下手じゃないのに響かない歌。どうしてこうなった!?

下手じゃないのに響かない歌。どうしてこうなった!? 1

高機能な音楽編集ソフトの登場により、レコーディングの作業環境は大幅に向上してきました。一般的な聴覚では聞き分けが難しい加工もできるので、誰でもそこそこのクオリティが出せる時代に。でも、こういった機能が逆に感覚を狂わせてしまい、楽曲制作をマッドサイエンスに導いてしまうこともあるんだそうです。

たとえばヴォーカルの音程を100%正しく補正してみます。すると、美しく聴こえるどころか超不自然な歌声になってしまうのです。Photoshopでモデルさんの写真を美しく加工しすぎると、とたんに人間離れしてしまうのと同じ感覚でしょうか...。100%は極端かもしれませんが、こういう事例はプロの現場でもよく起きているとのこと。

オーディオ界の神ライターといわれるスティーブ・グッテンバーグさんも、今月のStereophileでこの問題に言及しています。

エンジニアたちの話によると、スーパースターといわれる歌手たちは一曲のレコーディングで数百テイク録音するんだ。そして、そこからベストなテイクを細かくつないで「パーフェクト」な一曲に仕上げていく。でも、60年代や70年代に現代のようなツールがあったらどうだろう。ジェームス・ブラウンやビートルズ、レッド・ツェッペリンの曲が、どれだけ素晴らしく改善されいたか想像してごらん。悲しいことに、オリジナルの歌声が何ひとつ残らないアーティストたちもいるんだよ。

何ひとつって...それ完全に別人じゃないですか! 歴史に残るヴォーカリストたちの集団失踪。コトによっては音楽史そのものが変わってしまうかもしれません。おおおおそろしい。

でも、突き抜けまくった編集や加工そのものを否定するわけではありません。こういった表現を一つの手法として成立させている音楽もあるのは事実なのです。大事なのは、きちんとした審美眼を持ってこれらのツールを使えているかどうか。

これは、音楽やアート以外の世界にも通じる話のような気がしますね。

[Stereophile 画像:bORjAmATiC/Flickr]

Mario Aguilar(米版/Rumi)