1080スピントリックは12歳だからできたのか。物理的に考えてみた。

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先日、12歳のスケートボーダー、トム・シャール(Tom Schaar)君が世界で初めて1080スピントリック(3回転スピントリック)を成功させたというニュースをお伝えしました。すごいよね!と沸き立つ人が多い中、「これってトム君が子供だからできたんじゃないの?」っていう反応もあるみたいです。ということで、Wiredの記者に聞いてみました。

以下Wiredのレット・アレイン(Rhett Allain)記者談。

 

 

1080(1080スピントリックの事です。)が12歳の少年、トム・シャールによって達成されました。何にしてもすごいことです。でも、大人より子供の方が達成しやすいっていう事はないのでしょうか。ちょっと考えてみることにしましょう。

1080モデル

1080で大切な事はなんでしょうか?  空中で回ることです。子供も大人も同じ時間、空中に滞在できると仮定したら角速度が効いてきます。1080°回転するのに必要な時間を Δtとします。スケートボーダーは角速度0で滑っているので、飛び立つ時に角加速度をつける必要があります。簡単なモデルから始めましょう。子供も大人も円柱だとします。これが模式図です。

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プロポーションも同じとみなして、大人は子供より大きいという要素だけで計算します。今回の場合は、大人は子供の1.5倍です。では、この円柱はどうやって角加速度を得ればよいでしょうか。ねじりモーメント(トルク)が必要です。ジャンプする段階で、角速度を増加させるような力がかかっているはずです。式で書くとこんな感じ。

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ここでも近似を行っていることに気づくかもしれません。つまり、力は円柱の中心軸と垂直で、円の縁にかかると仮定しています。FaFkについては後で検討しますが、Faが大人(adult)、Fkが子供(kid)です。また力学では、回転する剛体に対してこういう式を立てることができます。

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この式は固定された回転軸をもつ系でないと使えないので、実際には違いますが、シンプルに考えます。 Iは回転軸から見た慣性モーメント 、αは角加速度です。半径Rの円盤が円盤の中心軸に対してもつ I はこう書き表せます。

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Iが小さい方が角運動を変化させるのは簡単です。Iの式を代入して角加速度αをだしてみます。

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この段階で、もしかして子供の方が回転するの簡単なのかもと察した方もいるでしょう。子供の方がRが小さいわけですから。もちろん、子供よりも大人の方が大きいFを加えられるかもしれません。でもそれは置いておいて引き続き、検討していきましょう。次に大人も子供も同じ密度だと仮定します。そうすると、質量はこのように書き表せます。

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これを上の式に代入すると、角加速度αはこうなります。LRの3乗が分母にありますね。上の模式図で使った数値を当てはめてみるとこうなります。

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この式をみると、大人と子供が同じ角加速度を得るためには子供の5倍の力が必要です。いくら大人と子供でもさすがにそれは難しいというのが僕の見解です。スケートボードで滑っている時に回転力を得るための力はどこからやってくるのでしょうか。タイヤとスケートコースの摩擦力です。生じる最大摩擦力はこのように書き表せます。(実際には平滑面でないのでちょっと異なりますが。)

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言っている通り、これはちょっと違っています。ジャンプしている間、平滑面にいるのとは違う力が働きます。しかしあまり考える必要はありません。mgの前に係数があります。この係数は主に角度に依存しているので子供も大人も同じだと考えられます。ここでのポイントは最大摩擦力はだいたい質量に比例するということです。摩擦力は質量に比例するとするとこういう風に書けます。(比例定数 を Kとおきます。)

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大人は依然として負けています。しかし、この負けはそんなにひどくないように見えます。それに、この計算には滞空時間が一緒という仮定があります。もしかしたら大人の方が長く飛んでいることができるかもしれないし、そうしたら角加速度が小さくても、同じだけ回れるかもしれません。

だから実際の所はどうなのかはきちんと分かりませんが、この一般的論を思い出しました。物体は拡大したら同じふるまいをする訳ではないということです。小さいスケールで試して成功したからといって、拡大して上手くいくとは限りません。拡大したものはそれはそれで新たな挑戦なわけです。

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この質問をTwitterでもらって、最初に書いたメモはこんな感じです。発表するにあたって、少し削った所もありますが、最初に考えたことと基本的な考え方は同じです。1080が12歳で達成できたからといって、1440を6歳児に挑戦させるようなことはしないでくださいね。

なるほど。Twitterで質問をもらって、さささっと計算したりしてみたいものですね。

Rhett Allain (原文/mio)