CERNがヒッグス粒子と思われる新たな素粒子を発見! って実際どういう事なの?

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ついに先日がCERN(欧州原子核研究機構)が「ヒッグス粒子(Higgs Boson)」と思われる新たな亜原子粒子を発見したと発表。これはつまり科学者たちがヒッグス粒子を発見したということなのか? 簡単な答えは「発見した」ということなのですが、実はそれほど単純な話でもないようです。

2012年7月4日がヒッグス粒子が正式に発見された日だというのは間違いではありません。CERNのロルフ・ホイヤー所長いわく「俗人として、私たちは見つけたと思う」と話しています。物理の法則に影響を与えかねない大発見の発表に関して保守的なCERNからのコメントとしては、これ以上明確になることはないでしょう。

ですが、ハウアー所長の発言の続き、「しかし科学者としての立場では、『一体何があるのだろう』と言いたい」というのがとても大きな質問です。今日や今年にうちに答えが明らかになる質問ではないかもしれません。そう、今回の発表はヒッグス粒子の物語の始まりに過ぎないのです。

 

一体なにを発見したのか?

 

「我々はヒッグス粒子とみられる新しい粒子を観測した。」

ハウアー所長の発表はとても的確だと言えます。ATLAS実験CMS実験という2つの独立した実験から、新たな亜原子粒子の発見の一応の確認はされました。そしてその新たな粒子は、ヒッグス粒子であるべき質量飛程と粒子の性質を持っています。これは1995年に発見されたトップクォーク以来の新基本粒子の発見であり、それ自体がすごい出来事です。しかし、CERNが発見した新たな粒子が絶対にヒッグス粒子であること、それも標準模型で予測されていたものだと断定するのはまだ早いのです。

現在わかっているのはこういうことです。CMS実験では125.3±0.6ギガ電子ボルト(GeV)の粒子(つまり質量は陽子のおよそ133倍)が観測されました。そしてCMS実験とは独立したATLAS実験では126.5±0.6 GeVの粒子が発見されました。これらのデータをどう合わせるのかにもよりますが、どちらの実験も大体5シグマレベルの確度となります。

つまりどちらの観測チームも、観測されたものがランダムなノイズ等ではなく新しい粒子であると99.9999%の確信を持てるということです。5シグマは新発見として容認されるしきい値となります。そしてどちらの実験も4.9シグマではなく5シグマ(正確なデータによりますが、データの解析を進めるほど数値は上がると予想されます)であることは、新たな粒子が発見されたと高い確信をもって良いということです。

 

本当にヒッグス粒子なの?

 

この質問に対する正直な回答は、「まだわからない」です。件の粒子が「ボソン(ボース粒子)」という、主に力を運ぶものとして認識される基本原子の根本的なカテゴリに属することは判明しています。これは、この新たな粒子が2光子崩壊であることからわかります。2光子崩壊とは粒子が崩壊するときに2つの光子にわかれることで、ボソン特有の特性です。

そしてもちろん、125-126 GeVの質量飛程はヒッグス粒子の予測値と一致します。そもそも2つの実験がその範囲を観測していた理由がそれです。CMS実験の広報、ジョー・インカンデーラ氏が指摘したように、これまで発見された中で最も重いボソンとなります。

しかしヒッグス粒子は、いまだ確認がとれていない多くの固有の特性を持っていなければなりません。なかでも重要なのは、他のどの様な粒子とも違い、スピン角運動量が0であること。今のところこの新しい粒子のスピン角運動量はわかっていません。もし0であれば、この粒子がヒッグス粒子であることを証明するのに大きく前進するでしょう。もしスピン角運動量が0でなければ、無数の仮説上の粒子のうちの一つである可能性があります。この粒子がヒッグス粒子である可能性は今でも高いですが、当然であると考えることはできません。

 

もしヒッグス粒子だったら標準模型を完成させるってこと?

 

必ずしもそういうわけではありません。単にヒッグスであるからといって、これが標準模型の穴を埋めるヒッグス粒子であるとは限らないのです。その特定の粒子が唯一のヒッグス粒子ではありません。この新たな粒子がどの様に振る舞うかによっては、標準模型の予測を超えた域に向かうかもしれません。もしそうなればヒッグス粒子は超対称性や、宇宙の96%を占める暗黒物質への理解を深めることにもつながる可能性があります。

この粒子が大型ハドロン衝突型加速器になかでどの様に崩壊するかによって、今わかっている標準模型と合致するかがわかるでしょう。ATLASの研究員であるピッパ・ウェルズ博士がBBC Newsに伝えたところによると、すでに観測済みの崩壊経路のいくつかは予測を外れているようだそうです。単に今後のデータの積み重ねで統計的に無視できるエラーかもしれませんが、重要な発見につながる可能性もあります。

では、結局のところ何がわかっているのでしょう。約20年ぶりに新たな素粒子が発見されたことはほぼ確かです。先日発表されたデータはまだすべて先行的なもので、CMS実験とATLAS実験の正式な調査データは今月末頃から公開されるでしょう。

そして大型ハドロン衝突型加速器は今年末まで稼働することが決まっています。つまり、データを集めるのにまだ数ヶ月残っているということです。これらのおかげで、今回発見された粒子が本当に標準模型で予測されたヒッグス粒子なのかの解明に近づくことでしょう。今回の発見は物理の理解において大きな躍進であることは間違いありません。しかし、今後さらに大きな発見がなされる可能性も大いに期待できます。

 

Latest update in the search for the Higgs boson, Update on the search for the Higgs boson at CERN on the eve of the ICHEP 2012 Conference [CERN via io9] Image via Flickr.

(ニール太平)