キックスターターは、なぜ「失敗作」を隠すのか? ビジネス視点から見るサービス

キックスターターは、なぜ「失敗作」を隠すのか? ビジネス視点から見るサービス 1

米Gizには、キックスターター(Kickstarter)に対して独自の考え方があります。ですが、それでもキックスターターの核を担っているのは、ビジネス初心者にそのコツを教えることができるということです。しかし、そのような価値もキックスターターが失敗プロジェクトは見えなくしてしまうために損なわれているとフランス在住のカナダ人ジャーナリスト、ダン・ミシナーさんは語っています。

キックスターターは、ユーザーに失敗作を見せるのを好みまない。失敗したプロジェクトに対して、キャンペーンぺージ、タグ、外部検索エンジンに引っかかるもの、プロジェクトに関する全てのものを見せないようにしている。キックスターターのホームページの「Discover」機能を使っても、失敗プロジェクトを見つけることはできない。絶対にだ。

 

成功プロジェクトのみを見せる

 

まずは、キックスターターのメインページに行き自分自身で見てみるとわかりやすいだろう。あちこちクリックしてみても、「成功」または「進行中」以外のプロジェクトは見つからない。

サイトを数分いじっていると、キックスターターのメインページ、又は発見ページ(Discover)は、成功プロジェクトか進行中のプロジェクトの一部にスポットライトをあてるためのページだということがわかる。

ビジネスという点から見ると、これは実に納得のいくやり方である。キックスターターのビジネスモデルは、成功プロジェクトから5%を得るというマネタイズ方法。失敗プロジェクトをサイトに表示するのは、彼らにとっては意味のないことなのだ。

まず初めに、失敗プロジェクトにはどんなアクションもおこすことができないというのがある。一度資金繰りに失敗したプロジェクトには、誰も参加することはできない。

次に、失敗プロジェクトがあると見た目が悪いということ。世界に向けて、誰でもクラウドファンディングができると歌っているサービスにとって、キックスターター上の実に56%は資金調達に失敗していると表示するのは得策ではない。

私が、最初にキックスターターには失敗作が表示されないと気づいた時、まずはそれが本当かどうかを確かめてみることにした。確認するために、スクレーパープログラムを書き、これを使ってキックスターターの発見ページにある全てのプロジェクトの詳細をチェックした。

結果、2万7399件(参照1)のプロジェクトがあり、それらは全て成功か進行中のプロジェクトだった。

プログラムではなく人間の目で見ていったのなら、2万7000件以上の膨大な量のプロジェクトを何日何週間何ヶ月と見続けても、たった1つの失敗作も目にすることはないということである。

 

グーグルから失敗プロジェクトを隠す

 

誤解がないように言っておくと、キックスターターは失敗プロジェクトをサイトから削除しているわけではない

キックスターターの失敗プロジェクトに飛ぶリンクは生きたままである。例えば、Instaprint。4月29日に資金繰り不達成となったプロジェクトだが、このリンク先には飛ぶことができる。又、プロジェクト名がわかっていれば、それが失敗プロジェクトであっても、キックスターターのサイト内検索で探すことができる。試しにInstaprintの検索ページがこれ。このプロジェクトは、例えば「Instagram」や「photo booth」等の検索ワードでも見つけることができる。

しかし、外部の検索サービス、例えばグーグルやビング、ダックダックゴー(DuckDuckGo)で「Instaprint」を検索しても、このプロジェクトのキックスターターページがあがってくることはない。

なぜか?

キックスターターの失敗プロジェクトページの頭には、ロボットメタタグとうものが埋め込まれているからだ。これは、失敗プロジェクトなら必ずどのプロジェクトにもつけられている。

< meta name="robots" content="noindex"/>

成功、進行中のプロジェクトにはないこのタグ、失敗プロジェクトのみに埋め込まれるこのタグが、検索エンジンにこのページは無視するように働きかけているのだ。

キックスターターは、失敗プロジェクトをサイトから削除することはない。しかし、外部検索エンジンを使って失敗プロジェクトを探すのをとても難しい状態にしているのだ。

 

つまり...

 

私は、このキックスターターの行動を悪意があるとも不正だとも思わない。ビジネス視点からみて、メインページや発見ページに失敗プロジェクトを表示しないのは実に納得のいくことである。

では、なぜこれを指摘したか? それは、キックスターターのこの決断が実に興味深いからである。

他のオンライン取引サービスと比べると、キックスターターのアプローチは対照的なものだ。例えば、イーベイは不成立のオークションも表示する。(もちろん検索も可能。)アマゾンでは、品切れ中の商品でも検索することができる。

オンライン取引の中でも、同様のクラウドファンディング系サービスと比べても、キックスターターの失敗作隠し戦略は、目をひく。例えば、インディーゴーゴー(Indiegogo)は、成功プロジェクトと並んで失敗プロジェクトも表示しているようだ。(参照2)

しかし、クラウドファンディングのためにキックスターターを使おうと考える、起業する者の立場からみると、これは重要な問題である。最近、The Crowdfunding Bibleの著者であるスコット・ステインバーグ(Scott Steinberg)氏と話をする機会があったのだが、彼は起業家にとってリサーチがいかに重要かを話してくれた。

彼曰く、キックスターターのようなクラウドファンディングサービスを使うにあたって、過去に何が成功したかを探ることは重要だが、同時に何が失敗したかを探ることも等しく大切なことだというのだ。

つまり、失敗策を隠してしまっては、失敗から学べなくなるのである。

※参照1

2万7399件のチェックしたプロジェクトのうち、2万3059件は成功、4340件は進行中だった。ニューヨーク・タイムズ紙の最近のレポートによると、キックスターターには5万件のプロジェクトがあり、全体で44%が成功しているという。これを考えると私のプログラムは全ての成功プロジェクトをチェックしたと言える。

※参照2

「成功」の定義はサービスによって異なるのは理解している。キックスターターのそれとインディーゴーゴーのそれは違う。中には、目標金額に満たなくとも、お金を受け取れる例もあるからだ。

[misner.org]

ダンさんの許可を得て、米Gizmodoが再掲載したものです。

そうこ(DAN MISENER 米版