかして本当に昔恋したあの人かもしれない。あの人であって欲しいと心から願った。この頃なんだか寂しいので、昔の友達の誰かだといいなと期待したのだ。同時に、またあのストーカーじゃないかと心配する気持ちもでてきた。

特に、誰か当てようと数回チャレンジして当たらなかった時、その心配は大きくなった。もう2度と同じ間違いはしないと今回は誰か探ろうなんてことはせずに相手にはしなかった。

私にネットストーキングした人はどれだけあの行為が私を傷つけたかを知ってほしいと思う。そしてコレを読んでいるかもしれない他の誰かもネットストーキングの怖さを知ってくれたらと思わずにはいられない。

知りたいという好奇心は、人間の基本となる心ですよね。しかし、その知りたいという気持ちは強いが故に自分でも手に負えなくなることがあります。相手のことを知りたい、もっと話したいというストーカーの気持ち。正体が誰か知りたいと思うあまり、ブロックしても時に会話に応じてしまう被害者の気持ち。誰かわからない、どこにいるのかわからない、何故興味を持たれているのかわからない。わからないことは人を不安にさせます。その不安が受け止められないほど大きくなった時、人は心のバランスを崩してしまうのですよね。

現在、Arikiaさんの時代よりもネットを介してコミュニケーションをとる手段が増えています。しかし顔を見えない相手には気楽に嘘をついてしまうものです。顔が見えない相手の気持ちを考えるのは、顔が見える相手に比べて難しい。でも、より広くコミュニケーションがとれるようになった今こそ、今まで以上に「相手」というものを考えなくてはいけないのでしょう。そして、見たくないものも目にはいってくる今、見たくないものはきっぱりとブロックしてしまう自信の強さと潔さも今まで以上に必要になってくるのでしょうね。

[originally posted on The Millikan Daily, Arikia MillikanM]

そうこ(ARIKIA MILLIKAN 米版