「記憶」は実在する! MIT、神経細胞を刺激して人為的に思い出させる実験に成功

2012.04.02 21:00
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「物忘れ」ってできなくなるのかも!?

何かの匂いをかいで、その匂いに関係する昔の記憶を急に思い出したりすることがあると思います。そのメカニズムの解明につながりそうな研究結果が発表されました。それによると、「記憶」というのは概念的なものではなくて、神経細胞の中に存在するものなんだそうです。

最近のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究で、強い記憶は、脳内の海馬の中のごく少数の神経細胞の働きによるものらしいことが示されました。マウス実験で、直近の記憶に対応する神経細胞を特定し、その細胞を刺激することで人為的に記憶を喚起することに成功したのです。
 


そこで使われているのは「オプトジェネティクス」という手法で、遺伝子的処置をした神経細胞に光をあてて人為的に活性化させるものです。最初に研究チームは、実験用マウスが未知の環境に入れられたときにだけ活性化する海馬の細胞を特定する実験を行いました。次に、その細胞の遺伝子と、光をあてると活性化するたんぱく質を生成する遺伝子を結合させました。こうすることで、新記憶の形成を担う神経細胞が活性化したときに光るようになります。

次に研究チームは、あるマウスの集団を未知の環境に入れてみました。そのうちあるエリアは「立入禁止」としていて、そこに入ると弱い電気ショックが与えられ、マウスが入ってはいけないことを学習するようになっていました。マウスはすぐに、海馬の該当部分を活性化しながら、立入禁止エリアを学習して避けるようになりました。

さらにそのマウスをまったく別の環境において、前の環境で学習中に活性化されていた神経細胞に光をあてると、電気ショックを受けたときと同じようにすくんだ姿勢をとったのです。つまり、その神経細胞に収まっていた記憶が光で呼び起こされたと考えられます。

この研究論文の主著者でノーベル賞受賞者でもあるMITの利根川進教授は、16世紀フランスの哲学者デカルトの言葉「我思う、故に我あり」を参照しつつ次のようにコメントしています。

「ルネ・デカルトは、心が自然科学で研究できるとは信じていませんでした。しかしデカルトは間違っていました。この実験法は、記憶の想起のような心の現象が物質の変化に基づいていることを実証する究極的な方法です。」

人間の心が、実体のないものではなくて、脳の中にあるもの、らしいんですね...。なんだか、「人間とは」とか「心とは」とか、いろいろな認識の仕方に影響ありそうな気がします。


[MIT via R&D Mag理化学研究所 - Image:Photo Pin

Andrew Tarantola(原文/miho)

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