抗生物質が効かない細菌「NDM-1」、大人の事情で対策は進まず

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恐ろしいことになっているのに...。

世界でもっとも人口密度の高い都市のひとつ、ニューデリーは常に公衆衛生上の問題を抱えていますが、その中でも、現在問題になっている細菌は緊急度の高いものです。その細菌は広く使われている15種類の抗生物質をも分解してしまう「NDM-1」と呼ばれる遺伝子を持っており、感染した人に抗生物質を投与しても効かないのです。この遺伝子を持つ細菌自体をNDM-1と呼ぶこともあります。

雑誌「The Atlantic」によれば、インドでは薬剤への耐性を持つ細菌が水たまりや水道水から検出されており、そのうち、13パーセントがNDM-1遺伝子を持っています。NDM-1遺伝子を持つ細菌に感染した人が病院に行っても、現状では医師にできることはほとんどありません。通常は最終手段として使われるカルバペネム系抗生物質も、NDM-1には基本的に効果がありません。

インドには抗生物質処方に関する法律がなく、不適切な使い方が多く見られます。裕福な人たちが必要ないときにも抗生物質を使う一方で、貧しい人たちは手に入る薬は何でも、可能な限りの量を服用してしまいます。結果的に、投与期間が不十分になって細菌は死に絶えず、むしろ薬に適応して強化されてしまいます。

インドの生活環境や医療の状況が細菌のまん延を助長している一方、NDM-1への対策は政府や企業の思惑によって遅れています。政府当局や政治家たちは諮問委員会を組織したものの、NDM-1の広がりはそこまで深刻なものではなく、インドの医療ツーリズム(訳注:医療目的での旅行。安価な整形手術などのためにインドを訪れるケースが増加している。)を妨害しようとする第三者の陰謀に過ぎないと主張しています。また製薬会社は、欧米以外の市場向けの薬を開発しても経営上のメリットが少ないと考えているようです。

欧米の病院では抗生物質や殺菌剤に弱い「グラム陽性菌」が支配的であることが多いのですが、インドや他の熱帯地域の国では「グラム陰性菌」がより多く見られます。グラム陰性菌には固い膜があり、抗生物質や消毒薬に強いのです。製薬産業の研究開発はほとんど欧米市場に向けられており、Public Health Foundation of India(インド公衆衛生財団)のラマナン・ラクシュミーナラヤン氏によれば「インドのような国はグラム陰性菌に対応する新薬をただ待つしかない」状態です。その間にも、感染して何もできずに死亡する人は増える一方です。

そんな事態が大人の事情で軽く扱われているのは、やりきれないものがありますね...。

Photo by Thinkstock/Getty Images

[The Atlantic]

Adrian Covert(原文/miho)