たぶん世界で一番哀しい科学者

2012.05.27 21:00
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ハンカチのご用意を...

こちらに見えますのは豪クイーンズランド大のジョン・メインストーン(John Mainstone)教授。世界史上最も長い実験「ピッチの滴下実験」をただひたすら見守る、たぶん世界で一番哀しい科学者です。

これはその聞くも涙、語るも涙の物語。
2分だけお付き合いください...。


一見固体で、ハンマーで割ると粉々に砕けるピッチ(樹脂)。このピッチが実は液体であることを証明するために、クイーンズランド大の初代物理学教授であられたトーマス・パーネル(Thomas Parnell)教授が1927年に始めたのが、この「ピッチ滴下実験」です。

大学のサイトにはこう説明がありますよ。

最初はピッチを温めてガラスのじょうごに注ぎ、下を密閉した。こうして3年置いて固まるのを待ち、1930年に密閉した脚部をカットして下に垂れてこれるようにし、垂れた日付けを記録する作業に入った。[...]

じょうごの中のピッチはなんら特異な環境には晒していないため、流れる速度を変える要因と言っても通常の季節ごとの気温の変化で変わる程度だ。

ところがピッチの粘度は水の約2300億倍もあります。実験開始以来、落ちたピッチは75年間でたった8滴

初代パーネル教授はたった3滴(垂れた後に)見ただけで1960年代にこの世を去ってしまわれました。退屈の余り死んだんじゃなければいいのですが...。

死後見張り役を引き継いだメインストーン教授は運悪く、自分の代にかわってから落ちた5滴を全部見逃してしまいました。まるで教授が席を外すタイミングを見計らったかのように垂れるピッチ。
 
次の9滴目は今年垂れるかもしれないし、来年かもしれない。実験はあと1世紀かかります。今日もまたピッチ顔負けの粘度でじょうごを見つめるメインストーン教授なのでありました。

-完-
 


 


そんだけ落ちたらもう液体でいいじゃんと思ってしまいますけど、そんなわけにはいかないんでしょうね。僕だったら70年代にガラスごと粉々に叩き割ってますよ...。


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UPDATE:メインストーン教授は大学の奥にあって誰も注目していなかった実験に光を当て一般公開し、故パーネル教授とともに2005年イグノーベル賞を受賞しました。先代も落ちた瞬間は見てないようです。誰も見たことのないピッチ滴下の瞬間を見たい方はこちらのライブビューで。
 

[The Pitch Drop Experiment and Wikipedia via Daily Mail]

JESUS DIAZ(原文/satomi)
 

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