奇形のエビ、病斑のある魚、目のないカニ... BP重油流出後に出た奇形水産物(動画あり)

奇形のエビ、病斑のある魚、目のないカニ... BP重油流出後に出た奇形水産物(動画あり) 1

重油の浄化に使われる薬品からも深刻な影響が。

アルジャジーラがBP重油漏れ事故のその後を伝えた時の写真ですけど、本当に恐ろしいですね。奇形の海産物が異様に多くて、地元の漁師さんもこんなの見たことないって言ってます。

 

どれぐらい深刻なの?

重油漏れ、無節操な除去作業が海の生き物に与えた影響は深刻。見るのも辛い状況です。アルジャジーラの現地取材では以下のような奇形が見つかっています。

・頭部に腫瘍のあるエビ

・えらに障害があり、「えらと頭の周りに殻がない」エビ

・目のないエビ

・子どもがくっついたままのエビ

・目のない魚

・目がえぐれた魚

・えらにカバーのない魚

・両目と両エラから大きなピンクの塊がぶら下がっている魚

・ワタリガニの集団(全員少なくとも片側はさみがない)

・殻に穴の開いたカニ

・殻にトゲトゲがないカニ、ハサミがないカニ、ハサミが奇形のカニ

・内側から死んでいくカニ

アルジャジーラが取材した科学者や海産物加工業者はみな「こんなもの見たことない」と口を揃えています。メキシコ湾と周辺で20年以上働いたベテランもいれば、みな魚を無数に見てきた人ばかりなのですが、これだけ規模の海産物の奇形と破壊を目にするのは初めて、らしい...。

奇形だけかと思ったら、米環境保護団体「自然資源防衛委員会(Natural Resources Defense Council)」の調べによると、食卓向けの牡蠣のテストで高いニッケルバナジウムの含有量が検出されてるそうなのです。ヒ素、カドミウム、鉛、水銀の含有量の方はまだ審査中。

  

 

いつ始まった?

科学者も漁業関係者も2010年のBPオイル事故と、その事後処理で使われた分散剤と化学物質で奇形が生まれたのではないか、と話しています。具体的には、重油漏れ除去に使われた溶剤(油、グリース、ゴムを分解するぐらい強烈)。重油漏れ事故後の清浄には効果てきめんですけど、環境に悪いし、ましてや人体には最悪で、湾に棲む生き物に悪い影響を与えることは言うまでもありません。

で、実はこの溶剤、突然変異を誘発する変異原性なことは前から知られていたんですね。従ってこの化学物質が海生物のゲノムを変えてしまった可能性は大きい、というわけです。

重油が漏れる前には湾の魚のうち病斑・ただれのある魚はわずか0.1%でした。サウスフロリダ大学によると、重油漏れ後は20%の魚に病斑が現れている地域も多く、他の地域では実に50%の魚に病斑が出ている状況です。

 

いったい原因は何?

ルイジアナ州立大学のジム・コーワン博士(Dr. Jim Cowan)は、多環式芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons:PAHs)と呼ばれる化学物質が主な問題の原因と見ています。これは米環境保護庁(EPA)の定義では、「原油の中にある半揮発性の有機化合物のグループが海中で時間を経るとできるもの」。魚や他の海の生物がPAHsに触れると、魚自体の健康と被害者のゲノムにすぐさま影響が出るんですね。

しかも原油漏れの浄化に使われた溶剤は人体にも有毒なことで知られており、触れた人には「頭痛、嘔吐、下痢、腹痛、胸の痛み、呼吸器官の損傷、皮膚感作、高血圧、中枢神経系の抑制、神経毒性作用、心不整脈、心血管損傷」といった症状が出るんです。もっと酷いのは成長や胎児の発達に影響が出てしまうこと。

要するに...BPは重油漏れを酸で浄化し、床が消えた今頃になって驚いてるフリこいてる、ということになるんでしょうか...。

 

政府も規制が効かない...

アメリカの食品医薬品局(FDA)も環境保護庁(EPA)も海洋大気庁(NOAA :National Oceanic and Atmospheric Administration)もみな、湾で進行中の酷い状況についてはコメントを拒んでいます。そもそもこの最悪の事態を生んだ会社はBPですが、そのBPも責任を認めるのを拒んでおり、湾の海産物は「事故前と変わらず今も安全だ」と言ってるんです。こうして様々な物証を見ると、まるで正反対なんですけどね...。

 

今後どうなる?

メキシコ湾は米国内漁獲高の半分近く(40%)が採れる恵みの海です。採れる前に生き物が奇形で死んだり苦しんでいる今の状況ではいずれ海産物不足は避けられないでしょう。漁師さんたちは、メキシコエビ(brown shrimp)の捕獲量が3分の2も減った、白エビは全滅だ、普段の漁獲量の10%ぐらいまで落ち込んでる漁師もいる、と話しています。アメリカの海産物がすっかり様変わりしてしまったかのよう...。しかるべき資金なり契約とってBPに責任を認めさせないと、もっと長丁場の問題になる恐れもあります。

湾で生まれてこの道一筋の漁師ダーラ・ルックス(Darla Rooks)さんのこの言葉がすべてを物語っている気がしたので、引用しておきますね。

「網を引くと、今もまだオイルが引っかかってくる。自分を幸せにしてくれたものすべてを失う気持ちを考えてもみてくれよ。誰かが重油を垂れ流して、溶剤をまき散らしたせいで、まさにその通りのことが起こっているんだ。ここに住んでる人なら、みんな海で泳いで、海で釣れたものを食べるほどバカじゃないよ

こういう言葉が漁師さんの口から出てくるなんて...。事故も悲惨でしたけど、その後の対策もそれに匹敵するダメージを残してしまってるような気がしました。

 

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[Al Jazeera, Daily Comet, WSJ, Local 15 TV via @joeljohnson]

CASEY CHAN(原文/satomi)