磁石で身体をハックしたら、金属がくっつくだけじゃない。僕は第六感的な能力を身につけた

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マグネット・インプラントについて興味はあるかい?

僕はあまりこの話題について自ら語ることはないんだけど、じつは3年前、右手の小指にレア・アースマグネットを埋め込んだんだ。なぜって? じゃあ今日はその経緯と、僕の身に何が起きたのかを話してみることにしよう。

 

出会い

マグネット・インプラントについての記事をはじめて読んだとき、その技術はまだ初期段階にあった。BMEZineの編集者兼ファウンダーだったShannon Larrattが執筆した記事で、磁気によってもたらされるある種の「第六感」について議論されていたんだ。だけど僕の気持ちはすぐに萎えてしまった。だってその記事は、シリコンが破れてむき出しになった磁石が指の中で腐食している様子を画像でくわしく紹介していたからね。あれから何年も経つけど、今でもあのイメージを思い出すだけでぞっとするよ。

コンセプトとしては面白いけど、それ以上の何かはない

それが当時の僕の感想だった。

ところが3年前、バーで友人何人かと一緒に飲んでいたら、そのうちの一人がマグネット・インプラントをやってるって話だ。それだけじゃない。やつの身体は、磁石を埋め込んでから1年が経過していた。僕の全フラグが立ったよ。その夜は残りの時間を費やしてインプラントの話を聞いたり、磁石を使ったパーティー手品を楽しんだりした。そして翌日には医師にアポをとったんだ。

手術

僕が迫られた決断は、どの指に磁石を埋め込むかということだった。僕は左利きだから、右手に埋め込むことは決めていた。そして、日々の作業を行うときあまり気を遣わなくていいようにと小指を選んだ。

手術はあっという間だったよ。メスで切開したら細胞組織の間に磁石を滑りこませ、手術用の接着剤で切開口を塞ぐ。そしてちょっと指に圧力を欠けたら包帯を巻いて終わりさ。だいたい15分か20分くらいだったかな。

最初の反応

埋め込んだ磁石をちゃんと利用できるようになるまでには少し時間が必要だった。はじめてクリップを指にくっつけられたのは手術の1、2日後だったけど、指の感覚をちゃんと取り戻すまでには数ヶ月かかった。というのも、磁石まわりの細胞から傷口が腫れあがって何週間も感覚が麻痺してたんだ。まあ、その間も磁石で遊ぶのはやめられなかったけど...。

腫れが引いて感覚が戻ってきたころ、いよいよ僕は身の周りにある見えない磁気の世界を体感しはじめる。マグネット・インプラントによってもたらされる「第六感」というのは、きっとこのことだね。

当時の僕は小売業をしていたので、最初に気づいたのはレジのファンによる影響だった。僕が指をどこに置くかによって、様々な強さの振動が感じられたんだ。それは外部の物体ではなく、自分自身の指の振動だったように思う。はじめはその奇妙な違和感に全く慣れず、正直気持ち悪いだけだった。

そういう体験はほかにもある。僕の指に埋め込んだ磁石は丸くてフラットなので、同じ極の磁力が近づくと反発して磁石が指の中で弾かれるんだよね。怪我するわけじゃないけど、これは今でも慣れない。じゃあ対極の磁力ならいいかというとそうでもなくて、こんどは指の中で磁石が磁力方向に向きを変えてしまうんだ。これも怪我ではないけど、すぐに位置をなおしてやらないといけないし、あまり心地のいいものではないよね。

新世界の体験

磁力は、僕の指そのものを活性化させた。電源コードの変圧器、マイクロ波、ラップトップのファンは、僕にとって新しいかたちでインタラクティブな物質へと変化した。それぞれの物質は、異なる強さと「テクスチャ」によって独自の磁界を構成している。僕はありとあらゆるものに自分の指を押しつけて、物質が持つ見えない広がりを感じ始めた。

特筆すべきなのは、僕が手術したころに買ったiPadKindle 2。どちらも本体の右下にスピーカーがあるんだけど、この磁力がなかなか強くて、特定の方向に手を動かしたりすると指の磁石が弾かれてしまうんだ。これはホントにウザかったけど、ケースを買ったら気にならなくなったよ。iPhoneでこういった問題が起きたことはないね。ちなみにKindleとiPadの新バージョンでは磁石の位置が変わって邪魔にならなくなった。

iPad 2のスマートカバー「風呂のフタ」にはすごく警戒してたんだけど、あれは互いにターゲットとなる磁石が明確に決まっているせいか、むしろ磁石の場所を探すのにちょっと時間がかかったくらい。

磁石を埋め込んで一番よかったと思うことは、わざわざ探さなくても目に見えない磁界の存在が分かることだね。はじめてそれを経験したのは、マンハッタンでブロードウェイとブリーカーの交差点を渡ったとき。ある地点を通過すると自分の指がヒリヒリすることに気づいてその感覚に集中してみたら、地中の何かに反応していることが分かったんだ。

はじめは地下鉄の車両だろうと思ってたんだけど、後になって地下鉄の発電機か冷却ファンではないかという結論に達した。そしてこの件をきっかけに、僕はマンハッタン中の地中にある磁界を感じる旅に出かけたんだ。

ほかに思いがけず磁界を感じたのは、本屋や洋服屋の会計カウンタージだね。カウンターの下にあるセキュリティタグ除去ユニットは磁力が強くて、1メートル近く離れていても分かるんだ。この磁界は、いつも会計係とおもしろい対話を生み出しているよ。

短所

手術から3年経つけど、短所は驚くほど少ない。それほど強い磁石を使っていないせいか、クレジットカードが磁気不良になることもないし、電化製品やコンピュータのモニターに影響を及ぼすこともない。手術後、問題が起きたことは一度もないね。

唯一欠点があるとすれば、いつかMRI検査を受けるとき、いったん磁石を取り除かないといけないことかな。まあこれは手術前に分かってて決めたことだから、別にいいかなと思ってる。もっとも、この磁力がなくなればMRIの心配も最小限になるんだけどね。

これから

手術から3年。僕の磁石は、ふだんその存在を忘れてしまうほどになった。自分が磁石人間として何かを語ることすらはばかれるくらいだ。僕はただ個人的に好奇心を満たすツールとして磁石を埋め込んでいるだけなので、専門家の立場で発言することはない。磁気を持つ物体を見つけたら、自分の指をかざして磁力の強さを確認するだけだ。

何年もかけて、磁石はその力を失っていく。はじめは大きなクリップを指にくっつけていられたけれど、今はそのサイズも小さい。磁力とともに物珍しさもなくなり、僕の関心も薄れてきた。強力な磁界にふれたときだけ自分が磁石人間だったことを思い出すけれど、それもほんのわずかな間だ。

とはいえ、僕はこの手術をして今でも本当に幸せだと思っている。僕にとっては全く新しい世界が開かれ、とてもリアルな方法でその世界にふれたり対話できたのだから。もしこの力が「既存の感覚拡張とは別次元に存在する」という意味での「第六感」ではないとしても、僕の身体は磁石の振動をとおしてこれまでと全く異質な感覚をおぼえたよ。

もしこれを読んだ君がインプラントに関心を持ったなら、ぜひ調査を続けるといい。たしかな情報をもとに経験豊かな医師を探し出し、磁石の製造業者を見つけることだ。そして、マグネット・インプラントのリスクと、それが引き起こす結果を理解してほしい。それらすべてを乗り越えたら...

今度は君が、新しい世界を探求する番だ。

Dann Berg(米版/Rumi)